長編12
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箱と手帳*後*

あれから長い年月が経った…。未だに洞寺は見つかって居ない。

洞寺の両親は、あいつが小さい時に亡くなっており、親戚の家に預けられていた。

親戚は洞寺の事を良く思っていなかったらしく、洞寺が失踪後、警察に届けは出すものの自分達で探そうとはしなかった。

俺は何度か民宿に行こうと試みたが、何故かたどり着けなかった…。

それでも諦めきれず周囲に聞き回っていた。

そんなある日。

俺は1人居酒屋で酒を飲んでいた。見付からない苛立ちを少しでも紛らわそうと、毎日浴びる様に飲んだ。

フと横の男性の話が聞こえてきた。

男性「卓~また入院者が出たんだよ。お袋が頭が痛いって嘆いてたわ。これで何人目だ?これもあの親子の祟りかね?」

卓(店の亭主)「やっぱり皆肉が溶けて骨になる幻覚を見るのか?」

男性「そうみたいだな」

俺「!!!」

肉が溶ける!?骨!?確かあの女は顔の半分が溶けて、洞寺の手紙には骸骨と書かれていた…。

俺「…すいません!その話し詳しく聞かせてくれませんか!?」

男性はキョトンとした顔でこちらを向いた。

男性「すまんが…これは面白半分で聞かせてあげられないんだ」

俺「お願いします!!そこにダチ…親友が居るかもしれないんです!!」

俺は土下座をし、何度も何度も頼んだ。

男性「ちょっ!君!頭をあげてくれよ!どうして君はそんなにこの話が聞きたいのか、親友とどんな関係があるのか話してくれないか?」

俺は立ちあがり男性の横に座った。

俺は5年前に起きた事、そして今までの事を事細かく説明した。

男性は途中何度も驚いた顔をしていた。

一通り話し終えると男性が携帯を取り出し、誰かと話をしだした。

男性「なぁ…君、この後あいているかな?逢わせたい人が居るんだ。」

俺「…?大丈夫です」

男性はまた携帯で話しだした。

携帯を切ると立ちあがった。

男性「付いておいで!詳しい話を知ってる人に逢わせてあげるから」

俺「お願いします!」

卓「気をつけてな。これ持ってけ」

亭主は後で食べれと、おにぎりをくれた。

俺と男性は店をあとにした。

10分位歩くと男性は立ち止まった。

男性「俺酒入ってて運転出来ないから、仕事でこの近くに居た父の車で行くよ。ちょっと遠いけどね。あっ俺の名前は神野信。君は?」

俺「知夫昔直也です」

信「よろしくね!あっ!あの車だよ」

信が指を指した。どこか見覚えがある車だ…。あっ!あの時のおじさん!

A「おっ!お前あの時の兄ちゃんか?あの時何か様子がおかしいと思ったら、やっぱあの場所に行ったんだな!?」

俺「お久しぶりです。あの節はありがとうございました。………はい。行きました」

A「こんっっっの馬鹿たれが!あそこは遊び半分で行く所じゃねーぞ!」

信「父さん!知夫昔君達は自らの意志じゃなく、呼ばれたんだよ!それに車に乗せた時、異変に気付かない父さんも悪い!知夫昔君にこんなにも憑いてるのに…」

俺「えっ…!?」

A「そうだな。乗れ!すぐに出るぞ」

俺達は車に乗り込んだ。Aは違反速度をゆうに超えてるだろうスピードで目的地へ向かった。

途中吐き気を我慢しながら信の顔を見た。

気付かなかったが、男の俺からしても、惚れてしまいそうな綺麗な顔立ちをしている。信はこちらを向いた。

信「大丈夫!まずは知夫昔君のをとらないとね」

と、笑顔で言った。俺に何が憑いてるんだ…?

暫くして一軒の大きな家に着いた。

なんて言うのかな?いかにも日本って感じの家。

ただ普通の家と違うのは、門に勾玉を持った石像が二対置いてある事だ。

A「中で親父が待ってるぞ!早く行ってやれ」

信「知夫昔君!こっち」

俺は門をくぐった。と同時に体が少し軽くなった気がした。

奥の部屋に案内されると、70歳くらいのおじいさんが座って居た。

おじいさん「良くきたな!ワシの名は光守っつうんだ。まぁ座んなさい」

俺は光守と向かい合わせに座った。いつの間にか信は居なくなっていた。

光守「まずは、坊主等が行ったっつう宿の話しからな。

今から何十年も昔の話し…

同時あの村は観光客も沢山来る活気溢れた場所だった。

その中でもサイハナ民宿が1番の人気でな。

なんせそこの娘さんが明るくて美人だったからだ。

しかし……

ある日その娘さんが、朽肉病と言う厄介な難病にかかってしまった…。

朽肉病とは、体の中に小さな虫が入り込み、神経を麻痺させ人間を動けなくし、徐々に体内から肉を喰らっていく…。

食べる時に出す唾液が肉を溶かして行く病気だ。

現在ではそんな病聞いた事ないだろ?

村の人は湖が病の原因だと突き止め、水中に薬を撒いた後、湖全部を埋めてしまったんだ。

そして…拡大感染を防ぐ為、感染者を生きたまま燃やし埋めてしまった。

何故か、この病は人にしか感染しなかったんだ…。

燃やす際、大半の人は仕方ない…と納得していた、老人ばっかだったからなぁ…

でもサイハナ民宿の娘さんだけは嫌がったんだ…。

そりゃ生きたまま燃やされるなんて、想像も絶する程の恐怖と苦痛だろう。

娘の父親も頑なに反対してな、暫く様子を見させて欲しいと申し出たんだ。

村人は部屋に頑丈な扉を設置し、村人2人を監視につけ監禁状態で良いならと言った。

村人も若い人間を殺すのに少し後ろめたさがあったんだろうな…。

父と娘はそれを承諾し、民宿には似つかない分厚い扉を付けた。

しかし、娘の症状は悪くなるばかり…

父親は焼き殺されるのは可哀想だと逃げる決意をした。

そしてある晩、見張りの飯に睡眠薬を入れ眠らせた後、娘を連れ逃げ出した…。

でも、村人はそれをお見通しだった。

2人は捕まり、娘は縛られ……村人に火を放たれたんだ。

娘は言葉にならないような悲鳴をあげ、父親は村人を振り払い……娘と共に焼けてしまった。

焼けている最中、娘なのか父親なのかは解らないが、ずっと「呪ってやる」と叫び続けていたそうだよ」

なんとも言えない悲しい気持ちがこみあげた。そんな過去があったなんて…

俺「っでも…なんで世間で問題にならないんでしょうか?そんな事をしたら、もっと大きな事として取り扱っても良いはずじゃ…」

光守は静かに首を横に振った…。

光守「何故だかわからないが、国はこれを隠したんだ。大々的に病が広まった訳ではないし、村一つで防げたからな…」

顔をしかめながら光守は続けた。

光守「その後その村に住んでいた人達は、散り散りになった。しかし、1年も経たないうちに皆死んでいる。それ程あの親子の怨念は強かったんだろう…」

俺は言葉が出なかった。

光守は側にあった茶をすすっている。

と、同時に目の前が歪む。

俺「!!うわっ!」

光守がバッと立ちあがり何かを俺に振り掛けた。

歪みが治まった。しかしなんだと言うんだ…。

光守「悪い悪い!坊主の憑き物を祓うの忘れとったわ(笑)」

光守はガハハと笑う。

俺「…」

コンコンとノックの音がして、スーっと襖が開いた。

信「じいちゃん…準備できたから、そろそろ行くよ」

光守「おぉ~そうか。ちょうど憑き物もとれた所だ!連れてけ」

俺は信に呼ばれ立ち上がった。

光守「坊主!!これから先、また何かあったら何時でも来い!」

光守は、またガハハと笑い俺の背中を叩いた。

俺「ありがとうございました!」

俺は信とAが待つ車に向かった。その途中気になった事を信に尋ねた。

俺「あの…俺に憑いてた物とは?」

信「…知夫昔君には念の塊と雑霊がね。きっと念が、色んな所から雑霊を集めちゃったんだね。殆どの霊は門をくぐった際に堕ちたんだけど、まだ少し憑いてて…。あっ!でももう大丈夫だよ!」

俺「…念ってなんのですか?」

信「知夫昔君も薄々気付いてると思うけど、5年前の時に憑いたみたい。念事態は、君が強い意思を持っていればそのうち消えてなくなるよ」

俺「そうなんですか…でもこの5年間特に変わった事は…」

信「それは特殊な念で、何かを邪魔するって言えば良いのかな?この場合はサイハナ民宿に君を近づけさせない為に張ったものだね。だから直接知夫昔君に危害は無いのだけれど、念につられ雑霊が寄ってきてしまうから、結果的には悪い物になるのかな」

なる程…だからあれだけ探しても民宿がみつからなかったのか…。

さっきの光守さんの話で、5年前の扉の謎も、女の姿の意味も解けた。

車に着いた。Aはニヤケた顔して「おっ!とれたな」と言った。

この家族には、俺には見えない者が見えているんだな…

信「知夫昔君…これから病院に向かうけど心の準備は良いかい?」

俺「大丈夫です!お願いします!」

そこに洞寺が居るかどうかもわからない…。だが俺は必ず居ると思った。

確信なんてないが、居酒屋で信君に逢ったのは、洞寺が導いてくれたんだと思っているからだ。

また、かなりのスピードを出し車が発進した。

数十分位進と随分と山奥に来たのか、辺りは木で囲まれている。

前に進に連れ、どんよりとした空気が流れている気がした。

信「知夫昔君…これもってて。これから先何があっても決して離さないで」

そう言って信君は御守りをくれた。

少し変わっていて、真ん中には勾玉がくっつけてある。

俺「ありがとうございます。でも…なんで?」

信「これから向かう場所は、君に憑いてる念と同じモノで違うモノ。念の使い方が異なるんだ」

俺「???」

信「君の念は遠ざけるモノ。患者の念は招くモノ…。念が集まり膨張しているから、現に無いモノまで創造してしまうんだ。」

俺「えっと?」

信「取り敢えず、それを持っててくれれば大丈夫!心配ないよ」

信はニコッと笑う。俺は御守りを首から下げた。

急に車が止まった。

A「着いたぞ」

俺は車から降りる…が、民家があるだけで、病院らしき建物は見当たらない。

俺「え…っと?病院はどこに?」

A「あるじゃねーか?目の前に」

目を凝らして良く見る。しかし病院なんて見当たらない。

信「父さん…からかわないであげなよ!知夫昔君、病院は地下にあるんだ。この民家が入り口だよ」

俺「なんで地下にあるんですか?」

信「……。それよりも早く友達探しに行こうか!」

話しをはぐらされたのか?

この病院には何か秘密があるんだろうか…。

俺達は民家の扉を開けた。ギギギ…っと音を立て扉が開き、中にはおばさん(以後B)が居る。

B「あら信ちゃん!久しぶりだねぇ~。その子かい?…準備は出来てるから行っといで」

信「清水さんありがとう!知夫昔君行くよ」

そう言って信君は俺の手を掴んだ。

家の奥を進むと襖がある。

襖を開けるとその建物には不自然な、エレベーターがあった。

と、言うより襖自体がエレベーターなんだ。

呆気にとられていると信君が引っ張った。

信「ビックリするでしょ?俺も最初はビックリしたよ」

ニコッとしながら信はボタンを押す。

俺はもうすぐ洞寺に逢える嬉しさから、高鳴る気持ちが抑えられない。

洞寺は俺を呼んでいる。

エレベーターが動きだした。

エレベーターはゴウン!と音を立て止まった。

どうやら到着したらしい。

信「知夫昔君…絶対目を合わせちゃ駄目だよ!じゃあ、行こうか」

信のセリフ一つ一つ気になる。が、俺は早く洞寺に逢いたいので、忠告を素直に聞く事にした。

扉が開かれると先程と広い空間があった。

でも、なんだか空気が重い。

001号室~等扉に書かれ、中から叫び声が聞こえる。

俺はビビりながらも前に進んだ。

信「…うん……わかった。…ありがとう」

と、独りで何かと話しているのか?誰も居ない所を向きながらブツブツと言っていた。

信「知夫昔君。次の曲がり角…絶対に横を見ないでね。もし見てしまっても声をあげちゃ駄目だよ!!」

信は力強く言った。俺は少し戸惑いながら応えた。

俺「はい…」

少し行くと右手に曲がり角が見えた。

重たい空気がズン…とのしかかった。

見覚えのある感覚。

俺はそこにある禍々しいモノを知っていると直感で感じた。

信君に言われなくても、俺には横を見る勇気はない。

信は歩く速度を緩め、何も言わず俺の右横に立った。

俺と同じ歩幅で歩く。

『俺が居るから大丈夫』と背中を押された気分だ。

俺が女だったら、間違えなく信に惚れてたな。

角にさしかかった。

ソレを見ないように直進する。

が、何故か顔が吸い寄せられるように、右に向こうとしている。

『冗談だろ!?駄目だ!見てはいけない!なんだよ…チクショウ!勝手に動くなよ!』

と、心の中で叫んだ。

もう駄目だ…と思った瞬間、胸元がバチッっと音をたてたと同時に顔の自由が戻った。

胸元…あっ!御守り?

御守りが俺を守ってくれたんだと思った。

信「大丈夫?」

俺「大丈夫です。途中顔が右に向こうとしましたが、御守りが守ってくれたみたいで…」

信「ちょっと御守り見せて?」

俺は胸元から御守りを取り出した。

あれ?勾玉の色が赤くなっている。

確か貰った時は透明だったはず…。

信「あ~…やっぱ色変わっちゃってるね。でもじきに戻るから大丈夫だよ」

俺「やっぱ御守りに助けられたんでしょうか?」

信「うん。赤くなるのは霊の攻撃を阻止した証。紫は人。青は君にとって善となるモノを示してるんだ」

俺「善となるモノ?」

信「いずれ解るよ」

ニコッと笑いならが背中を3度触れられた。

信「あっ…ここだよ」

【済】と書かれた扉の前で信が止まる。

俺の心臓が一気に高鳴った。

ドアノブに手をかけゆっくりと回した…。

扉を開けると真っ白の空間の中に人が2人居た。

1人の男はこちらを向いている。

見た事無い顔だ。

もう1人は随分と痩せこけているようで、椅子に腰掛け壁側を向いていた。

俺「…洞寺??」

椅子の人がゆっくりこちらを向く。

洞寺「やあ…久しぶり」

俺は側に駆け寄ると、その場で泣き崩れた。

細くなった洞寺の手を握りしめ、声にならない声を出しながら泣いていた。

俺「心配したんだぞ…!今まで何処で何してたんだよ!!」

洞寺「心配かけたな。…今まで何してたのかは、ここの決まりで言えないんだ」

俺「そっか…。でも、お前が無事でよかったよ。今度こそ一緒に帰ろう」

洞寺は小さく首を横に振った。

洞寺「俺こんなんだし、もう帰る家もねーよ…」

俺「何言ってんだよ!俺が居るじゃねーか!!お前はこれから俺と一緒に暮らすんだよ!!俺がお前を支えてやる!だからお前は、ちゃんと飯食って、寝て元気になれ!!」

洞寺は涙を流しながら「ありがとう」

と何度も言っていた。

洞寺を支えながら、病院から出るとAの車が外で待っていた。

俺達は車に乗り込んだ。

A「お疲れさん!早速で悪いが出すぞ?健全な人間がこんな所に長居はまずいからな!」

そう言うと車を発進させた。

俺「信君…本当にありがとう。何てお礼すればいいか…」

信「その気持ちだけで十分だよ」

俺「あっ…そう言えば、何で洞寺があの部屋に居るって解ったんですか?」

信「あぁ…教えて貰ったんだよ。洞寺君も君を思っていたから探しやすかったみたい」

俺「…??」

また信はニコっとしていた。俺はそれ以上踏み込んではいけない気がして聞けなかった。

洞寺「…でも、こうやってまた知夫昔に逢えるなんて考えてもいなかったよ」

俺「俺だって思わなかったさ。この5年間必死で探しても見つからないし…もう駄目だと思った」

洞寺「本当…ありがとうな」

俺「なっ…改まって言うなよ!恥ずかしいべ」

流れる涙を拭った。

この5年で俺も洞寺も涙もろくなったもんだ…。

そうこうしてるうちに駅に着いた。Aは家まで送ってくれると言ったのだが断った。

俺「あっ!そう言えばおじさんの名前は?」

A「聞くのおせーよ!神野力矢(りきや)だ!覚えとけよ!」

力矢はガハハと笑い手を振った。

信「じゃぁ、気を付けてね。君達はもう大丈夫だと思うけど、何かあったらまた力になるから…」

俺&洞寺「ありがとうございます!!」

俺達は2人に向けて大きく手を振った。

その後俺と洞寺は一緒に暮らしている。

洞寺は1人で歩けるまでに回復し、昔のヤンチャぶりも復活した。

洞寺から聞いた話しだと、信君はまだ19歳らしい…。

俺は年下に敬語を使っていたのか。

それに酒…。

でも信君は俺等よりも妙に大人びていたし、色々お世話になったから、また逢う事があっても俺は敬語を使おうと思ってるんだ。

勿論酒の事には触れないつもり。

一つ気になるのが洞寺の御守り。

こいつも俺と同じ物を持っているのだが…常に赤くなっている…。

しかし今の所洞寺に変わった様子はない。

色々な疑問を残しているが、俺と洞寺の長い戦いは終わった。

俺はそう信じている。

*長い間おつき合いいただき本当感謝です!

自分が思う以上に文が長くなってしまい申し訳ない。

さて、皆様は文中に隠された俺からのメッセージを解読出来たでしょうか?

それが解ければ箱と手帳の本当の意味がわかって貰えると思います*

怖い話投稿:ホラーテラー 優さん            

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