短編2
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写っていたもの

今から15年ほど前、私はゴールデンウィークを利用し、東北一人旅に出掛けました。

様々な観光名所を巡った末、訪れたのは、霊場・恐山。

テレビ等でその不気味さは聞いていましたので、そこに足を踏み入れる時は、軽く身震いをしたものです。

しかしいざ恐山に入ってみると、天気の良さもあり、何とまあ清々しいこと!

他のお客さんも大勢に来ていたせいで、恐怖心など欠片も感じず、むしろ心地よさすら抱いたものですよ。

何と気持ちの良い場所だろう、何と空気が清浄なのだろう……感動が私の心を包みました。

さて、観光地に立ち寄ったならば、欠かせないのは記念写真。

当時はまだデジカメなど無かった時代、私が使っていたのは、マニュアルフォーカスの一眼レフでした。

気持ちの良い場所だとは言え、ここは恐山、心霊写真が撮れるかも~♪

そうして十数枚の写真を撮影し、最後にレンズを向けたのは、『水子の池』なる小さな池。

ファインダーを覗き、ピントを合わせたら、シャッターを。。。

「カチッ」

あれ?

いつもならば、『パシャリ』と音を立てるシャッターが、何故だか中途半端な音に。

おかしいと思い、カメラの状態を確認すると、何故かシャッターが開きっぱなしになっていたのです。

電池切れか、それともカメラの故障か。

ともかく、シャッターを元に戻さなければと、ボタン操作を繰り返します。

そうして数十秒の格闘の末、ようやく戻ったシャッターに、思わず溜息を漏らす私。

あ~あ、フィルムを無駄にしちゃったな~。

とりあえず、電池を交換してみよう。

そうして恐山を後にした私は、近くの街のカメラ屋を求め、車を発進させたのです。

――――――――――

旅を終え帰宅した数日後。

現像された写真を受け取った私は、帰宅して、すぐに中身を確認しました。

そこに映るのは、様々な観光地で撮影した、東北の美しい風景。

そして、恐山での写真。

残念ながら心霊写真は一枚もありませんでしたが、あの清浄な空気を思い出し、何だか穏やかな気持ちになりましたよ♪

と、捲って行く写真の中、ふと手が止まる一枚がありました。

普通ならば、絶対にあり得ないだろう一枚

実に画像のクッキリした、『水子の池』の写真が。。。

怖い話投稿:ホラーテラー 骸さん  

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