もうかれこれ6年程前のことです。
私はOhioに住んでいましたから、日本からアメリカに入るときは必ず2回か3回の乗り継ぎがありました。
日本を発つ前夜に徹夜したにもかかわらず、極度の高所恐怖症と飛行機嫌いであるため、日本からアメリカに入る便で12時間ほとんど眠る事が出来ませんでした。
挙句の果てに天候は最悪で飛行機はものすごく揺れた上、予定時間を大幅に遅れていました。
睡眠不足と飛行機酔いのフラフラな状態で何とか入国審査をすまし、乗り継ぎの便へと急ぎました。
出発予定時間はかなり送れていましたが、飛行機はまだ出発していませんでした。
ほっとして乗り込んだのも束の間、機内アナウンスで出発が更に遅れるとのお知らせがありました。
おいおい次の乗り継ぎはどーなるんだよ!と思いスチュワーデスさんに尋ねたところ、
心配要りません、遅れている分は低空飛行をして取り戻します、多少揺れますが乗り継ぎ時間には間に合いますよ。との事でした。
もう既に飛行機酔いでフラフラであった僕は多少揺れるってどれくらい?とかなり不安になりながらも、疲れのあまり眠りについてしまいました。
運良く席はすきすきで、真中の席を4席陣取って横になって眠る事が出来ました。
しばらくすると、いったいいつ飛行機が離陸したのか分からないほど深い眠りの中にいました。
しかし、突然飛行機がガクンと言う大きな音を立てたと思うと前の方からものすごい悲鳴が聞こえてきました。
え~~!!!
と思い周りを見渡そうとすると体にものすごいGを感じ、自分の体が席についていないような状態でした。
身動きを取ろうとしてもほとんど動けません。
何が起こったのか分かりませんでしたが、周りからは女の人の悲鳴が聞こえてくるし、後ろの方では赤ちゃんが大泣きしている。
座席の上の非常用ランプは点滅しつづけていて機内アナウンスは何を言っているんだか分からない。
ただ確認できたのはものすごい勢いで飛行機が下降しているという事でした。
気が付くとシートベルトをせずに横になっているのは自分ひとり、周りは叫びながらも前のシートに頭をつけています。
必死にシートベルトの右と左をつかみ装着しようとしますが、なかなかうまくいきません。
どれぐらいたったんでしょうか、恐らく数分の出来事であったと思うんですけど、感覚的には30分にも1時間にも感じました。
周りの声は悲鳴がもうカスレカスレになり声が声ではないような状態でした。
そんな状態の中で、やっと席にまっすぐ座りシートベルトを装着したと思うと左にはもう山肌が目の前に見えていました。
ガクン、ガクンと大きな音の方を見ると主翼が大きな枝をなぎ倒しています。
主翼の細かい破片が飛び散り、ガソリンを撒き散らしています。
もうだめだ!
そう思った瞬間機体がわずかながらに浮き上がり目の前に飛行場が見えてきました。
それでも機体は左に大きく傾いたまま、もし羽が地面にかすれば、いくら減速していても数百キロで地面に激突と言う事になる。
何とか着陸態勢に入り着陸を試みたものの、案の定、左の車輪のみが地に付き、今にも左翼が地面にすりそうな状態。
必死に立て直すと今度は逆に右翼が地面にすりそうになり、左右不安定な状態で両車輪が地に付いた週間に急ブレーキ!
前に体が放り出されそうになるのを必死に絶えたその瞬間、後ろのトイレからものすごい量の水が溢れ出してきました。
通路の横は水浸し、それでも何とか無事に着陸したとほっとしてうつむいていると、スチュワーデスさんが肩をたたいて、大丈夫ですか?大丈夫ですか?と何度も聞いてくる。
確か、最初に揺れますよと言ったスチュワーデスさんだ。
良く平気な顔してそんなことが聞けるなと思い、かなり怒りながら大丈夫なわけあるかい!と大声で怒鳴った、とたん周りのみんなが自分の事を見ている事に気が付づきました。
みんな不思議そうな顔で僕の事を眺めています。
????
もう一度周りを見回してもまだ不思議な顔で僕の事を見ています。
ふと我に返った瞬間、顔から火が出るほど恥ずかしい事をしてしまった事に気づきました。
実は、夢を見ていました。
あまりにもうなされていたので、心配したスチュワーデスさんが起こしてくれたそうです。
全ては熟睡の中で恐怖心が作り出した夢でした。
あの夢を見てから6年たったいまも本当の事のようにはっきりと思い出せます。
しかし、昔の私にとっては飛行機に乗ることが生死を賭けた戦いで、いつも落ちたらどうしようということを思いながら、飛行機に乗り込んでいました。
今となってそんなことはありませんが、やはり高いところは怖いですね。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話