中編4
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卒塔婆

三年前の話になるが、毎年夏になると仲の良いグループで肝試しに行くのが恒例の行事になっていた。

その年は忙しいのもあって地元の墓地に行くことにした。

グループと言っても俺を含め三人なのだが、一人霊感がとてつもなく強い後輩がいる。(以下A)

そいつはいつもビビるくせに俺ともう一人の友達(以下B)には逆らえない関係にあるので、解説役そしてサンドバッグ役として何年も一緒にいる。

ちなみに断っておくが、別にイジメてるわけではない。芸人で言うとてもおいしい役の立場。

本人もそっちのが居心地がいいと酔った時にポロリしていた。

いわゆるM男。

話がズレてしまったが、そこの墓地での話。

バイクで10分程のところにそこはあって、とにかく墓地は広いので、入り口らへんに三台停めていざスタート。

地形を説明すると小さな山に墓がずらりとある。

左手に坂道を上る為の道。(もちろんその道、前後左右に墓はある)

右手には寺。

そして正面に下段の墓を廻る為の一本道。

まず俺たちは坂道に行くことにした。

その道がとにかく墓だらけだからさ。

B「何でもかかってこいやぁ!幽霊?何でもかかってこいやぁ!」

俺「一応夜中なんで、調子にのるなよ!あーあ、Bに憑かねぇかなぁ」

A「先輩さっそくなんですけどちょっといいですか……?」

俺B「ん?」

A「何でか知らないすけど、これ以上進みたくないっす。いや、進めないっす。多分後ろには行けるんですけど、前に動かないです」

B「出ましたAのホラが!まだ始まって10分も経ってないぞ!早く行こうぜ!」

A「マジです!本当に勘弁してください!Bさん!」

いつもならBには服従のAが本当に珍しく反抗した。それを悟ったのかBも了解した。いや、見えないうちらもビビったから了解した。

俺「じゃあ坂道は止めにして下の一本道にしよう!?」

おそらくこんなに早く終わらせるのが申し訳なく思ったのかAは了解した。

この日は蒸し暑かった。

なんたって風が全く吹いてなかったから。

それだけは鮮明に覚えてる。

A「さっきはすみません先輩。」

俺B「いや、いいよ。多分この道で何か起こって解説してくれりゃあさ」

A「…………」

説明するのを忘れていたがこの道がまぁ長い。ちなみに田舎でない。横浜での話だ。

おそらく6、700Mはある。

3分の1くらい進んだくらいか

左手に見える墓から

カタン

って音が聞こえた。

誰もが聞いた。夜中だし良く響いた。

俺「聞こえた?」

うなずく仲間

俺「風だべ?」

もちろんこの日は無風状態。てか何の音かすら分からない。

気にしながらも無言で進んだ。

左をチラチラ見ながら進んだ。

音の正体がわかった。

卒塔婆だ。

わかったのは二回目が鳴った時

今度は

カタン カタン

吹いたとしても前からの風だ。ただ俺たちが見たのは後ろに倒れる卒塔婆だった。しかも二回。

A「ヤバイっすよ。もう帰りません?」

B「いや、もうちょい行くべ」

格好いい先輩として引くに引けない。気持ちはすごいわかる。

それからは卒塔婆のパレードだった。

前に進めば進むほど

カタン

の数が明らかに多くなっていく。

もう一度言うが、風は本当になかった日なんだ。

半分くらい進んだら

もうカタンどころじゃない。

ほとんどの墓の卒塔婆が帰れと言わんばかりに鳴っている。

カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ

最高に怖くなった俺たちは走って戻った。

走りながらでも気付いたことがあった。

入り口に近づくにつれて卒塔婆の音が止んでいく。

俺もBも霊感ないけど、これを体験して本当にいるんだなって思ったくらいスーパー怖かった。

入り口について早く逃げたいから一目散でみんなバイクにまたがりエンジンを付ける。

A「先輩!………俺のバイク全く反応しない」

俺B「マジかよ!?落ち着いてキーまわせ!」

A「…………ダメっす!押して走ります!」

このバカのせいで早くこの場から立ち去りたいのにうちらまで押して走るハメになった。

当事者じゃなかったけど、自分のがエンジンかかんなかったら半狂乱だと今も思う。

長文にお付き合いいただきありがとうございました。

恒例の肝試しは懲りずに毎年続いてるので、また何かあったら書きたいと思います。

ちなみにAのバイクはガソリンは満タン状態で、走っあと近くの公園に着いたら何事もなかったようにエンジンかかりました。

原因は卒塔婆にあったのか?やはり遊びで肝試しはいけないのだろうか?

怖い話投稿:ホラーテラー 三船 剛さん  

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