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中編4
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いるよ

一人暮らしを始めたAという大学生の話。

Aは自分の実家から、いつも大学へ通っていた。

両親は、子どもがいつまでも家に居るのは嬉しいらしく、一人暮らししたら?何て一言も言わなかった。

だが、Aももう成人。

いつまでも親の世話になっているわけにはいかない。

(一人で暮らせるようになって、父さんと母さんを安心させないとな.........)

Aは家を出る事を決めた。

両親にそのことを話すと、

「本当に大丈夫?ずっと家にいても別にええんよ?」

かなり心配なようだった。

「母さん、俺ももう大人だよ。心配すんなって。」

何とか親を落ち着かせ、Aは無事?に実家を出た。

「ここが俺の部屋か...........」

Aは部屋の中をぐるりと見回した。

しみ一つ無いきれいな部屋を見ていると、心が澄んでいくようだった。

十二階建てマンションの、八階の角部屋。

家賃は高かったが、少し背伸びをした甲斐があった。

(ここから、俺の生活がスタートする...........やべぇ、超わくわくしてきた。)

Aは完全に舞い上がっていた。

少ない荷物整理をちゃっちゃと済ませたAは、その日一日、自分の部屋でゆったりと過ごした。

「...........ん、あれ、俺いつの間に寝てたんだ。」

Aは携帯を見た。

午前五時をまわっていた。

「あー、気持ちの良い朝だ。」

Aは思いっきり体を伸ばした。

一人暮らしをして始めての朝は、とても気分が清清しかった。

ふと、Aはあることに気がついた。

台所の蛇口から、水が流れっぱなしになっている。

(?俺、昨日蛇口なんて触ったっけ。)

昨日の事を思い出そうとしたが、他の事に夢中で記憶が曖昧だった。

(とにかく気をつけないと、金を無駄にするのだけは止めないと。)

Aは特に気にはしなかった。

だが、その日Aが大学から帰ってきた時。

「誰もいないけどただい.........えっ!」

部屋の電気が全てついている。

「俺、電気なんてつけなかったよな.............」

Aは確かに電気をつけてはいなかった。

が、今は全てついている。

「おかしいな.....」

わだかまりが残ったが、Aは気をつけるだけで、それ以上は考えなかった。

だが、そういう事が毎日続いた。

朝目が覚めると水が出っぱなしになっている。

帰ってくるといつの間にか電気がついている。

他にも、閉めたはずの扉が開いていたり、冷蔵庫が勝手に開いていたり.............

極めつけは、使った覚えの無いトイレットペーパーが、トイレの中で散乱していた。

Aは困り果てていた。

Aがどんなに気をつけていても、それらの問題が解消される事は無かった。

さらにそれは、日に日に酷くなっていった。

朝、すごい勢いで出ている水の音で目が覚める。

蛇口から出る水の量がどんどん多くなっていく。

気づくと冷蔵庫が全開になっている。

食べ物が勝手に無くなっていく。

そしてある日。

Aが家でのんびりしていると、

ガッ、ジャーーー............

トイレの水が勝手に流れ出した。

「おいおい........」

Aは途方にくれた。

誰かのいたずらかと思ったが、鍵はいつもしっかりかけている。誰かが隠れて住んでいるのかとも思ったが、部屋中探しても隠れられるような場所は無かった。

(じゃあ何なんだ...........)

そして、ある日の事。

Aが寝ようとした時だった。

携帯がなった。

「............非通知?」

誰かのいたずらかと思い無視した。

だが、止まる事なく鳴り響く。

「しつけえなぁ!」

Aはしびれを切らし電話に出た。

「もしも...........」

「いるよ」

プッ、プープープー...........

一言残して、相手は電話を切った。

その瞬間だった。

「......っ!!」

背筋に悪寒がはしった。

部屋のすみに誰か居る。

じっとこっちを見ている感じがする。

どこから現れたのか、全く分からない。

(なんだ.....!誰だ........!)

Aの体は硬直した。

「だからここにいるよ」

女の声だ。

今度は肉声だった。

「うわっ!!!」

Aはすぐさま部屋を出た。

それからは、もう部屋に戻る事が出来なくなった。

得たいの知れないものが、部屋に居る。

考えただけでぞっとした。

(今までの事も全てあれが原因だったのか...)

それからは友達の家でしばらく寝泊りをした。

だがずっと居るわけにもいかない。

高い家賃を払ってせっかく住んでいるんだ。

Aは友人についてきてもらい、自分の部屋へ向かった。

「おい、早く開けてくれ。」

「分かってるよ!全く......何をそんなに恐がっているんだ。」

Aは恐くて、自分では玄関を開けることが出来なかった。

「じゃあ開けるぞ。」

友人が玄関を開けた。

「...........どうだ、何かいるか。」

Aは友人に尋ねた。

「.............」

「おい、どうしたんだ?」

「聞くな!!」

「えっ!!」

友人はすぐに玄関をしめると、強引にAを連れてマンションを後にした。

友人の顔は、かなりこわばっていた。

「おい!どうしたんだよ!!」

友人の顔が青ざめていくのが分かり、Aもだんだん恐くなってきた。

「おい!お前何見たんだよ!おい!!」

Aはパニックになりながら友人に尋ねた。

「お前、一人暮らしだよな......」

「ああ。」

「じゃあ何で玄関で女が待ってたんだよ。」

もしAが玄関を開けていたら..........

Aは結局実家に戻り、二度とそのマンションに近づ事は無かった。

両親だけは、嬉しそうにしていた。

怖い話投稿:ホラーテラー 青二才さん  

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