―母ちゃんからの後日談―
俺『なぁ、あん時何が来とったん?』
母『あぁ、ありゃぁその辺にウロウロしおるモノが集まったモンじゃろ。獣の臭いがしとったけ、エエモンじゃないね。』
俺『獣の臭い?』
母『ほうよ。ほれ、動物園のライオンとかの檻の前行ったらする臭いよ。』
俺『ふ〜ん。俺には分からんかった…。んで、何が見えたん?』
母『何って…。何てゆうたらいいんかいね〜…赤黒い霧のようなモザイク。』
俺『モ、モザイク?』
母『母ちゃんは臭いに敏感みたいなんよ。ハッキリした形はよう見えんのんよ。でも☆☆(妹)にはもっと形になって見えたみたいじゃね。』
俺『☆☆は見えるん?』
母『そう思うよ。でも、聞いたらいけんよ。☆☆には忘れるように言ってるけん。あんなモノは心に残しちゃいけん。』
俺『なんで二人は違うように見えるん?』
母『ほうじゃねぇ…(台所から茶筒を持って来る)コレ、上から見たら丸じゃけど横から見たら長方形じゃろ?母ちゃんと☆☆は見える角度みたいなモンが違ごうとるんと思うンよ。ハッキリ見える☆☆の方がシンドイと思うわ。』
俺『ふ〜ん…んで、なんでソレが来たン?』
母『父ちゃんの気持ちが疲れていたから、憑いて来たんじゃないんかねぇ… 。あの時父ちゃん、仕事で難しい時期じゃったけぇ…弱気になっとったと思うんよ。そん時に善うない所を通ったんじゃないかね…』
俺『疲れる=憑かれるってこと?』
母『笑)人によるんじゃろうけど、父ちゃんはそうかもしれんね。なんてゆうたらいいんじゃろう…うまく言えんけど、気持ちの中の何かがアレに合ってしまったんじゃろうね。』
俺『あの時、母ちゃん“あとは明日じゃね”って言ってたけど、あの後、何したん?』
母『玄関周りの掃除をしたんよ。塩を撒いて、掃いて水打ちしたんよ。後、植木鉢の位置を換えたンよ。』
俺『ふ〜ん。掃除は分かるような気もするけど、なんで鉢の位置を換えるん?』
母『あがいなモノが通った後、ほっといたら草花が枯れるけぇ、日の当たる場所に置いて休めるンよ。』
俺『なんで母ちゃんと☆☆には見えるん?』
母『ようわからん。婆ちゃん(母の母)も叔母ちゃん(母の妹)もわかるけぇねぇ…、なんじゃろ?体質の伴性遺伝……かいねぇ??』
母『ほいじゃが“なんでそうなんか”より“じゃけ、どうするんか”ゆうんが大事じゃ思うけん。これからも母ちゃんができる事をするだけじゃね。』
――この一件についての母ちゃんの話はここで終わりです。俺にはまだ疑問もありましたが、母ちゃんの気持ちはなんとなく分かったような気もしました。
そして、何も見えない自分にホッとしました。たぶん、耐えられないと思うから…。
―後日談は怖い話ではありませんでしたが、最後まで読んでいただいてありがとうございましたm(__)m
怖い話投稿:ホラーテラー B級グルメさん
作者怖話
「俺ンちの母ちゃん」http://kowabana.jp/stories/12761