中編4
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サリョじゃ

4年ほど前のことです。いつものようにデートのあと、付き合っているM君に下宿まで送ってもらっていました。M君は自称霊が見える人で、当時私はあまり信じていなかったと言いますか、そのことについて深く考えたこともありませんでした。しかしいつもそ

のことを思い出してしまうのが、この帰り道です。実は帰り道の途中には彼がどうして

も通るのを嫌がる道があり、そのためいつもその道を迂回して送ってもらっていました。

彼いわく、その道には何かありえないようなものが憑いているので近づきたくもないそ

うです。

でもその日のデートはかなり遠出したこともあり、私はものすごく疲れていて少しでも

早く家に帰りたいと思っていました。この道を迂回すると、ものすごい遠回りをしなけ

れば私の家には帰れません。だからこの道を通って帰ろうとM君に提案したんですが、

彼は頑なに反対。結果ほとんど言い争いのようになってしまいました。(というか、私が

一方的に怒っていて彼が必死に止めようとしていただけかも。ごめんM!)最終的に

は私がひとりでもこの道を通って帰ると主張すると、M君もひとりで行かせるくらいな

らと、ついてきてくれることになりました。

その道に入ると、M君は目に見えて怯えていて、顔は真っ青でした。時間は23時くら

いでしたが、街灯もあって真っ暗というわけでもなく、私からすると普通の道。私もや

はり気になって訊いてみても、「今はまだ大丈夫」ということでした。少し進むとY字路

になっていて、私の家に帰るには左の方の道です。このあたりになるとM君も少し落

ち着いてきていて、私も安心して何の躊躇いもなくY字路の左側の道に入りました。

左側の道に足を踏み入れた瞬間、何か急にあたりの雰囲気が変わりました。物音が

一切しなくなって、心もち明かりが暗くなりました。(M君がいうには、本能的に目の前

のものに集中したため視界が狭まっただけということです)足が寒いところにずっと立

っていたあとのように痺れて引きつり、上手く歩けません。力も入らないのでその場に

座り込んでいてもおかしくなかったのですが、なぜかその引きつった足が体を支えて

いて、私はその場に立ち尽くしました。

いきなり前方からゴッと突風のようなものがきました。感覚としては、すぐ横を電車や

大型車が通過したときのあの感じです。そしてその瞬間

「サリョ(鎖虜?左路?)じゃ!サリョじゃ!」

という大小の声があたりに鳴り響きました。近いものは私のすぐ耳元で聞こえました。

突風のようなものが過ぎ去ったあと、私は呆然と立ったままでした。M君は先ほどま

でとは比べ物にならないくらい血の気のない顔をしていましたが、急に私のほうにや

ってきたかと思うと、ものすごく必死に私の足を何度も何度も平手で叩きました。あと

で赤く腫れ上がるくらい力を入れて叩かれたのですが、このときは足の感覚がなく、

全く痛みを感じませんでした。でもすぐにやっぱり痛くなってきて、同時に足に感覚が

戻って私は地面に崩れ落ちました。横を見るとM君も地面に座り込んで、相変わらず

顔色は悪いのですが「もう大丈夫だから」と息を切らせていました。M君によると、左

の道に入った瞬間前の方から黒いモヤモヤしたものが雪崩のように流れてきて、私

たちの体を包み込むように吹き抜けて行ったそうです。私の足にはその黒いモヤモ

ヤから出てきた無数の手が絡みついていたそうで、それを払い落としていたのだとか。

そのあとM君は泣いている私を背負って下宿まで送ってくれて、朝まで一緒にいてく

れました。愛だね。その後私は怖くてその道に近寄ることはなかったのですが、半年

ほどたって恐怖が薄れてきたころ、昼間だったら大丈夫だと思って見に行ってみまし

た。以前に何度か通ったことのある道だったのですが、注意して見てみると愕然とし

ました。

まず、なんとそのたかだか50メートルほどの道(Yの字になっていますが)に、小さな

祠やお地蔵さまが計7つも密集しているんです。そしてその道に面した家の玄関のほ

ぼ全てに盛り塩がしてありました。中にはお酒が置いてあったり、何枚ものお札がベ

タベタ貼ってある家も。そしてこの周辺ではありえないくらい、廃屋と化した空き家が

目立ちました。そういえば最初のほうで書いた「この道を迂回すると、ものすごい遠回

りをしなければならない」というのもおかしな話です。区画整備された町並みで、この

一画だけ、周囲の車道は大きく迂回するかそこで行き止まりになるかしているんです。

唯一このY字路と、そこから分かれた毛細血管のような複雑な小道だけが、そこの交

通手段となっています。

気味が悪いので地元の人間である学校の先輩に訊いたところ、この一画には昔、い

わゆる部落があったそうです。それだけではなく戦時中に何か忌まわしい事件があっ

たらしく、部落自体は終戦前になくなったのだとか(その事件の内容はタブーとされて

いるらしく、先輩も知りませんでした)。しかし地元の人間も忌諱して、その後もずっと

その土地には手をつけず、20年になってようやく外から来た人間が住み始めたのだ

とか。

いったい部落で何があったのか。「サリョ」というのは何なのか。気になりますが、先輩

やM君の忠告もあり私はそれ以上調べることを止めました。みなさんも、もし兵庫県

の某有名暴力団本部のある都市に行かれることがあれば、気をつけてください。何故

か主な車道が途切れたり迂回しているからと言って、むやみに近道しないように。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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