中編6
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トンネル 〜前編〜

ありきたりシリ〜ズ〜。

俺と親友の俊と圭祐は

やる事がなく、暇死にしそうだったので、

深夜にドライブしていた。

カーナビをオフにし、

気分で進む危険なドライブ。

隣の県の山道に入り窓を開け涼しい風と、好みの音楽を流しドライブを楽しむ俺達。

山道に入り目の前に、

小さいが先の見えない位長いトンネルが見えた。

運転する俊が悪い顔してニヤついたのを助手席の俺は見逃さなかった。

案の定、アクセルから足を離して低速になり、やがて止まりやがった。

俊「なぁ?

いい雰囲気のトンネルだし、肝試ししね?」

ハンドルに肘を乗せ、満面の笑顔で俺達の顔を見る俊。

この男はいつもこうだ…

俺「めんどくせ〜よ…

何が悲しくて野郎三人だけでやらなきゃいけないんだよ。」

圭祐「んな事より○○に行こうよ。」

圭祐が言ったのは、24時間営業のゲームセンター。

バッティング・ゴーカート・ゲーセン仕様のパチンコやスロット・UFOキャッチャー等、何でもある大型店で若者には大人気な店。

俊「わかったわかった、どうせ○○行っても俺達がやるのはパチンコかスロットしかねぇんだから、行く前に変わった遊びしてこうよ!な?!」

必死に説得する俊。

朝まで遊ぶ予定で、

まだ深夜0時過ぎだったので、

まぁいいや的なノリで了承し、車を降りる俺達。

トンネル入口の上には、

『○○第二トンネル』

いかにも昭和時代に作られたかのような、木の板に筆で書かれた達筆なその文字は、長年の雨等で文字はかすれて、板も腐食してボロボロになっていた。

俊「へ〜…なんか迫力あるなぁ〜」

俺「…で?行くのはいいけど何すんの?」

俊「え?ん〜…」

圭祐「お前今考えてるだろ?」

俊「よし、じゃあ一人ずつと言いたい所だけど、とりあえず皆で反対側まで歩こう!」

軽〜い気持ちで始まった肝試しは、しょ〜うもない肝試しになるだろうと確信する俺と圭祐。

車にいた時は小さいトンネルと思ったが、いざ入口から歩いて入ると、とても大きく感じ、出口も小さく見える。

トンネル内は数mおきにオレンジ色の虫がたかる電灯、壁のタイルは所々剥がれ落ち、隙間がない位スプレーで落書きされた壁。

いかにも何か出そうな雰囲気で、怖いもの好きな俺は内心ワクワクしていたが、口には出さなかった。

歩き始め五分位経ったが、出口はまだ小さいままで、まだまだ時間かかりそうだ…

『ピロリ〜ン』

いきなりトンネル内に響いた音にドキッとした。

俊が携帯でムービーを撮り始め、ナレーターを始めた。

どこまでガキなんだとツッコミ、何だかんだ少しずつ楽しみ始める俺達。

そのまま寒い実況を撮り、一人テンションが上がる俊。

俊「さ〜…一体この後何が起こるんでしょう〜か!」

前を歩く俊は振り返り、俺と圭祐の顔を撮り一旦ムービーを止めた。

圭祐「何が起こるんでしょうかって、何かあったら嫌だろ。」

俺「どうせ、何も起こらず寒い結果で終わるっしょ?」

内心ワクワクしつつ、

歩きながらライターの火が消えないよう、手で覆い、

下を向きながら煙草に火を付ける俺。

『ドン』

俺「痛ッ…」

前を歩く俊に肩がぶつかり、

火を付けた煙草が地面に落ちた。

俺「痛ってぇな!

いきなり止まるなよ」

俊「………」

圭祐「何?小便?」

俊はさっきまでのおちゃらけた顔とは違い、真顔で俺達が入ってきた入口の方を見ていた。

俊「…あれ………誰?」

振り返り入口を確認する俺と圭祐。

誰かいる…

…男…?

全身白い服を着て、下を向いて道のド真ん中に立っている人…

俺「誰あれ?…一人でこんな所いんのおかしくね?」

圭祐「…車…鍵はしめたよな?」

俊「なんだよ…あいつ…気味悪い…」

入口ももう遠くなってたし、下を向き顔も見えない不気味な人間に遭遇し、ヒソヒソと話をする俺達。

圭祐「気味悪いな…

俊…携帯でズームで見て見ろよ?」

俊は携帯のカメラを起動し、男の方へ向けてどんどんズームしていく。

ズームし画像も荒いが、男の頭は何とかぼやけずに写る…

俺「顔…見れるか?

あいつ何してんの?」

俊「…さぁ…全然動かないからわからねぇ……!!」

俊が言い終わった後、

男が急に顔を上げた。

俊の携帯に写るその顔は、まさに鬼の形相という例えが的確で、こちらを睨んでいた。

『カシャ』

俊「う…うわぁー!!!」

驚いた俊は携帯を強く握り締め反射的にその男を撮影。

俺「なになになに?!」

顔を見たのは俊だけだし、肉眼では鮮明に見えないし、突然悲鳴を上げる俊に驚く俺と圭祐。

俊「あい…つ…わからねぇけど何か…やばいかも……」

ひどく怯えはじめる俊。

圭祐がもう一度男を見ると、こちらにゆっくり歩きだしていた。

その男の表情も圭祐はかろうじて確認した…。

圭祐「走れっ!!」

圭祐が俺と俊の肩を強く叩き、出口へ向けて走り出す。

俺だけ訳が分からず、2人を追いかけるように走る。

しばらく走り、

男は見えなくなった。

息を荒げ、ジンワリ気持ちの悪い汗をかく俺達。

俊「ハァ…ハァ…ど…どうする?!」

俺「どうするってか、車はあいつの方だろ?帰れねーじゃん!…てか説明しろよ!」

走った疲れで口調も荒くなってしまう俺。

圭祐「ハァ…とにかく…一旦出口へ出て…車は…後で考えよう…」

息を整えながら歩き、時々男が来てないか振り返りながら出口へ向かう。

説明を求めた俺だが、俺と同じ位混乱してる俊と圭祐は説明してくれない…

だんだん出口が見えてきた。

…何か真ん中に見える…

……嫌な予感がした…

走った汗と冷や汗が一緒に背中を滴る。

入口にいた男と同じ服装の男と、隣に同じ服装で黒い髪で長く、同じ様に下を向く体格からして女が男と並んで、立っていた…。

明らかに正常ではない2人…

俺「おい…あれさっきの奴?…俺達の先にいるのはありえないよな…」

トンネルの上は山だし物理的に同じ男が先にいるのはおかしい…

説明されなくても、異様な光景に鳥肌が立ち始める俺…

俺「ど…どうする…?」

囲まれた…?

普通の人間相手に喧嘩するならまだしも、気味の悪いそいつらには下手に何かしようという気にはなれなかった。

圭祐は辺りを確認する

圭祐「おい!あれ!」

災害時の為に作られた避難路のドアを見つけた。

走り寄りドアを開けようとする俺達。

『ギ…ギギー…』

錆び付き、静かなトンネル内にドアの音が響き渡る。

何か遠くから音が聞こえる。

気になり、

目を向けた俺が見たのは…

出口に立っていた2人が、俺達を殺すつもりなのか、鬼の様に険しい顔してこちらへ走っていた。

俺「きたきたきた!早く!!!早く行け!!!」

初めてその表情を見た俺は恐怖を感じて、前にいる俊と圭祐を急かし、急いでドアに入り音を立てて勢いよく閉める。

『…か…鍵鍵鍵っ!!』

鍵を閉めようとしたが、災害用の通路のドアに鍵なんてついていなかった。

辺りを見渡したがドアを押さえる物も無く、仕方なしにドアをそのままにし逃げる。

ドアの先には人が三人並んで歩けるような広い通路が広がり、異様な湿気で壁の隅はカビていたが、空気は冬のようにヒンヤリしていた。

他の避難通路と合流するように所々道がわかれていたが、どこに向かえばいいかわからない…

標識はあるが、入口の板の様に腐りかけ、ここが第六避難路というのがかろうじてわかるだけだった。

長い道を走り続けてもうクタクタだ…

俊「ちょ…

ちょっと休まして…」

皆息切れがひどく、喉もカラカラだ…

壁に寄りかかり少し休憩する俺達。

圭祐は休みながらも辺りを探索していた。

『ガッ…グッ…グッ…ガキッ…カラン…』

圭祐は通路の天井に繋がる無数の配線やパイプを見て、錆び付いて穴だらけの細いパイプに目をつけ、体重をかけて強引に曲げて人数分へし折った。

錆び付いた細い鉄パイプは、安心できる程の物じゃないが、今の俺達には心強かった。

携帯を見た。

文字通り“山の中”…

圏外…

長いトンネルだし、トンネル内だったら緊急用電話があったかもしれないが、今はもう遅い…

錆びた鉄パイプは瞬時に手を茶色くした。

それでも…

強く握りしめ、

俺達は再び歩き出した…。

後半へ続く…。

怖い話投稿:ホラーテラー Shadyさん  

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