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中編3
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口蹄疫②

「朝4時。2時間しか寝てないのに目が覚める。

牛舎に入り、1頭1頭ヨダレは出てないか、水泡は出来てないか、びくびくしながら見て回る。

最後の1頭を見て、 「あぁ、良かった。今日も出て居なかった。」とため息を付く。

それから2時間の消毒作業。念入りに隅から隅まで消毒をする。もう、消毒剤も残り少ない。

それが終わると餌やり。本来の餌の量よりちょっとだけ多めにやる。 もしかしたら、今日が最後の餌やりになるかもしれないから。

ちょっと気の荒いヤツ、臆病なヤツ、おとなしいヤツ…

色んなヤツが色んな顔で楽しみに餌を待ってる。

みんな子牛の時からミルクを与え、餌をやり、病気をしたら治療して…、うちの牛はみんな自分の子供だと思ってる。

昨日発症した川南の農場… うちの牛が行ってる。

年間100頭以上の子牛を売るけど、みんなどんな子でどこに行ったか覚えてる。

人慣つっこくて、元気な子だった。もうすぐ、薬を射たれ殺される。

朝食を取る。もう冷蔵庫には味噌と煮干しかない。買い物にすら行けない。 米だけは大量にあるがw

時間も無いんで簡単に朝食を済ます。

携帯が鳴る。

1日に何度なるだろう。その度にびくびくする。

電話に出る。

「○○んとこが出た…」電話の向こうで泣くように叫ぶ。

…大学の同級生だ。

明るくていつもバカばかり言ってるヤツだった。卒業して、2年会社努めをして、実家を継いだ。規模を拡大し、いい牛を出していた。熱くて、一生懸命なヤツだった。

口蹄疫。もう、廃業するしかない。

雌の子牛は大体40万くらいする。それを買って、種を付けて、10月して子牛が産まれ、3年手塩にかけて育て上げてやっと肉になる。

牛舎が1000万、機材が500万、機械が1000万、母牛が100頭で4000万、回転資金が1000万。

全頭殺処分。

補償金は母牛の4000万の4/5、3200万のみ。

莫大な借金のみが残る。

口蹄疫を出したら5年は牛を入れられない。

口蹄疫が出た牛舎や農場の機材や機械は、同業者には敬遠され、売れない。

一昨年、結婚して、

子供が出来て、仕事にさらに熱くなり、

飲む度に子供の自慢ばかりして、

「お前も早く子供作れよ」と笑っていた。

もう廃業するしかない…。

子供と奥さんを守る為に離婚するだろう。

もしかしたら…

ソイツに電話してみたが、電話には出ない。

俺には今ソイツの所に行ってやる事もできない。

何もしてやれない。

涙が止まらない。

今は自分を守る事しかできない。

毎日、何人もの仲間が消えていく。

今、仲間内で電話で話すと必ず言う言葉がある。

“仇、討とうな”

消えていくヤツはみんな一生懸命で、牛を愛するヤツばかり。 俺達が口蹄疫から生き残り、いい牛を育ていい肉をつくる、消えて行ったヤツラが愛し作り上げた宮崎の畜産業と血統を守る。

それが仇討ち。

俺達に出来る事はそれしかない。

これが、報道されない(させていない?)宮崎の現状です。

みなさん、助けてください。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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