中編3
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心霊スポット

 

 

 今更なのですが…知らないと言うのは恐ろしい事です。

 そして、知らなかった方が良い事も…あります。

 

 

 今から三年前の夏期休暇の時の出来事…。

 その日、毎年恒例の家族旅行で、夫、娘達二人と私は列車でH市に向かっていました。

 何処に行く時にもそうなのですが、先ず乗車駅で各人の好きなお弁当や飲料等を買って席に着きました。

 進行方向に向って右の窓際の席から私と上の娘、通路を挟んで夫と下の娘の順番で座っていました。

 乗車して食事をしながら、これからの予定や他愛ない雑談等一頻り賑やかに会話を交わした後、私は下車駅に到着する迄の間仮眠を取る事にしました。

 車内の空調が丁度良く効いていたのと、夜勤明けの疲れから直ぐに深い眠りに陥った事を覚えています。

 

 それからどれ位時間が経った頃でしょうか。

 ふと何とも言えない寒気と、異様な気配を感じて私は目を覚ましました。

 最初は冷房が効いた車内で眠っているうちに体温が奪われて冷えたからだと思いました。けれども以前からの経験で夏用の羽織る物を着用していた上に、その寒さは尋常の物ではありませんでした。

 しかも後部座席方向からは他の乗客の方の

 

 「暑いなあ…車内の冷房効いていないんじゃない?」

 

等と言う声が…。

 

 (えっ、暑い?それどころか凍りそうに寒いけれど…。)

 

 そう思った時、隣に座っていた娘が無言で直ぐ右真後ろの窓の方を指差しました。

 

 「…!?」

 

 私の後部座席に座っていた方と窓越しに目が合ったと、その時点ではそう思いました。

 しかし次の瞬間、それが間違いであった事に気が付き愕然としました。

 何故なら後部座席の方は年配の方で眠っていたし、その窓に写った顔とは全く別人だったのです。

 

 「見た?」

 

 小声で訊ねる娘に私は無言で頷きました。

 

 三十代位の男性の霊でしょうか…。

 何故霊かと判ったかと言うと、あまり大きな声では言えませんが私と上の娘には霊感がある事と、この時は幽体を通して透けて隧道の壁が見えていました。

 姿は直ぐに見えなくなりましたが、その何かを訴えたそうな哀しそうな表情が印象的で、私達二人は心の中で(南阿弥陀佛…。)と唱えながらそっと手を併せたのでした…。

 

 

 T新幹線、T駅〜M駅間S隧道。

ネットの情報に依ると此処はかなり有名な心霊スポットだそうです。

 事故で亡くなった作業員の霊、古戦場だった事から武将の霊が出ると伝えられていますが、真実の程は不明です。

 

 その年の十二月に夫は交通事故で亡くなりました。

 霊を見た訳ではありませんが、同じ業界に勤める者でした。

 更に事情があって上の娘は翌年の夏から二年間、この心霊スポットの地方に住む事になりました。

 偶然と言ってしまえばそれ迄ですが、果たしてそれは…。

 私も娘も今となっては本当の處は判りません…。

 

 

−了−

 

怖い話投稿:ホラーテラー 朱雀さん  

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