中編3
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邪兒 #宝瓶

白羊:第1

金牛:第2

双児:第3

巨蟹:第4

獅子:第5

処女:第6

天秤:第7

天蝎:第8

人馬:第9

磨羯:第10

宝瓶:第11

******

それは確かに紫乃さんの声だった。

オマエラは

才能が無くてもそれを努力で補おうとする者の足元にも及ばない

ヒトとして

動物として

生命として既にオマエラは

タマシイが穢れている

阿鼻地獄で

未来永劫

汚らしい血涙で以って

タマシイを沐い続けろ

玉那覇をオマエラにあずける

い―…

 室父「押さえ込め!!!!」

布が裂かれる音がし、大勢の足音が横をすりぬけ紫乃さんのほうへ向かった。

 室「那波!!下がってろ!!!」

室に突き飛ばされる。

 ?「駄目だ!!!とりこまれています!!」

 ?「そのまま押さえてろ馬鹿野郎!!」

 ?「しかしこのままでは!!」

 室父「おまえら!!…紫乃の想いを反故にする気かァ!!!」

 ?「もろともに祓う!!!いくぞ!!」

水の撥ねる音。

苦しそうな呼気。

仏の合唱。

眼隠しをとってみた。

前方には入り乱れる僧侶たち。

本殿が少し高い位置にあるため、階段の元で何が起きているか判らない。

白布が風に舞い、そこで起こっている事を妖艶に隠して。

知りたくもなかった。

念仏が止み、なにやら人の動く気配がそこかしこでする。

室の父が、駆けてきた。

 室父「みんな俺についてこい。早く、さあおいで。眼隠しはもう取ってよい」

室の父は、泪で。

顔も、声も、くしゃくしゃじゃないか。

後ろで、室の慟哭が聞こえる。

その理由は、知りたくもなかった。

考えたくもなかった。

わけもなく、俺はただ天に向かって吼えた。

奥島は、五蘊に謁見した日の一日後、

帰されてすぐに、マンションから飛び降りて自殺した。

俺たちは、頼られていなかったのだろうか。拠りどころとするには不充分だったのか。

彼女は…初めから。

今度は、泣いた。泣きじゃくった。

天地を貫くほどの悲しみと、淋しさが、喉の奥から溢れてとめどない。

亡き寺島や石川との、思い出も、交わした言葉も、表情も、温もりも、そこに彼らが存在していたという確信をもって甦り、熱いものとなって。

自分は、今生きているのだ、という喜びと。

自分は、今生きてしまっているのだ、という淋しさが。

吉村と丹羽は修行に励んでいる。

和田は、大学には来れないものの、生きる希望を見出せるまでに回復した。

石田が、最近になって俺に打ち明けた。

実は、二回目の出題をされていたのだ、と。

それは、三日間に及ぶ除霊の儀が終わってすぐの晩だった。

ぞっとした。

二周目は、さすがに呪われない自信はないから。

今でも、ときにおそろしくなるときがある。

あのとき、本当に、誰も声を発さず、動かずに、いることができたのか。

尋常ではない体験を多くしている俺でも、ぎりぎりだった。

もし五蘊に喰われた者がいても、それは俺には判らない。既にその誰かのことは忘れているだろう。

この文章の中で、俺は学科仲間『30人』と書いた。

でも、本当にそうなのだろうか。

もしかしたら、失われた仲間も居るのではないか。

その考えに至る度に、吐き気を催す。

俺たちだけではない。

この世の誰からも忘れ去られた仲間が、

もしかしたら。

あの日から、紫乃さんには会えていない。

怖い話投稿:ホラーテラー 1100さん  

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