中編3
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心霊でもない

田舎に住む主婦です。

心霊モノでは ありません。 お暇でしたら ご覧ください。

私の住んでるところは、家のすぐ後ろが 山なので、

二階の窓を開けると、目の前に 山の斜面が、上へ上へと広がっています。

その斜面を利用して、少しばかりの作物を育てる お宅もありました。

自然の中なので、サルやシカなどの 野生動物がウロウロしています。

人間に 直接悪さはしないのですが、その辺の 作物を取っていくのが 困りものでした。

ある日、隣のおばちゃんが、山の斜面にある小さい畑から、サルが 作物を取っていくのを見て

「コラッ!」と怒っていていました。

私もそこへ出ていき、そのおばあちゃんの孫のNちゃんも 出てきて、Nちゃんが

「おばあちゃんの畑、荒らされっぱなしだね」と言いました。

おばあちゃんは

「そうなんだよ。サルは 図太いから、どんな 脅しも効かないのさ。

あ、でも、この辺のサルは、人の姿を見たら、とりあえず 逃げてくねぇ。

誰か、一日中 畑に立っててくれたらねぇ。ははは。

Nちゃん、これから専門学校かい?いってらっしゃい」

Nちゃんは、おばあちゃんの

「いってらっしゃい」が耳に入ってないのか、何かを考え込んでいました。

「…人が並んでいれば…」

こう ぽそっと呟くと 専門学校に 行ってしまいました。

その晩の事です。

学校から帰って来たNちゃんは、黒いゴミ袋のようなものに、何かをいっぱい詰めて 帰ってきました。

ボールのような、丸いものが、ゴロゴロ入っているような感じでした。

そして、そんなゴミ袋を いくつも、裏山に運んでいきました。

それを見かけた私は、なんとなく声も掛けずに 自分の家に入りました。

夜中になって、うちの子が、トイレに行きました。

子供は、トイレに入ると、匂いを外へ逃がそうと、窓を開ける癖がありました。

「ぎゃああああああああっ!」

とんでもない 大きな悲鳴を聞いて、飛び起きて トイレに向かうと、子供が 腰を抜かして 窓を指さしていました。

何を見たのか、私も 窓の外を見てみると…

あり得ない モノが そこに ありました。

いいえ、並んでいました。

首です。

人の首、生首が 裏山の斜面に並んでいるのです。

15個くらいはあったでしょうか…。

「ああああああ…」

心霊ではありません。実体でした。

私と子供は 震えが 止まりませんでとた。

しかし、その生首たちに 目が離せなくなっていて、じーっと見ていると…

 

暗くて はっきりしませんが、どれも、死んだような顔をしていませんでした。

むしろニッコリしているようで、血色もよく、髪型も…おしゃれな…

…まさか!

私は、家を出て、隣のおばあちゃん家に行きました。

すると すでに 2~3人の人が来ていて 話をしていました。

玄関で、あのおばあちゃんと 孫のNちゃんが

「すみません すみません」と頭を下げていました。

「いえ、いいんですよ。でも、裏山側の窓を開けるたび、どうしても 見えてしまいますからね。とりあえず 夜が明けたら、あの首、取ってくれますかね」

みんなも私も 怒ったりせず、そう言って帰りました。

家に帰ると、子供が待っていました。

「な、何だったの…アレ…?」

「アレはね、マネキンっていうのよ」

美容師の専門学校では、カットやセットの練習用に、頭だけのマネキンを使うそうです。

おばあちゃんが言った

「畑を荒らすサルを、人が並んで見ててくれたら…」

この言葉を聞いて、美容師の専門学校に通う Nちゃんは、首だけのマネキンを 裏山の斜面の畑に 並べようと思ったんだと 言ってました。

それにしても 心霊ではなく実体の、あんなに ハッキリと怖いものを見たのは、最初で最後かもしれません。

その後、生首たちは 回収されましたが、

今度は、おばあちゃんの家の二階の、窓に干してある干し柿を、カラスが 突つきに来るそうで、

おばあちゃんの部屋の窓に 逆さに 仲良くぶら下がっているそうです。

怖い話投稿:ホラーテラー ろくさん  

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