中編6
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花火大会の夜

前に「優しい人」というタイトルで投稿させて頂きました。

恐いかどうかわかりませんが、よかったら読んで下さい。

私が高校1年生の頃、仲のよかった女4人男4人で花火大会に行きました。

その中には前に投稿させて頂いた「優しい人」にも出てきた、霊感を持っている友達(今回Aちゃんとします。)もいました。

花火を見た後はその近くに住んでいるMちゃんの家で泊まることになっていました。

まだ日も落ちきっていない夕方、Mちゃんの親に浴衣を着せてもらい、さあ行こうと言う時に

「絶対にお酒は呑んだらダメだからね!!!」

と言われみんなで家を出ました。

しかし、まだまだヤンチャな高校生…

仲良しメンバーが集まればダメと言われて、守る訳がありません。

缶酎ハイとお菓子を袋いっぱいに買い、花火の見える位置に座って乾杯しました。

日も落ち花火が上がり初めた頃、お酒にも慣れていない高校生なので酔っ払っていました。

アルコールの味が嫌いな私はジュースを飲み、持ち前のノリの良さで友達と喋っていました。

時間が立ち酎ハイを6本飲みきったAちゃんが

「トイレに行きたい。」

と言い出し私と一緒にコンビニを探しましたが、もちろんどこも大行列。

怒られるの覚悟で、2人でMちゃんの家に行きベロベロだったAちゃんを担ぐ形で家に入りました。

トイレに入った瞬間吐き、私はかなり怒られ私服に着替えてみんなに帰って来るように言いに行きました。

家に着くなりMちゃんは叩かれ、かなり怒られていました。

ほとぼりが覚め家に入るとAちゃんは布団で寝ていて、ぽろぽろと涙をこぼしていました。

「どうしたの!?」

と慌てて聞くと

「女の子が呼んでる…聞きたくないのに、泣きそうな声でお願いされてる…」

と更に泣き出しました。

もちろんみんな戸惑いましたが私が

私「その子何て言ってる?」

A「……くしを探してるみたい」

私「くし?」

A「うん…大きな木の下に埋まってるって言ってる。家の前の…」

私「M…そんな木あるの?」

Mの方を向き聞きました。

M「うん。ドアを開けたら、1番大きな木が見える。」

正直お世辞にも綺麗とは言えないMの家は2階建ての1ルームのアパートで、Mの家は2階にありました。

Mと話していると、いきなりAが喋りだしました。

A「その子昔住んでたんだって…」

そのまま話しを聞きました。

私「その女の子どこに住んでたの?」

A「Mの家の斜め下」

Mの母親の話しによると、昔Mは小学校低学年ぐらいの頃に母親と2人でそのアパートに引っ越してきて、斜め下には家族が住んでいたが、あまり交流のないまま1年立たない内にその家族は引っ越したらしい。

その家族には確かに女の子がいたような気もするが、何年も前の話しだからはっきりとは覚えてないと言っていました。

その後に誰かが引っ越してくることもなくずっと空き家だったらしい。

でも、正直斜め下の家以外にも空き家の目立つアパートではありました。

A「その子がくしを木の下に自分で埋めたのか、誰かに埋められたのかは言わないけど、すごく大事な物らしい…」

Aは涙を流しながら話していました。

A「私が探すからお願い…帰って、お願い…」

と言いさらに泣き出しました。

私「どうしたの!?」

A「帰ってくれたけど、あの子と約束してしまった…どうしよう!!」

その瞬間声を上げて泣き出しました。

Aは23分泣いた後に冷静な口調で喋り初めました。

A「おばあちゃんがいてる…」

私「え?おばあちゃん?」

A「うん。優しいおばあちゃん…なんか煙草を吸ってる…でもパイプで吸ってて普通の煙草とは違う。」

その瞬間

M「もしかして、ゆりかごみたいな椅子に座ってる!?」

A「うん。椅子に座って揺れながらたばこを吸ってる」

そのことを聞いた瞬間Mはわんわん泣き出しました。

Mは話しにならないぐらい泣いていたのでAに話しを聞きました。

私「なんて言ってるの?」

A「Mのお父さんのおばあちゃんなんだって」

私「え?どういうこと?」

その瞬間Mのお母さんも涙を流し話し初めました。

「私はMが産まれてすぐに離婚したの。

Mはお父さんに引き取られたのだけど、私は産みの親でもあるから、お願いして定期的に会っていたの、でも日が立つうちに『お母さんと一緒がいい!!』ってMが自分で言って私と父親と話し会った結果、私が育てることになったの、でも何年か立って経済的な理由で父親が引き取ることになったの。

でもMと一緒に暮らしたい一心で頑張って、地元のスーパーで安い給料でも2人で生活できる最低賃金を稼げるようになれたからMを引き取るとこになったの、それで家賃も安いこのアパートに引っ越したの。

父親は仕事ばかりでかまってあげられないからお前の方がいいだろうと言って、文句も言わず私に親権を譲ってくれたの、もちろん定期的に会うことを条件に…

ここまでは親の事情だったり家庭の話しなんだけど父親が最初にMを引き取った時に、仕事ばかりして金銭面に苦労はさせないようにおもちゃを買ってあげたりしてたらしいの、でももちろんおもちゃなんていつかは飽きるし、親の愛情に植えてる子どものことを考えて父親のお母さん、Mから見たらおばあちゃんがずっと遊んであげてたらしいの。

そして話しあいで2回目に私が引き取った後に、おばあちゃんが亡くなってしまったの。

その話しを聞いたMは、子どもながらに『お母さんと住むって決めたから、お父さんのことは考えないようにしよう』と思ったみたい…もちろんそれは後から聞いた話しだけどね。だからその当時おばあちゃんが亡くなった話しを聞いても涙を1粒の流さなかったの。」

その話しを聞いた瞬間Mは声を上げて泣き初めました。

M「おばあちゃんが亡くなったって聞いたすぐは『私はお母さんといるって決めたから』って思ったからおばあちゃんのこと口には出さなかった。

でも後から『どうして会いに行かなかったんだろう』『どうしてお礼を言いに行かなかったんだろう』ってゆう思いで1人で何度も泣いたことがあった。

だからそのことを後悔してておばあちゃんのことを忘れたことは1度もない。」

その話しが終わりAが話しはじめました。

A「おばあちゃんがMの気持ちはしっかりわかってるって、離れてから1度も会いに来なかったことを悔やんでるのも、お通夜にすら出席しなかったのも、Mは後悔してるみたいだけど私は全く怒ってないって。

Mが元気に学校行って友達作って楽しく過ごしてる姿が見れてよかったって、だからあの時のことを後悔するのはもうやめてねって。

おばあちゃんはそのことを後悔してるMにずっと伝えたかったみたい。」

話しが全部終わりAはそのまま寝てしまいました。

Mの親子は泣きながら話しをし、私達も泣いてはいたものの親子の会話には入らずにそのまま寝ました。

次の日解散し、週明けの学校当校日にAと花火大会の日の出来事を話しました。

私「ビックリしたよ!!」

A「…ごめん。それ全部私が言ってたの?」

私「えっ!!うん…泣きながらずっと喋ってたよ。」

A「何にも覚えてない。たぶんずっと寝てた…」

本気でビックリしました。

あんなに喋ってたことを1つも覚えてないそうです。

確かに後から考えてみれば泣いたり喋ったりしている間、腕を動かすこともなく口が動いて涙を流しているだけでした。

A「何にも覚えてないけど、きっと女の子もおばあちゃんも伝えたかったんだね。

でも今まで気の合う人間が1人も現れなかったから、私が来たときに

『この子しかいない!!』

って思って寝た瞬間一気に来たんだろうね。

だから私はもう近づかない方がいいね、変な約束しちゃったなら尚更…次行ったらどうなるかわからないからね。

たぶん普段の生活に支障はないだろうから心配もいらないと思う、きっとあの女の子はアパートから離れないと思うし。」

その後Aには何もありません。

Mも何もないし別にそのままにしていたが、敷地内を住人達で掃除することになりついでに木の下を掘ってみたら確かにくしがあった。

すっごく汚くてボロボロで、ポケットには入れたくなかったので、家のドアの前に置いていたのに誰かがゴミ袋に入れて捨ててしまったらしい。

でもそれから特に何もないと言っていた。

それを聞いたAは

「事の発端は私だから何か言ってあげたいけど、女の子のことは全く覚えてない。でもMには何も着いてきてないからたぶん大丈夫!!」

なにが大丈夫なのかさっぱりわからないが信じるしかない。

と言うような微妙な顔でM笑っていた。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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