家に帰ると強盗がいた。
強盗は、俺と妻を縛りあげ、こう言った。
「お前らのどちらかだけ殺さないでやるよ。」
俺は、妻だけは助けてやってくれと頼んだ。
妻は自分だけは生かしてくれと頼んだ。
気が付くと俺は、大きな川の前に立っていた。
どうやら三途の川らしい…
ふと隣を見ると、妻がうつむいて立っていた。
どうやら殺されてしまったらしい…
二人で川に沿ってあるいていると、小さな舟が一艘とその横にガイコツ男が立っていた。
ガイコツ男は俺達にこう言った。
「舟には一人しか乗れねぇなあ、どちらかは泳いで川を渡ってくれい!」
俺は、妻だけは乗せてやってくれと頼んだ。
妻は、何も言わず舟に飛び乗っていた。
死に物狂いで(死んでいるが)、三日三晩川を泳ぐと、大きな扉に着いた。
中に入ると、妻が俺を待っていた。
そして二人で長い長い廊下を歩いて行くと、奥では閻魔大王が腕組みをして待っていた。
閻魔大王は俺達を睨み付け言う。
「天国に行けるのは、どちらか一人だけだ!先着一名なのだ!」
俺は、妻を天国に行かせてやってくれとお願いした。
妻は、私の方が早く着いたと力説していた。
そして、妻は天国へ、俺は地獄へと行くことになった。
妻は申し訳なさそうに俺に言う。
「あなた…なんか、ごめんなさいね…」
いいんだ…
俺は、お前への愛だけは誰にも譲れないんだよ…
地獄へ向かう地獄電車に乗って、俺は地獄へ向かった、時刻は午後5時5分だった。
電車が走り出すと、俺の前に老人が立っていた。
俺は老人に席を譲ろうと立ち上がった。
と、その時、両隣の乗客も席を立ち上がり、老人に席を譲ろうとした…
立ち上がった三人は互いに顔を見合わせ、苦笑いを浮かべた。
老人が、俺達にこう言った。
「地獄もそんなに悪い所じゃなさそうじゃのう!」
地獄電車の中で、拍手の渦が巻きおこった。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話