中編4
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呻き声の主

高校の頃にバンドやってたんだけど、

今でも忘れられない怖い体験をしました。

バンドではギターを担当、当時はJAMのコピーをやってました。(最近の若者は知らないよね)

家では音がうるさいと怒られるもんで、

町内にある住民センターってとこに夜1人で進入しては大音量で練習してました。

ちなみに俺の住んでる町にはコンビニも信号も未だありません^^;

この住民センターってのは大きな公民館って感じが分かり易いかな、

コンクリートの3階建てでちょっとしたホールとステージもあり、

畳に障子の和室の部屋もある。(これがまたいかにもって感じなんだよね)

まぁ町内用の多目的施設です。

でも実際はほとんど使われる事もなく小さい頃から俺達のいい遊び場でした。

周りに民家は無く、車もほとんど通らないので最高の練習スタジオでした。

今思えばよくそんな不気味な場所に夜1人で忍び込んではギターの練習に明け暮れていたなとおもう。

あの事件が起こるまでは・・・・・。

高3の夏、近所の1つ下の後輩2人がバンドを始めたらしく、

俺に色々教えて欲しいとお願いしてきました。

そこで例の場所で練習する事に。

もともと仲の良い後輩でお調子者のSと喘息持ちで超天然のY

あまり早い時間だと町のおっちゃん達に見付かっても大変だからと夜の0時に集合。

裏に回り、昔からずっと鍵が掛かってない窓からいつもの様に進入。

夏とは言ってもコンクリートの大きな建物、中に入ると流石にヒヤっとした空気が漂っている。

お調子者のSが珍しく、『幽霊とか出ないっすか?大丈夫っすか?』ってしきりにビビって聞いてくる。

俺は安心させる為に『俺は1人で何回も練習しに来てるから大丈夫だよ、でも下手糞な演奏だとでるかもね』

って冗談半分で茶化したのをおぼえてる。

ステージに上がりそれぞれ楽器の準備を始める。ちなみに3人ともギター、

後輩2人はツインギターでデビューするって息巻いてる。

アンプは俺の持ってるやつ1つしか無いので、アンプは使わずエレキの生音のみで練習。

周りが静かだと意外に響くんだよね、金属の弦の音が。

ステージに上がる階段とステージの縁にそれぞれ腰掛け、

静かなちょっと寂しい演奏会がスタートしました。

ちなみに電気は点けずにいつも練習してます。

流石に電気点いてるの見られたらばれちゃうし、

非常口の看板(天井に付いてるマークのやつ)の灯りで十分練習できた。

SもYも日が浅い割には一生懸命練習してきたのか

音は汚いなりに頑張ってたと思う。

そんなこんなでアドバイスしながら1時間程たった頃だと思う・・・・。

『うぅ・ぅ・・・・』

『・・・ぅう・う・・』

ギターの金属音に混じって何か聞こえて来た。

俺はあれ??って思い弾くのを止め耳を澄ます。

すると・・・・

『ううぅ・・・・』

『ぅう・・・ぅ・・』

て確かに聞こえて来る。

その瞬間、背中にゾクゾクっと鳥肌が立つのが分かった。

俺の異変に気付いた2人が不安そうにどうしたのか尋ねてくる。

俺『さっき変な声しなかった?』

Y『えぇ~マジっすか!?』

S『・・・・冗談やめてください』

と他の2人には聞こえていない様子。

鳥肌もんだったけど俺の気のせいって事で練習再開。

すると・・・また

『う・・うぅ・・・』

ってあの声が・・・・。

女性の泣き声?うめきに近い声が微かに聞こえてくる。

俺『ちょ!! 静かにしてくれ』

SとY『・・・・・・・』

俺『やっぱり聞こえる!』

SとY『えぇ、全然分からない』

俺『女の人の泣く声、聞こえなかった??』

2人とも首を横に振るばかりで俺の不安はどんどん大きくなってくる。

1人だけ聞こえるって事がどんだけ恐怖か皆さんわかりますか?

それでも、隙間風かなんかで音がそんな風に聞こえるだけだと自分に言い聞かせ

しばらくみんなで静かにしてみよう

そうすれば2人にも聞こえるはずだと

深夜の暗がりの中、

3人で息を殺して、耳を澄ます事に・・・・。

俺はその事件が起きた時、3人の真ん中に居ました。

右にS、そして左にY

仄暗いステージにキーンと耳に付く静けさ

そして、それは俺の左側から確実に聞こえて来ました。

『ううぅ・・・』

『・・ぅう・・・』

そう・・・Yの直ぐ近くから

右に居るSには聞こえていない様子

でも左に居るYには確実に聞こえているはずなのに

Yはキョトンとした顔で見つめ返してくる。

そして・・・また

『・・・・・うぅ・・』

『ううぅ・・・・』

その時、俺はある事に気付いてしまった。

喘息持ちのY

呼吸の度に・・・・

鼻から音が

『・・・・うぅぅ・・』     って

以上、俺の本当にあった怖い体験でした。

怖い話投稿:ホラーテラー ケロケロパルサーさん  

Concrete
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