あれは、高校2年生の夏休み。
その日は綺麗な満月が窓から覗く、熱帯夜だった。
MP3から流れる『熱帯夜』が風流(?)だな、なんて思った。
寝付けずに、どれぐらいたっただろう。
R〇P SLYMEのアルバムが3、4回リピートしたころだったか、MP3が突然止まった。
驚くことはない、充電が切れたのだろう、と思いイヤホンを外そうとした。途端に、悪寒が走った。
動かない。
これが金縛りか、と変に納得した。
仰向けに寝ていた僕は、必死に目を開けようとするが、なかなか開かない。
ようやく薄目ほどに目が開くと、僕は信じられないものを見た。
ちっこいオッさん三人。
一人はフンドシ、鉢巻き、無精髭。つるっつるにハゲた頭に、月が反射している。俺の胸の上で、仁王立ちしている。
もう一人は、格好はほぼ一緒だが丸メガネをかけている。しゃがんで俺のビーチクあたりをつついている。
最後の一人に至ってはタバコをくわえ、気をつけの状態で寝ている僕の腕に足をかけ、
腕を組みながら哀愁を漂わせている。
状況だけなら滑稽な気もするが、本人としては恐怖だけが心を埋め尽くしていた、と言っても誰も信じない。
オッさん三人が何か叫んでいる。
ハゲ『そっちはどけんや!!』
丸めがね『こっちはダメばい!!!!』
哀愁『そしたら次、行こうで!!!!!』
窓をすり抜けてぴょんぴょん家から出て行く。
恐怖から解放され、気がゆるんだのか、ストンと眠りに落ちた。
太陽の下で、地図を描いた布団を乾かしていると、灰色の染みを見つけた。タバコの灰だった。
オッさんは実在する。
後々色々考えた。オッさん達は、九州訛りであったこと。
『こっちはダメばい!!!』。もしダメでなかったら、僕はどうなったのか。
隣の家のおじいちゃんが、その日に老衰で亡くなったことと関係はあるのか。
あれがなんなのか、まったくわからない。
今夜、オッさん達が貴方の家にもくるかもしれませんよ。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿タイ製さん
作者怖話