これは三年くらい前の話しです。
一人でブラブラと買い物をしている時、見覚えのない女の人に話しかけられました。
久しぶり元気?などと言われてもまったく記憶にない。
でも少し可愛いかったのと俺が忘れてるだけで知り合いだったら悪いなと思い話しを合わせてました。
5分くらい話して、じゃあまたねと別れました。
いくら考えても誰だか解りません。
まぁいいかと買い物をして帰りました。
次の日に友達に昨日の女の人の事を話してみました。もしかしたら昔の同級生かもと。
友達は、で、名前は?と聞かれ名前を聞いてないのを思い話しました。
じゃ解らんと言われ話しは終わりました。
その夜に電話が鳴りました。
昨日の女の人から。
もし〜何してる?と。
まるで昔からの友人のように馴れ馴れしく。
誰だか解らないけど話しを合わせていました。
十分くらい、いまいち噛み合わない話をしてその人は最後に、今日話してたの誰?と聞かれました。
俺は誰の事?
いつ話してた誰と聞きました。
その人は、だから今日話してた人とやけに小さい声で言い電話を切られました。
完全に?と思いました。
今日はあの人に会ってないので俺が誰と話してるかなんて解るはずがない。
監視されてる様な気がして気味が悪くなりました。
次の日の夜も電話が掛かってきました。
また噛み合わない会話をして最後に昨日と同じ事を聞かれました。
今日話してたの誰?と。
俺は監視されてると思い、今日はどっかで会った?と聞くと、たまたま見掛けたと言いました。
まぁそんな偶然もあるかと何故かその言葉を疑わず信じました。
俺が今日のいつと聞くと電話が切れました。
不思議と変には思わず風呂に入って寝ました。
次の日もその次の日も電話は掛かってきました。
噛み合わない会話。
必ずを俺を見掛ける。
そして電話の最後は必ず、今日話してた人誰…?
それからも毎日電話は掛かってきました。
一週間を越えた辺りで毎日の日課のようになっていきました。
相変わらず噛み合わず内容が薄い会話でした。
やっぱり誰か解らなかったですが、今さら聞けません。
最初に聞いておけば良かったと後悔しました。
日に日に聞き辛くなっていく。
二週間目くらいで会話に変化がありました。
電話の向こうからザワザワと音が聞こえます。
なんの音?と聞くと何も聞こえないと言います。
変な話しですが、初めて会話が噛み合いました。
ここがチャンスと思い名前を聞いてみようと思いました。
あの、名前ってどんな漢字だっけ?
色々と考えて、失礼にならないように知ってるけど字を忘れたみたいな感じで聞いてみました。
小さな声で平仮名だから。
完全に作戦は失敗です。
5分くらいの気まずい沈黙。
聞こえるか聞こえないかギリギリの小さいな声で、今日話してた人誰?
それだけ言うと電話が切れました。
次の日からは今までは1日に一回だった電話が二回になりました。
だんだんと電話に出るのが嫌になってきてました。
でも電話を取らないといつまでも鳴り続けるので仕方なく出ていました。
四週間目あたりからザワザワと音が大きくなり何を言ってるか聞こえなくなってました。
でも最後には必ず、今日話してた人誰?とそこだけは聞き取れてました。
六週間目からは一度の電話で何回も今日話してた人誰?と聞いてきます。
電話してる間、俺は一言も喋っていません。
一方的に同じ事を言い電話が切れる。
もう気味が悪いのと意味が解らないのとでイライラしたり、落ち込んだりを繰り返し情緒不安定になっていきました。
七週間目ノイローゼ一歩手前でした。
いつものように電話が鳴り同じ事を聞いている。
限界でした。
誰だよ?俺が誰と話してたんだよ?もういいよ。
飽きたよそれ。
怒るというより呆れていました。
怒鳴ってはいませんでしたが、声は大きくなってたみたいで母が部屋に入ってきました。
最近の俺の様子が変だと心配してくれてたみたいです。
あんた誰と話してるの?
大丈夫?
解んない。こいつも解んないし俺が誰と話してるか教えてよ。
誰だよ…。
完全に混乱してました。
母がじゃあ私が聞いてやると言ったので携帯を渡しました。
繋がってないけどと言い携帯を俺に返しました。
俺は向こうが切ったのかなと思い携帯を見ると通常画面に戻っています。
何気なく着信履歴を見ると履歴がない。
友達からの履歴しかない。なんで?
あれだけ毎日掛かってきてたのに。
急に壊れてしまいそうな恐怖を感じて携帯を真ん中から折り壁にぶん投げました。
怖くて怖くて母に全部話すと少し落ち着き冷静に考えられるようになりました。
考えてみると、おかしな事ばかり。
相手の名前も電話番号も知らない。
電話が掛かってきてなかった。
俺はずっと一人で話しをしてた?
幻聴だったとは思えない。相手が聞いていた俺が話しをしていた人とは誰か?
自分は精神的に病んでるんじゃないかと。
母に明日、病院に行こうと言われました。
自分が正常か自信がなかったので行く事に同意しました。
そして2つになった携帯を片付けようと画面の方を拾い上げると死ぬほどの恐怖を感じました。
何故かメール作成の画面になっていて本文の所に
もうすこしだったのに
恐怖で固まって震えている俺の横で母も固まってました。
やっぱり幻聴の類いではなかった。
2人でリビングまでダッシュ。
朝になるまで恐怖は薄れませんでした。
部屋に戻って恐る恐る画面を見てみると、真っ黒でした。
あの時は確かにメール画面でした。
母も見てますし。
結局、病院も行かずその後も何事もありませんでした。
自分的に結論を出してみました。
絶対に幻聴なんかではない。
しつこく聞いてきた話してた人とは、たぶん電話の相手。
もうすこしだったのに、というメール画面を考えた時になんとなく四十九日と頭に浮かびました。
電話が始まって、もう少しで49日間だったので。
あのままだったらどうなっていたのか怖いし謎だらけなので、なにか意見があったら教えてください。
怖い話投稿:ホラーテラー 鍵仁さん
作者怖話