中編3
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かわいそうに

私は喘息もちで、風邪を引いたりするといつまでも治らず、入院することが多々ありました。

その入院生活で体験した出来事です。

私が入っていたのは六人部屋で窓際から二番目のベッドでした。

左隣に、おばあさんがいてこの人が時々、おかしな事を口走るようになります。

「かわいそうに。…そうだ、これを食べりぃ、食べ盛りやから、お腹すいとるやろぅけね。」

「あら、今日のお靴は可愛いねぇ。ちよちゃんは、赤がよぅ似あっちょる。」

「…ちよちゃん、おばぁちゃんはもうなおらんかもしれん。死んじゃってん、ちよちゃん大好きやけな。」

などなど、これだけきくと普通の会話で、

(いつもカーテンが引いていて、おばぁさんの姿は直接みえません)

わたしも孫がきてるんだ、仲がいいんだなぁ、と自分も暖かい気持ちになれました。

でも。

「ちよちゃん、また来たか。お見舞いいつもありがとうよ…。」

おばぁちゃんが、また孫に話しかけているのをききました。

消灯時間、もちろん面会時間も過ぎている夜中に。

おばあさんは、ずっとひとりで喋っています。

そのうち、同じ部屋の患者さんが、うるさかったのか看護士さんをよんでいました。

そういえばおばあさんが孫と喋っているとき、おばあさんの声はしていたけど、ちよちゃん?のこえはしていませんでした。

看護士さんがやってきて、

「かわひらさん、どうしました?もう消灯時間すぎてますよ。のどでも渇きましたか?」

「なにを…しよるんか…」

「ん?なに?どうしましたか?」

「馬鹿者がっ!!hふdyrjxhるdyjdgかw8いぇjk#$rfhてr564うう;MC39。;5mv5ー^87%$(’4mcbmypt07mb!!!!」

…最後の方は、もう言葉になってませんでした。

ただ、なにかじゃまされて怒ってたのは分かりました。

看護士さんも困惑し、おろおろしています

おばあさんは、大声を聴いてかけつけた沢山の看護士さんに取り押さえられて、別の部屋へ運ばれていきました。

結局、何がなんだか分からなかったんでけど、あとから、そのおばあさんの身内?ッぽい人が片付けをしてるときに。。。

窓際にびっしりおかれたジュースや、バナナやリンゴ、キャラメルが見えました…。

到底、おばあさんの食べきれる量ではありません。

思い切って、きいてみようかと思いました。

そのとき、おばあさんのいたベッドのしたにも、ジュースの缶がおいてあるのが見えました。

「あの、ここにも…」

「…!そんなところにも?教えてくれてありがとうね。」

ごめんなさい、うるさかったでしょ?

あのおばぁさん、わたしの母なの、なぜか窓があるところにいくと、こういうことするの。。。

沢山の缶をかたずけながら、そのおばさんが少し話してくれました。

いつも、楽しそうにちよちゃんちよちゃんって、いってたんですよ。お孫さんですか?

と聴くと、

驚いた顔をして、

孫にちよって子はいませんよ。

ますます意味が分かりません。

私は、これ以上 詮索するのは失礼だと思い、

おばあさん、早く良くなると良いですね、といって話を終わらせました。

おばあさんがさったあとも、そのベッドは窓際なのにもかかわらず、空気がよどんでいる感じがしました。

窓ぎわにおいていた沢山の食べ物、それは、

まるで日本人形がびっしり並べられているような恐さがありました。

ちよちゃん…

誰のことだったのでしょうか。

今もまだ、あのおばあさんに静かによりそって居るんでしょうか。。。

窓にむかって楽しそうに話しかけるおばあさんを想像すると、

何がみえていたのか、気になって仕方ありませんが、、、

もしも。

あのベッドにカーテンがひかれていなかったら、私も、おばあさんのようになっていたのかもしれません。

あれはみては行けない者だったんだろうと私は思っています。

いまでゃ喘息も完治し、病院のお世話になることはほとんどありません。

それでも、

友達のお見舞いに行ったりするとき、窓ばかり気にしてしまうのは、、、

私にも憑いているからなのかもしれませんね。

怖い話投稿:ホラーテラー カナさん  

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