短編2
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赤いビー玉

とある店が在る。

俺は曰くつきのコレクション兼商品と、店長の言の葉に乗せた挿話に魅了されている。

この店は会員制だ。

会員になる条件はただひとつ。

いつか商品を買う事だ。

いつか手にするであろう商品の事を思い、今日も俺は店に足を運んでしまう…

「やあ、いらっしゃい。」

俺が店に顔を出すと、店長はいつものように挨拶をしてきた。

ふと見ると、店長は布で何かを磨いていた。

俺は店長が磨いている物が気になり聞いて見た。

「ずいぶん大切な物を磨いているようですが…一体何を磨いているのですか?」

店長はニコリとして、俺に磨いていた物を見せながら言った。

「これかい?これはね魂がこもったビー玉だよ…」

店長は、俺に赤いビー玉を見せながら話し出した…

ビー玉の持ち主は18歳の男。

男は才能に溢れた彫刻家だった。

男の作品は様々なコンクールで賞を取り、将来を有望視されていた。

だが男は病に倒れた…

末期のガンだった…

医者から余命3ヶ月と宣告され、彫刻を止めるようにと言われた。

だが男は彫刻を止めなかった。

自分の余命と戦いながら、最後の力を振り絞り彫刻をほった。

男は作品を作りあげた。

作りあげた作品の前で倒れていた…

倒れた男の右手に、透明なビー玉が握られていた。

「…そして、これがそのビー玉ですね。」

俺がそう言うと店長は静かに頷き、また話出した。

「そう…これがそのビー玉だ。彼が死んでから少しずつ透明な色から赤い色に変わっていったんだ…まるで彼の魂が入り込むように。」

と、その時だった。

赤いビー玉がカタカタ動き出した、そしてピキッと言う音と共に真っ二つに割れたのだ…

真っ二つに割れた赤いビー玉を見つめ店長が言った。

「彼が最後に作った作品はね、見事な曲線を描いた女性の裸体だったんだ。だけど、その作品には何かが足りなかったんだ…それが何か分かるかい?」

俺は赤いビー玉と店長の顔を交互に見つめ答えた。

「えーと…チクビっすかね…」

店長は優しく言った。

「そうだ…チクビだ!」

そう言うと、店長は2つに割れた赤いビー玉を優しく磨き始めた。

店を出る時、俺は呟いた。

「男なら、赤ちゃんからおじいちゃんまでチクビが好きだからな…」

俺の呟きは都会の雑音に消された…

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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