長編9
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失ったもの…

不景気な世の中…

どうせ仕事を探しても無いだろうと思い、就活もせず毎日家でゴロゴロしてる生活を送っていた

そんな俺も今年で30歳

父も母も働いている

母は週に4日のパート勤務だ

そんな ある日…

親から「ちゃんと仕事は探してるの?」と聞かれ、いつもなら「探してるけど見つからない」と適当に返事するが、今日は「明後日、面接決まったんだ」と嘘をついた

親は とても喜び、「いろいろ準備も必要だろうから、これ使いなさい」と5千円くれた

そして面接と嘘をついた当日

母は仕事が休みで家に居る

嘘がバレないように俺はスーツを着て家を出た

向かった先はパチンコ屋

親から貰った5千円で勝負するも、あっさり無くなりパチ屋を後にした…

家に帰るには まだ時間も早く、コンビニで立ち読みし時間を潰して家へと帰った

家に帰ると、母が「面接どうだった?」との問いかけに、俺は「やれるだけの事はやったよ」と適当に返した

夕方、父も仕事から帰り、お寿司を買ってきた

俺が面接を受けに行った事が嬉しかったのだろう

パチ屋で5千円失って悔しかったけど、お寿司は美味しかったです

結局、面接と嘘をついてパチ屋に行った事が親にバレた…

スーツ姿は目立つらしく、母の知り合いが俺をパチ屋で見たと言う情報が入ってきたのだ

親には、こっぴどく怒られて、「あんたは真面目に働く気はないの!?」と怒鳴られた事に対し、俺は「今、働こうと思ってたのに、もう働く気なくした! オメェのせいだ!」と捨て台詞を吐き部屋へと駆け込んだ

俺をパチ屋で見かけたとチクった母の知り合いを恨みながら、その日は夕飯も食べずに寝た

次の日、腹が減ったせいか早く目が覚めた

親もまだ寝ている

台所に行くと、俺の分の食事がラップに包まれ用意されていた

それを電子レンジで温めて全部食べて、腹が満たされた俺はまた部屋に戻り眠りについた

ほとぼりが覚めるまで、しばらく引き籠ろうと決意した

飯は、どうせ親が準備してるだろうし、家族が居ない時間帯に台所で食べれば問題ないし

こうして、俺と家族との戦いは始まった

―引きこもって5日目―

今だに親から謝罪の言葉がない…

それどころが、俺の様子を伺う事すらせず、ほっとかれている

俺が働く気を無くして、こうして引きこもってるのも親が俺の事を怒ったのが原因だと理解しているのだろうか…

親の無責任さには、ほとほと呆れていた

しかし、その日の夜…ついに父が動き出した

仕事を終えた父が俺の部屋を訪ねて来たのだ

父「父さんだけど部屋に入れてくれないか?」

俺「何を今さら!もう話すことは無い!出ていってくれ!」

父は俺の部屋の扉越しに話しかけてきた

父「お前も、もう子供じゃないんだから、少し考えたらどうだ?これから頑張って働く気があるなら、この前の事は忘れてあげるから」

俺「俺は何も悪くない!謝るのは そっちだ!そっちが謝れば、俺もこの前の事は忘れてあげてもいいよ!」

父「……とにかく部屋から出てきなさい」

俺「俺にもプライドがある! そう簡単に出ていけるか!」

父「…じゃあ、もういい。いつまでも そうしてなさい。もう父さんは知らないから」

そう言うと父は戻って行った

どうせ、また来るだろうと思っていたが、それから1週間が過ぎても誰も様子を見に来なかった…

引きこもり生活も精神的や体力的に限界にきている

こんな事なら、あの時ちゃんと父と話してれば良かったと少し後悔した

しかし、ここで出ていくわけには行かない!

それは俺のプライドが許さない!

俺はプライドにかけて、引きこもりを続行する覚悟を決めた

―引き籠り生活13日目―

俺の闘いは、まだ続く…

―引き籠り生活20日目―

相変わらず親には ほっとかれている

食事は、家族が寝静まった夜や仕事に行ってる間に食べている為、不規則な生活を送っている

親は何を考えているのだろうか…

こんな生活を送っている俺の事が心配じゃないのだろうか…

正直、俺も もう引きこもり生活はヤメたいと思っていた

毎日、電子レンジで温めた食事を食べるのも辛かったからだ

揚げ物や天ぷらはシメッぽいし、肉は固くなる

魚類も、焼きたてを食べたい…

この状況を打破する方法を俺は考える

しかし俺から妥協するのは嫌だ

どうしたらイイのだろうか

その時、俺は閃いた

大袈裟に咳をして、風邪を引いたフリをしよう

そうすれば、さすがに親も心配して俺の様子を見に来るだろう

そこから、引きこもり生活から抜け出すキッカケを作るんだ

我ながら素晴らしいアイディアだと感心した

そして、風邪引いた作戦を決行する

―引きこもり生活21日目―

この日、ついに俺は風邪引いた作戦を決行する

夕方、母が帰ってきたのを見計らって、大袈裟に咳をした

「ゲホッ ゴホッ ゲホッ ゴホッ オェェ… ハックション! ゴホッ ゴホッ」

しかし母は心配して俺の様子を見にくる気配は無い…

俺の咳は、ちゃんと母の耳に届いているのだろうか…

その後も、ほどほどに休みながら咳を続けていた

そして父も仕事から帰ってきた

気合いを入れて咳をするが、父も様子を見に来る気配が無い…

俺は、本当に見捨てられたのか…

涙が出てきた…

それでも諦めず咳を続けた…

その日の夜、家族が寝静まった後、飯を食べに台所に行くと、風邪薬と置き手紙が置いてあった

手紙(鍋にお粥があります。少しでも食べて風邪薬を飲みなさい。冷凍庫にアイスノンも冷えてるので、それで頭を冷やしなさい)

と母の字で書いてあった

俺の咳は確かに親に届いていた

とりあえず お粥を食べ、アイスノンを部屋に持ち込み風邪引いてる事を演出した

あぁ… 腹減った…

しかし、他の物を食べる訳にはいかない…

風邪を演出しなくては…

お粥も茶碗一杯だけ食べて部屋に戻った

そして、空腹と闘いながらも長い夜を過ごした

引きこもり生活も、もう少しで終わる

なぜなら、俺の咳は確実に親の耳に届いてるのだから

もう少しの辛抱だ

今は辛いけど、微かに希望の光が見えてきた

引きこもり生活22日目の朝を迎えた

空腹のせいで、あまり眠れずにいた…

親が起きて来る時間を見計らい、俺も咳を始める

「ゴホッ ゴホッ」

さすがに親も心配になったのか、母が俺の部屋の前に来た

扉越しに話しかけてくる

母「大丈夫? 今日、母さん仕事休むから病院に連れていってあげようか?」

病院に行ったら仮病がバレてしまう…

俺は扉を開けずに母に話しかける

俺「ゴホッ…俺の事はいいから仕事に行けよ… ゴホッ…病院くらい自分で行けるし… でも金ないから病院には行かない…ゲホッ…ゴホッ…」

無理に咳をしていたせいか、声が枯れて本当に風邪引いてるみたいな声になっていた

元気のない声と少し素直に母に話す俺の演技により、母は余程 具合が悪いと思ったようだ

母「じゃあ、お金は置いとくから病院に行ってきな。母さんは仕事に行くから何かあったら携帯に連絡するんだよ」

俺「ゲホッ… あぁ… 分かったよ… ゴホッ…」

その後も父と母が仕事に行くまで咳を続けた

そして… 父も母も仕事に行った事を確認すると、部屋から出て行き、リビングへ行くとテーブルに1万円置いてあった

さて…

これから、どうしよう…

テーブルの1万円を目の前に俺は考える

引きこもり生活から抜け出すために、風邪引いた作戦を決行したはいいが、俺の迫真の演技により、事は重大になっていた

もう、後には引けない

かといって仮病だし病院に行くわけにもいかない

とりあえず、昨日からお粥しか食べてないから腹が減っている

家の物を食べる訳にもいかない

なぜなら、食欲のある病人も おかしいし仮病だと疑われてしまう

とりあえず、この1万円で何か食べに行こう

とりあえず牛丼屋に行き、牛丼特盛と豚汁を注文して腹いっぱい食べた

1万円で会計を済まし、9千円ちょいお釣りが来た

これから、どうしようか考える…

手元には9千円

俺は、ある事を考える

無職の俺には金が無い

この9千円を増やせば、俺の小遣いも稼げる

例えば、パチンコで2万に増えれば、1万円は病院に行かなかった事にして親に戻し、残りの1万円は俺の小遣いになる

もしかしたら、それ以上の金額を勝てるかもしれない

俺の夢は膨らむ

病院に行かなかったのも、無駄なお金を使い迷惑をかけたくなかったからと話せば親も感心するだろう

そして、風邪は自力で直した事を装い、少しずつ直っていく演技をして、家族に溶け込み引きこもり生活を終わらせよう

そんな事を考えると、希望の光が見えてきて、足取り軽くパチ屋へと向かった

9千円を握りしめパチ屋に到着

父と母が帰ってくるまでに家に帰らないと俺の作戦は無駄になる

9千円の軍資金だと甘デジが妥当だが、ちまちま時間かけて打ってる余裕は無い

だとするとジャグラーで賭けに出るしかない

波に乗った時のジャグラーは5号機最速の出玉を誇る

うまくジャグ連を掴めば、短時間でそれなりの収支も期待できる

久しぶりに外に出た解放感からか、なぜか負ける気がしなかった

とりあえず空いてる席に座り打つことに

しかしペカる様子なし…

1台目に4千円投資して台移動

2台目、3千円投資するがペカる気配なし…

残り2千円

さすがに焦ってきた

台移動するべきか、この台で続行か考える

ふと1台目に打った台を見るとオバチャンに出されていた

台移動しなければ良かったと後悔するが、時すでに遅し

もう同じ失敗はするもんかと、今打ってる台にすべてを賭け2千円投資するもペカらず、全財産使い果たした

終わった……

顔面蒼白で家に帰ると、なんと母が家に居た!

母「心配になって仕事早退してきたのよ。病院には行ってきた?」

俺「う…うん… 行ってきたよ…」

母「どうだった?」

俺「風邪だって… 調子悪いから部屋で寝てるわ…ゴホッ ゴホッ…」

あまり長く話して病院代のお釣りの事や処方された薬の事を聞かれるとヤバイと思う、すぐに部屋に戻った

どうしよう…

お金も使い果たしたし、病院にも行ったことになってる

これじゃあ、余計に部屋から出られなくなった

なんとか誤魔化す方法は無いのだろうか…

布団に入ると、ドッと疲れが出て眠りについた

トン トン…

母が俺の部屋の扉をノックする音とともに目が覚めた

部屋は暗くなっている

俺「なに?…」

母「調子はどう? 今から夕飯作るんだけど何か食べたい物ある?」

俺「食欲ないからいらない」

母「薬もらったんでしょ?何か食べないと」

俺「わかったよ… 適当に作って部屋の前に置いといて…」

母「じゃあ、雑炊作って持ってくるね」

そう言うと母は台所に戻って行った

心配される度に心が痛む

台所では料理を作ってる音が聞こえる

俺の為に雑炊を作ってる母の姿が思い浮かぶ

自然に涙が出てくる…

今までの自分の行動を後悔する

仕事の面接の時、母から5千円や今日の病院代1万円をパチンコに使った俺…

すべては俺の為にしてくれた行為を俺は裏切った

涙が止まらない…

そして、しばらく泣きじゃくった後、何かが吹っ切れて母に正直に話そうと決めた

仮病を使ってた事…

1万円をパチンコに使ったこと…

怒られてもいい

すべては自分が悪いのだから

俺は部屋を出て母のいる台所に向かった

俺は今までの事を正直に話そうと母の所へ行った

父は、まだ仕事から帰ってきてない

そして俺は、仮病の事、1万円をパチンコで使った事を正直に話した

当然、母は激怒した

それでも俺は反抗せず、静かに母の話を聞いていた

そんな俺の態度に母も少しずつ冷静になり、「父さんには うまく誤魔化してあげるから」と言い、俺は母に感謝した

父も仕事から帰ってきて、俺が部屋から出てきてる事に驚いていたが、すぐに「体は大丈夫か?」と普段通りに話してきた

それが俺には有り難かった

俺も「大分良くなったよ」と答えた

父も それ以上は何も言わず、久しぶりに家族皆で食事をした

やっぱり家族は良いなと実感した夜でした

  ━━━━ 完 ━━━━

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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