中編5
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地蔵盆:完

前回までの御批判・応援頂いた方有難うございました。

一部の表現や体験を割愛させて頂き纏めさせて頂きましたので、多様なご意見を頂戴できれば次回以降の参考とさせていただきたいと思います。

薄暗い電球の灯りの下で老婆が私に語る。

老婆「今から言う事を必ず守るのじゃよ。もし守れんかった時は・・・・」

私は静かに頷いた。

老婆「先ずこの家を出てから御宅の町まで帰る道じゃが、今から言う道順で帰る事じゃ。一つでも間違えたら終いじゃからの」

私「・・・・はい」

翁が顎をしゃくり主婦に促し、私の手元に紙と鉛筆が渡されました。

少しの間を置いて、老婆が緩やかに口を開きました。

先ずこの家を出て東に進み道なりに角を南に進む

次の辻を東に向いて進む

また次の辻も更に東に進む

そのまま更に辻を二回東に進む

その次の辻を南に向いて進み角を東に向かう

そして枝道を南東に進む

次の枝道も南東方角に進む

そして出た枝道を今度は南西に進む

次に分かれ道を東南東に向かって進む

次の分かれ道も東南東に進む

出た道を北東に向かって進む

そして出た角をコの字に進む

そして南東へ道なりに進む

最後の別れ道を南西に入る

聞いてるだけで頭が痛くなりそうだったのですが命がかかってる自覚がありましたので必死で聞き入りました。

そして老婆からはもう一つの約束事が言い渡されました。

老婆「今の道のりを歩んでこの町を出るまでの間は決して後ろを振り向いては行かんぞ、いいな。決してじゃぞ!」

私「・・・・はい」

後ろを振り向くな

それの意味するところはうっすらと頭を過りました。

老婆の教えを紙に控え、それを握りしめ何度も何度も頭の中で反芻しました。

老婆・翁「無事を祈っとるよ・・・・」

私「・・・有難うございます。絶対に辿り着いて見せますから!」

そう言って玄関を出ました。

外門をくぐり道にでた瞬間に足がガタガタと震え恐怖に襲われました。

先日ほどまで歩いてた道とは思えぬ程に暗く、重く、怖気に満ち溢れていました。

よし・・・いくぞ・・・

老婆に教わった道をゆっくりと歩き出します。

数分ほど歩いた所で違和感に気付きました。

・・・・何か・・・いる・・・・

これが恐らく二つ目の約束に秘められた全てでしょう。

見えないけど明らかにそこにいる何か・・・・

自分からおよそ数M後ろからとてつもなく突き刺さる視線を感じます。

ゴクリ・・・

生唾を飲み込み一歩ずつ震える足を動かします。

今にも走り出したい気持ちで一杯でしたが、道を間違えてしまってはいけないと言う理性で必死に耐えました。

つかず離れずその何かは私の後ろにいるまま更にいくつかの辻を越えました。

ぎぎっぎgっごgggっぐぐごぎっぎっぎがっぎgっががいぎぎぎっぎぎぎあ

突然後ろかららくぐもった獣の様な声が響いて来ました!

「ひっ!・・・・・」

思わず声が漏れ2・3歩だけ走りました。一瞬足がもつれかけて走るのを思いとどまる事が出来ました。

その声には沢山の怨嗟が籠っている事だけが伝わってきます・・・・

恐る恐る早足で進んで行く最中で感じました。

・・・距離が・・・縮まっている!?

見えている訳ではありませんが確実に感じ取れます。

その何かは明らかに先程よりも私に近づいており、距離にしておよそ3・4歩程度だと感じられます・・・・

「う・・・」

思わず息が止まりました。

後ろからはとてつもない腐敗臭が漂ってます。

生臭い強烈な臭気に今にも気を失いそうになりましたが、息を潜め只管歩き続けます。

更にいくつかの角を越えていよいよ道のりも後半にさしかかりました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

更に接近してきた様子です。

耳の後ろに生温かい吐息の様なものが吹きつけられ、頭の真後ろではこの世のものとは思えない声が唸る様に響いています・・・・・

辺りの暗さより尚も濃く深い闇が自分の真後ろに広がっている風に感じ取れました。

何度も何度も気を失いそうになりましたが何とか最後の小道に辿り着きました。

!!!!!やったぞ・・・!!帰れる!!!

私は確かに希望を感じたのです。

今まで震えていた唇もグッと噛みしめ、足にも自然と力が入ります。

尚も真後ろにはヤツの存在を感じておりましたが、うっすらと見えるいつもの世界が自分を奮い立たせてくれます。

一歩進むたびに奴の存在感が薄くなっていきます。

その都度に足取りが軽くなり出口付近まで来た時は笑みさえこぼれていた事かと思います。

そして出口の角の電柱に並んだ時に完全に奴の存在を感じる事は無くなりました。

目の前にはいつものお供えをしているお地蔵さんが私の帰還を祝福してくれている様子です。

老婆「よく頑張りなさったの。これでもう大丈夫じゃ」

私「あ、有難うございます!!」

そこには老婆の姿は無く厭らしく下卑た笑みを浮かべる化け物が佇んでおりました。

「あああああああああああああああああああああああああ」

私はそいつの狡猾な罠にはまってしまいました・・・・・

既に元の世界に戻れたと思いこみ安堵した心の隙を狙っていたのです。

私は電柱一本分の僅かな距離ですがまだあちら側に存在しておりました。

・・・・・逃げなきゃ・・・!

しかし体は金縛りにあった様に動きません。

あと一歩なのに・・・・!

暗闇の中に浮かんでた顔がどんどん姿を現します。

そして今まで希薄になっていたその存在感は私を押し潰さんばかり増大していきます。

・・・・・・なんだよこれ・・・・誰か・・・・助けてくれよ・・・・

目の前には全身が腐敗して眼球は垂れ落ち、肉はところどころそげ落ちた女性らしきモノが立ちふさがってます。

その口角は耳元まで避け、全身の穴からは蛇の様なものが鎌首をもたげております。

・・・・・ああ・・・おれもああなるんだ・・・

化け物の背後に広がる闇の中には無数の苦悶の表情を浮かべた顔がいくつも浮かび上がってます。

その中には私に向かい鎌を振り下ろしたあの男の顔もありました。

「来い来い来い来い来い来い来い来い来い来い来い来い来い来い来い来い来い来い来いこいこいこいこいこいこいこいこいこいこいこいこいこいこい・・・・・・・

後ろの顔がいっせいに呟き始め女が私に近づいてきます・・・・・・

  ドンッ!!!!

何かに激しく突き飛ばされました!

昼間の熱気もすっかり抜けたアスファルトの上で眼をさましました。

私はこちら側にいます。

ふと前方の小路に眼を向けました。

そこには最初に道を教えてくれた子供が立っていました。

そしてスッと消えて行きました・・・・・・・

私は呆けた顔で無意識にポケットに手を入れました。

・・・飴が無い・・・・

あの子供は何だ?・・・・助けてくれた?何故?

訳も分からず途方に暮れましたが取りあえず家に帰ろうと思いました。

振り返る私

目の前にはいつもの石地蔵

足元に飴玉一つ

頭を下げて帰る私にそのお地蔵さんがそっと微笑んでくれた気がいたしました。

おわり

余談ですがこの後ウォーキングは直ぐにやめてしまいましたがこのお地蔵さんには今でもしょっちゅうお供えをしています。

地蔵盆も休まず参加しております。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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