俺達の住んでいるK市のK町にある旧トンネル。
聞く話によると、戦時中に韓国人が日本人といざこざを起こして、トンネル内で殺害されたと言う。
それ以来、入り口で事故などもあったため地元の心霊スポットとされていて、坊さんらがお祓いにも来たらしい。
俺もあまり近寄らないようにしていたが、ある日の夜に酔った友人のEらが行こうと言い出した。
俺は始めは断固拒否していたが、Eは前にも一度通ったことがあるらしく、『何にもないから』と言われ半ば強引に連れてかれた。
普段はビビりなのに、おかしいとは思ったが口に出さなかった。
トンネルに着いたのは午後10時頃で、風で揺れる竹が異様な雰囲気を醸し出していた。
俺はこの時点で既にビビりこみ、絶対に行かないと言って車から降りなかった。
同じく、寺の娘で霊感は坊さんなどに比べてほとんど無い(人並みよりはある)Nが残ると言った。
Eはガッカリしていたが、他のBとIとSは行く気満々だった。
それじゃあ行ってくる、と言ってEがクルリとあっちを向くとき、少し笑っている様に見えたが、気のせいだと思った。
Eらはズンズントンネルの中に向かっていった。
…E達が完全に見えなくなってから5分程経った時だった。
急に助手席に座っていたNが突然ガタガタと震えだし、大丈夫か?と聞こうとした時、いきなり
「車のエンジンかけて!早く!」
と言い出した。
俺も悪寒が背筋に走り、すぐさまエンジンをかけた。
エンジンをかけてから数秒後、B達が走り込んできた。
俺「おい!?何があったんだよ!?」
B「いいから早く車出せ!!早く!!早く!!」
必死で叫ぶBの様子を見て、俺はすぐ車を動かす。
狭い道を通り抜けて、国道を走っている時に、少し落ち着いた様なので中での出来事を聞いてみた。
聞いた内容は俺を凍りつかせた。
B達がトンネルに入った後、Eが韓国人の事件について話始めたらしい。
「いざこざなんかじゃないんだ、軍人が悪かったんだ。あいつらは強制労働を韓国人は愚か、自国の農民にまでさせた。許せない、許せない、許せない!許さない、許さない、許さない!」
そう喋った後、1人だけ速足で行ってしまった。
懐中電灯を持っているのはEなので、B達はEに何かあったのかー!?と聞いたらしい。
しかし返事は無く、10秒程経った時、いきなりEが鎌を両手に持って何か叫びながら追いかけてきたと言う。
それでB達は怖くなって、走り込んできたと言うことらしい。
Bが話終わったと同時くらいにIが悲鳴を上げて気絶した。
サイドミラーを見ると、Eが凄い形相で追いかけてきている。
手には鎌。
俺は「ウヒィ」と恥ずかしい悲鳴を出したが、なんとか意識を保ち車のスピードを上げた。
俺は恐怖で震えながらも運転、B・Sは半泣き、Iは既に白目むいてのびていた。
すると、Nが鞄から人数分の縦に長い紙を取り出し、ちょっとゴメンね、と言いながら俺たちに貼り付けた。
直感的に、札とわかった。
そして俺達に説明する。
「その札を貼っておいたらE君は見えなくなるから大丈夫。Y君(俺)、見えてないでしょ?」
そう言われてミラーを見ると、確かにいなかった。
「でも安心しないで、見えなくても確かにそこにいるんだから。 これから私の家、つまり寺に向かって。もう少ししたら結界の中に入るの。そしたらE君の動きは鈍くなる。寺に着いて車を降りたら、B君とS君はI君を担いで急いで中に入って。この時振り向かない方がいいよ。Y君、私達も一緒だよ、わかった?」
「お、おう!」
なんとか力を込めて返事する。
正直この時点で、俺もDOUNしかけていたが。
それから20分で寺に着くと、Nの父親が出てきてた。
「お前ら、阿保ゥな事しよって!!」
あ、当然お怒りで…。
BとSはもう速攻でIを担いで寺の中へ入っていった。
俺も降りて寺の中に入ろうとした時、ライターを落として自然に振り向いてしまった。
「ダメッ!!」
エ?
俺の意識は切れた。
気が付くと、布団に寝かされていた。
周りにはB・I・S・N・Nの父。
どうやら俺は半日寝込んでいたようだった。
これはその日に聞いた話。もちろん事実だが、多すぎるので重要な事だけ。
Eは昨日の夜からすでに取り憑かれていた。
他の皆は無事お祓いした。
寺の周りには強力な結界を張ってあるので、Eは入れなかった。
俺が見たのは間違いなくEの姿。
そして、Eは取り込まれたため、もう二度と帰ってこれなかった。
その日はN宅に泊まって、次の日に帰ることになった。
帰宅途中、必然的にトンネルの付近を通るのだが、そこでありえない光景を見た。
トンネルの入口はコンクリート詰めになっていて、鼠が入る隙間も無かった。
怖い話投稿:ホラーテラー ウマシカさん
作者怖話