仕事の帰り道にカードを拾った。
黒っぽいそのカードには、
(命のカード)
と、白く書かれていた。
家に帰り、そのカードをよく見て見ると、カードの裏にはこんな事が書かれていた。
命のカード
使用上の注意
命のカードは、寿命一年につき一億円と交換出来ます。
命のカードを無くしたり紛失した際は、すみやかに諦めてください。
命のカードを他人に貸したり譲渡することは固く禁じられています。
寿命には限りがあります。
ご寿命は計画的に!
これを読んで、俺は驚いた。
世の中にこんなカードがあるのだろうか…
だが寿命一年で一億は破格だ。
俺なら5年…いや10年くらい寿命を交換するだろう…
次の日、俺は会社を休んで、ダメ元でそのカードを持って不動産屋に出かけた。
「新築のマンションが欲しいんだが、一億くらいの良い物件はないかね?」
不動産屋でこう言うと、目付きの鋭いオッサンがまくし立てるように、物件を紹介してくれた。
そして、いよいよ支払いの話になった。
俺は持ってきた(命のカード)をオッサンに見せて言った。
「支払いは、これでお願いしたいんだが…」
オッサンは俺からカードを受け取ると、マジマジとカードを見て、
「お客様…少々お待ちくださいね…」
そう言って店の奥に入って行った。
俺はドキドキしていた…
多分ダメだろうとは思ってはいたが…
まあダメなら謝って帰ろう…
そんな事を考えていると、オッサンが戻ってきた。
オッサンは俺を睨み付け言った。
「お客様、このカードですが…お客様のご利用になれる額が…六千万しかございません…どうか、ご寿命を大切になさって今日の所はお引き取りください…」
不動産屋から家に帰るまで、俺はいろんな事を考えた。
カードが使える事には驚いたが、それより驚いたのは俺の限度額だ…
六千万て…
俺は、後半年ちょっとしか生きられないのか…
それから俺の暮らしぶりは一変した。
まず酒とタバコを一切止めた。
そして半年に一回人間ドックを受け、体に異常がないか入念に調べた。
何をするにも安心と安全を求め、常に危険を回避するように努めた。
それから三年…
俺はピンピンしている。
まあ…不動産屋に担がれた訳だ…
俺は、財布にしまっておいた(命のカード)を取り出しつぶやいた。
「命のカードじゃなくて、命のガードだな…」と。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話