短編2
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大切な家族

僕の住んでいるマンションの近所に「空」という犬がいます。

飼っているのは、一人暮らしの「高橋さん」と言うおじいさん。

僕の家にも犬がいるので、よく散歩中にお会いします。

そんな、おじいさんに一度

「空くんの名前の由来は、何ですか?」

と聞いた事があります。

すると、おじいさんは、「このこは、生まれた時から虐待されて、空を見た事が無かったんだよ。」

と答えてくれました。

その時は「そうですか」というばかりでした。

それから数ヶ月経って、空くんが亡くなったと母から聞きました。

一人暮らしの、おじいさんだから寂しいだろうな・・・なんて思っていました。

そんな時、犬の散歩中におじいさんを見かけました。

公園のベンチに座って、ずっと空を見つめていました。

「お久しぶりです」

「あぁ・・久しぶり・・・」

やはりおじいさんは、寂しそうでした。

「空くん、亡くなったんですね・・・」

「あ・・ああぁ・・・。

 でも、寂しくなんかないさ・・・。私は、もうすぐ、大切な家族のところへ行く。空のところへね・・・。」

「おじいさん、何言ってるんですか」

そう言いたかった。でも言う勇気が出なかった。

それから、おじいさんを見なくなった。

気にはしていないつもりだったが、心の奥に引っ掛かるものがあった。

ふと、おじいさんの家の前を通ったとき僕は息を呑んだ。

ドアの上に掛ける、「高橋」の名札が無かった。

   

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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