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短編2
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怪物の檻

とあるお店が在る。

俺は曰く付きなコレクション兼商品にまるで磁力に引き寄せられるように何度も訪ねてしまう。

そして今日も…

「やあ、いらっしゃい。

今日もコレクションを見たいそうだね。存分に見ていってくださいな」

この店は会員制だ。

会員になる条件は一つだけ、いつか商品を買う事。

いつになるかは、客次第だそうだ。

特典は好きな時に品物を閲覧できる。

ここは、そんな店。

それは店に入ってすぐに目に飛び込んできた。

その大きさと違和感に足が止まった。

そこには大型動物用の檻があった。空の。

「店主、この檻はなんですか?」

「ああ、この檻は…」

店主の話が始まった。

檻の持ち主は29歳の男。

男には昔から妄想癖と被害妄想があった。

小さな事でも気にし、他人を簡単に憎んだ。

気に食わない奴は妄想の中で怪物になり、自分は怪物を殺すヒーローだった。

ある時、男は恋をした。

近くのコンビニで働く女に。

いらっしゃいませと言われ声をかけられたと勘違いした。

温めますか?と聞かれ喜んだ。

またお越しくださいと言われ、また明日くると誓った。

男は毎日のように女に会いに行った。

男にとってコンビニは女とのデート場所だった。

肉マンを買い、ありがとうございましたと言われ好物が同じと嬉しかった。

漫画を買い、袋は一緒でいいですかと聞かれ趣味が合うと思った。

箸は二膳でいいですかと聞かれ2人で食べる夕食を思い浮かべた。

そのうち男はデートだけでは足りなくなった。

女の後をつけ自宅を知った。

女が不在の時に侵入し電話番号を探り下着を漁った。そこで男は驚愕の事実を知る事になった。

女と楽しそうに肩を組み笑う男の写真。

凄まじい怒りを感じた。

あの女は浮気をしていると。

自分という者がありながら他の奴と会っている。

許せなかった。

赦せるはずがなかった。

女は後だ。

恐らく出来心に違いない。許してもいい。

だが、奴はダメだ。

殺してやる…

次の日、男は奴を殺し山にばら撒いた。

それから女は笑わなくなった。

男は解らなかった。

せっかく奴を殺し浮気を許したのに。

男の幼い妄想は女のヒーローになると結論を出した。大きな怪物を倒せば女は自分に笑いかけてくれる…

尊敬し愛してくれる…

まず男は怪物を捕まえようと考えた。

そして女の前で怪物を殺しプロポーズをする。

その為に檻を用意した。

そして…

とある場所で男の変死体が見付かった。

鋭利な爪で抉られ原型を留めていなかった。

その横には身の丈を越える空の檻。

そして遺書らしき物には、捕まえるのが精一杯だったと書いてあった。

「その檻がこれです」

男の死に様を想像し気分が悪くなった。

「男は一体、何を捕まえたんですかね。

貴方には見えますか?檻の中の怪物が」

震える足を気取られぬよう店を出た。

怖い話投稿:ホラーテラー 月凪さん  

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