短編2
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死にたがり 完結

 

結子さんの狂った笑い声を聴きながら俺は自分と家族を助ける方法を考えていた。

 

今すぐ携帯から警察に連絡をしたかった。だが受話器を持ちながら警察に通報している事が結子さんに聞こえたら凶器を持ち家に侵入されるかもしれない。

家族はどうなる…

妻と5歳になる娘。

俺は医師だが患者との死に向き合ったことがない駄目な医師だ。

 

だから結子さんみたいな患者に同情すらできない。

 

自分と家族が助かることしか頭にない。

 

いや人なんてそんなものだろう。

 

生きてる意味や考え方すらみんな違う。幸せになる為に生きてる人や結子さんのように死ぬことばかり考える人だっている。

だからって俺を巻き込むなよ! 患者と医師だろ。

俺の頭には自分を弁護することしか頭になかった。

結子さんと向き合えなかった結果が今この事態を招いているのに。

10年近く前にも一度死にかけたことがある俺だ。つくづく俺は女に恨みを買うタチのようだ。

 

『結子さん、わかった。わかったよ 死にたい気持ちはわかったけど俺は結子さんと一緒には死ねない…』

 

これまでにない大きな声で受話器越しの狂った女に自分の気持ちをぶつける。

『勿論家族もだ!結子さんと僕の家族は関係ないし僕はまだ生きていたい。』

 

『ウワァアアアアああああ』

受話器越しからの奇声が俺の耳を切り裂く。

そのとき(ウ゛ーーというパトカーの男が聞こえ警官が結子さんを抑えていた。

後ろに視線を感じ振り向くと妻が携帯を持って立っていた。  

どうやら話声に目を覚ました妻が携帯で携帯に通報していたようだ。

 

『貴方のことは私が守るわ…女っていうのはね 好きで愛しい人と一緒に死にたいものなのよ。』

 

『もしあの女が侵入してきたら私が絶対あなたを死なせなかった。』

 

妻はまるで精神病患者の結子さんが俺を愛してたんだ。と言わんばかりの言葉を放ち抱きついてきた。

 

 

『ありがとう。』

一言だけ妻に呟いた。

その後、結子さんは精神病患者の隔離施設に入れられたらしい。

 

人の生き方には様々な道がある。

死にたい人に生きてとは言わない。

ただ死ぬ時は1人、自分の生きてきた人生を最後に振り返りそれでも死にたければ誰にも迷惑をかけずただひっそり息を殺して孤独の中で死ねばいいとそう思う。

怖い話投稿:ホラーテラー 早瀬裕也さん  

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