中編3
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すきま

あまり付き合いのない親戚というのは、限りなく他人と同じでありながら、慶事や不幸の際には一緒に飲んだり一つ屋根の下に宿泊になったりと、少々面倒な関係である、と思います。

人見知りをする私にとっては、何を話せばいいかもよく解らないけれど、無視するわけにもいかないのでどうしたものか……という感じです。

でも、それは向こうも同じだったようで、年代も親子ほど離れていては話題に事欠いたのでしょう。「そうそう!」とようやく思いついた話として、自分の体験した怖い話をしてくれました。

その人の家は共働きで、子どもは小学生の時から鍵っ子だったそうです。

でも、そこそこ田舎なので近所付き合いも多く、留守番とはいえ一人ぼっちで寂しく…という感じでもなく、子どもも気にした風もなく過ごしていたようです。

そんなある日のこと、仕事から帰って来て夕飯の支度をしていたら、子どもが妙な事を言ったのだそうです。

「今日、お婆ちゃんきてたよ」

……と。

来るという話は聞いていなかったし、さほど近くに住んでいるわけでもないのに、お婆ちゃんが来ていたというのです。

急な話ではあるけれど、それならば客間を整え、夕飯もお婆ちゃんの喜びそうなものに…と思ったところで、子どもが「でもすぐに帰っちゃった」と言うのです。

「なんか近くに用事でもあったの?」

「しらなーい」

「えー?だってうちに来たんでしょ?」

「だって話してないもん」

「まさかあんた、お婆ちゃんせっかく来たのに、ほったらかしたの?」

我が子とはいえ、それはあまりに気の利かない…飲み物とお菓子くらいは出してよ、と思った時です。

「だって、トイレ行こうと思ったら洗濯機の横に座ってたんだもん、お婆ちゃん。で、お婆ちゃん来てたのー?ってトイレ行って、出てきたらいなくて、茶の間に行ったのかなって思ったらいなかった」

「洗濯機の横?」

「うん、こんな風に」

子どもが少し俯き加減に体育座りをして、その姿を再現します。

子どもが帰宅するまで留守だった家に、いつの間にかやってきて、洗濯機の横に座っていた……どう考えても不自然です。

それは本当にお婆ちゃんだったのかと尋ねると、たしかにお婆ちゃんだったと言うので、じゃあ何かあったんじゃ…!と電話をすると、本人が出て、元気だったのでひどく安心したそうです。

「なんでもなかったみたいだから、その時はなーんだって思ったんだけど、考えてみればすっごい気持ち悪いわよね」

オバチャン独特の笑い飛ばし方で、その親戚は話してくれたのですが、聞いていた私は単純で短いけど怖い話だ、と思いました。

だって、たまたま知っているお婆ちゃんで、しかも生きていたそうなので錯覚や笑い話で済んだかもしれませんが……留守番中、自分しかいないはずの家なのに、洗濯機の横に体育座りをして俯いている人なんかいたら……。

それから暫くは、なんとなく、留守番中には人一人分くらいのスペースを見られませんでした。

短い話で申し訳ありませんが、お付き合いありがとうございました。

怖い話投稿:ホラーテラー 黒猫改め匿名さん  

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