中学時代の同級生A君の話。
彼は小学校の頃から頭も良く、中学に入ってもテストは学年で常に10位以内になり、中学卒業近くの頃は1位にもなっていた。
中学卒業後は、県内でトップクラスの進学高校へ入学。
そこでも学年で上位だったらしい。
そのまま大学も、有名どころを現役合格。
国連英検特Aをはじめ、いろんな上位資格も取得していた。
「あいつすげえなあ」
同郷の俺らの間で、出世頭になるのは確実だと思っていた。
ところが、大学に入って2年目頃から、だんだん学校に行かなくなり、いつの間にか地元に帰ってきた。
何があったのか聞くと、だんだん頭にモヤが掛かった状態になり、焦燥感に襲われて、
勉強はおろか、日常生活すら辛かったとか。
「新しいことがさっぱり覚えられなくなったんだよ」
とりあえず、地元に帰ってきて家具店のバイトを始めたけど、
仕事教えられても全然覚えられず、
「あんた○○大学に行ってたんだろ?」と呆れられる始末。
おまけに、覚えられないばかりか、商品の名前や、他の人の名前も覚え間違いばかりし、
店の責任者の人から、辞めて欲しいと言われて、バイトは終了。
その話聞いて、まさかと思ったが、こうやって面と向かって会話してても
ボーッとして、どこか遠くを見て心ここにあらずという感じで、
昔からの友人の俺が言うのもなんだけど、ちょっと近寄りがたい人になったなと思った。
思い当たる節があるのだが、言い辛い。
どうしようか迷っていたら、彼の方から先に言ってきた。
「鬱病かもしれないなと思って、何箇所か病院行ったけど、貰った薬飲んでも眠くなってくるから止めた。
ああいうのって、気分は楽になるけど、要は鈍感になってるだけだし。」
ああ、やっぱり鬱病なのか?
俺、詳しくないから一般論になっちゃうけど
病院でちゃんと治療して貰うのに越した事はないんじゃないか?と言った。
「いいんだよもうどうでも。変に薬飲んでると、体が重く感じるし、朝起きられないし」
うまくいかなくて、病院に不信感すら抱いているのではないか…。
しかし、彼自身がそう言うなら、これ以上無理強いするのも悪い気がするから止めておいた。
それから4年間の間に、彼はバイトや契約社員を何箇所かやったが、
どこも続かず、転々としていた。
仕事が覚えられず、覚えたと思ってても覚え違いも多く、ボーッとしている時も多く、
どこでも呆れられて、干されて嫌になって辞めるか、その前に先方から首切られるか、
どちらかのパターンだった。
その間も、たまに彼の所に遊びに行った。
行くたびに気になったが、本棚を見ると、呪術や神秘学などの書籍が異常に増えてきた。
会話の内容も、オカルトめいたネタを出すことが増えてきた。
聞いていて感じたが、今の彼は、そういう方面には興味津々のようである。
仕事などとは違い、オカルト路線の、特に自分の興味持った事柄は覚えられるらしい。
俺と同じ部屋に居ても、会話途中でいきなり何かを思い出したように、パソコンに向かい、海外のサイトを見たりしている。
元から英語が得意で、ドイツ語も多少出来るため、そちらの国のオカルト情報などもある程度読めるようだ。
かと思えば、会話途中で腕組みをして、それまでの話に全然関係ないのに、いきなり
「なあ、幽霊ってやっぱり実在するのかな」
と、うつむき加減で大真面目に言い出したりする。
彼とはだんだん話も合わなくなってきて、もう3年くらい会わなくなった。
他の同級生からの伝聞に依れば、ますますオカルト路線に傾斜して、古代神話や悪魔主義の方面にも関心を持ってきたとか。
今じゃバイトすらしておらず、部屋に居るか、近所をぶらぶらしているか程度らしい。
どこでどう人生のルートが曲がってきたのかわからないが、彼はこの先どうするのだろうか。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話