短編2
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最後のキス

仕事で遅くなった。

街頭の無い道を自転車で駆け抜ける。

自宅に着いたら、夫はすでに眠りに就いていた。

簡単に食事を済ませ、そそくさとシャワーを浴びる。

横にいる夫におやすみなさいのキスをして眠りに落ちた・・・

・・・・

なんだか外が騒がしい?音も無く窓から入る赤色灯の光。

音が無いのにやけに騒がしい。これは、胸騒ぎ?

沈黙を切り裂く携帯電話の着信音。夫の携帯。

私は夢うつつでそれを聞く。

静けさの中電話の向こう側から聞こえる声。

「夜分に失礼致します。□□警察の者ですが、○○さんですか?」

「はい。」

「確認したいことがありまして、今ご自宅の前に来ているのですが、ご在宅でしょうか?」

玄関の扉を開ける夫。その向こうから聞こえる声。

「実は先程、奥様とみられる女性が遺体で発見されまして。。。」

・・・あぁ、そうだ。私はもう・・・

・・・・!!!??

そんな夢を見て跳び起きた。

窓には夢と同じく赤色灯の光。

胸騒ぎがする。

沈黙を破り、携帯の音が鳴る。

私は恐る恐る電話に出る。

「夜分に失礼致します。□□警察の者ですが・・・」

「・・・実は、ご主人とみられる男性が遺体で発見されました。」

!??夫が居るはずのベッドを見る。

誰も居ない。

こんな夜中に外に出たのだろうか?

警察の話は続く。

「詳しく調べないとわかりませんが、おそらく死後数時間はたっていると思われます。」

と、私が帰り着く前の時間を言う。

私がおやすみなさいのキスをした相手は一体誰だったんだろう。

私は、誰も居ないベッドに顔を埋め、泣いた。

最初から主(あるじ)が居なかったであろうそのベッドは、なぜか暖かかった。

怖い話投稿:ホラーテラー 零さん  

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