中編3
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伊豆の旅館

小さい頃(確か8歳か9歳頃)に

親・兄・私の4人家族で伊豆の旅館に泊まりに行った時の事です。

知らない人達大勢と一緒に入浴するのが嫌で、

家族が勧めるのを断固として拒み、自分だけ部屋にあった風呂に入っていました。

両親と兄は部屋を出て大浴場まで行き、しばらく帰ってきそうもありません。

入浴して20分くらい、だんだん眠くなってきてウトウト。

すると突然、照明が消えて真っ暗になりました。

密室なので、完全に漆黒の闇になり、何も見えません。

子供だったので、恐怖感が襲ってきて、湯船に浸かってじっとしていました。

すると…

湯船の外に何かがいる気配が…

湯船の周りを歩いて、なんだかこっちを見ているような気配がします。

当然、何も見えないので、そう考えるとすぐそばで覗き込まれているような気分に襲われ、

私はどうすることもできず、湯に浸かりながら、うつむき加減で体を抱えるばかり。

その内、耐えきれずに、両親の名前を叫ぶようになりました。

「おとうさーん」

「おかあさーん」

希望も虚しく、何の反応もありません。

相変わらず、何も見えない暗闇を何かが動いている気配がするばかり。

次第に涙が出てきて、もう両親の名前をひたすら叫び続ける私。

ここから早く出たい、一刻も早く逃げたい。

そんな思いばかり頭の中をぐるぐると駆け巡っていました。

10分くらいした頃、突然、照明がパッと付きました。

焦って浴場を見渡すと、照明が消えた時と何も変化がありません。

当然、私以外は誰も居ませんでした。

凄い勢いで浴場から飛び出して、ずぶ濡れになったままで部屋の座敷

つまり、照明が明るくてTVの付いている安心できる部屋まで逃げ、そこで着替えました。

数分後、両親が戻ってきて、まだあちこち濡れたままの畳を見て驚き、

私に何があったのか聞いてきました。

明らかに怒っているようでした。

先ほどの体験を説明していると、だんだん恐怖が甦ってきて、

また涙が出てきました。

もう最後は鼻をすすったり、涙をふいたりして、何喋っているか良く判らない状態に。

両親も、怒りは収まりながらも、困った顔をしていました。

とりあえず旅館の人を呼んで、照明を調べさせていましたが、

両親と旅館の人がどういう会話をしたか、子供だったので良く判りませんでした。

ただ、後で聞いた感じだと、別に異変もなかったという話です。

その夜は、両親の間に割って寝ました。

寝る前はこんな年齢にもなって…という調子で散々冷やかされましたが、

私のただ事ではない怯え方に両親も根負け。

兄は、本当にうんざりしていたようで、バカじゃないのみたいな表情で先に寝てました。

しかも、トイレに行くたびに母親を起こして付いて行って貰い、

後で考えると、年齢的に非常に恥ずかしい事ばかりしてました。

翌朝、荷物をまとめて旅館を出る時間に。

最後に浴室を覗いたのですが、当然何も異変はありません。

(やっぱり気のせいだったのかなあ)

と思って閉めようとしたら、吸盤で壁に張り付いていた小さい棚がいきなり落下。

「うわ!!!」

音に気付いて両親が見に来たのですが、吸盤が弱くなっていたのだろうと

簡単に片付けられました。

旅館を出て、タクシー乗り場まで行く途中、

自分たちが宿泊した部屋を見上げると

窓から誰かがこっちを見ている気がしました。

改めて当時の事を思うと、やっぱり何か居たんだろうなと思います。

考えすぎですかね?

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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