つい昨日の事なんだけども、少しの時間だけ怖い体験をした。
記憶が鮮明なうちに記録しておきたい。
昨日の午前10時頃、会社の車を運転していたんだ。
信号待ちをしていたんだが、ルームミラーで後続の白い高級車を見たとき、違和感を感じた。
ルームミラー越しなのではっきりとはわからないのだが、助手席の若そうな女性が少し変だったんだ。
運転している中年と思わしき男性の肩のすぐ横に顔を寄せて、中年男性の顔を凝視していた。
ただ、中年男性は女性を気にかける様子もなく、普通に前方を見ているようだった。
そんな様子が気になって、ずっとルームミラーを見ていたらクラクションを鳴らされた。
信号が青に変わっていたのに気づき、少しあわてて発進した。
当然、後続車との距離が離れてしまうんだが、ルームミラーでチラッと確認すると、横顔の女性が中年男性を凝視している様子に変化がないように見えた。
そんな状況が数分続き、また赤信号につかまったとき、後続の白い高級車が右折するため、俺の右側のレーンに進路を変えてきた。
俺としては、助手席の女性がどんな格好でいるのか気になったんで、右隣に並んだ白い高級車をそれとはなく覗き込んだんだ。
「!」
助手席には誰も乗っていなかった。
さっきまで間違いなく横の中年男性を凝視していた女性がいたはずなのに。
途中で停車して、女性が降りたということもなかったはず。
でもいない。
気のせいだったとも思えないが、どうしてみようもなく、俺は直進、白い高級車は右折して離ればなれになってしまった。
その後も普通に会社の車を運転していたんだが、姿勢を正すため一瞬車内で背伸びをした時、ルームミラーに何か写り込んだ気がした。
「おやっ」と思って、再度背伸びをしてルームミラーを見たんだ。
そしたら、あり得ないものを見てしまった。
ほんの一瞬、0.5秒くらいだと思うが、見えてしまったものを記憶している限り報告すると
運転している俺の左肩の10cmくらい離れたところに
若い女性
真っ白な顔
無表情
やや上方、つまり俺の顔を
じっと見ている
「んひゃ!」とわけのわからん声が出て、
何で隣にいるんだ?
いつ乗り込んだんだ?
何かの間違いだ!
どーしろっつーんだ!
などと、完全にパニック状態に陥っていたとき、左から
「赤!」
という女性の声が聞こえた。
前を見ると、信号が赤に変わっていて、前の車は既に停車している。
慌てて、急ブレーキを踏み、何とか追突しないで止まることができた。
事故にならずにほっとしたとはいえ、俺はかなり取り乱しいていた。
ルームミラーを確認すると、頭頂部が見える。
恐る恐る若い女性の顔があるはずの、俺自身の左肩の横を目視で確認した。
そこには何もない。女性の顔などはない。
でも、ルームミラーで確認すると、頭頂部と思われるものは写っている。
ルームミラーを見て、左隣を見るということを繰り返したが、状況は変わらない。
パニック状態のまま、俺の頭は最近にないほどめまぐるしく回転した。
『このまま、この車を乗り捨てて逃げてしまいたい。しかし、この車は派手な色のうえ、車体にはでかでかと社名がプリントされているため、乗り捨てたら苦情がくるのは間違いない。俺の勤務する会社は、この地方ではそこそこ知名度があり、真面目な社員が多いと評判なのに、主任という立場にある俺が苦情を受けるのは何ともまずい。あと1キロ程先に行けば、広い場所(冬期間にはチェーン着脱場として使用している)があるので、とりあえずそこまで行って車から離れて対応策を考えるべきだ。』
そんなことを考えていると、「プップッー」と後ろからクラクションを鳴らされた。これで2回目のクラクションだ。
俺は、「こっちは今立て込んでんだ!」と文句を言いたかったが、前を見るとまだ前の車が発進していない。
赤いスポーツタイプの車だったが、エンストしたようだった。
何だ、俺のせいじゃないやと思っていたら、前の赤いスポーツタイプは、タイヤを鳴らしながら急発進し、あれよあれよという間に離れていってしまった。
俺としては、とりあえず1キロ先のチェーン着脱場へと思って発進した。
少し進んでからルームミラーで横顔女を確認した。
「!」
頭頂部が見えていたはずなのにいない。
思い切って背伸びをして、顔があったあたりを見たが何もない。
いなくなったのか?
俺は助かったのか?
まだ安心できないんではないか?
そんなことを考えながら、チェーン着脱場に近づいたんだが、チェーン着脱場には信号待ちで俺の前にいた赤いスポーツタイプが止まっていた。
運転していた若いアンちゃんが車から飛び出してきて、少し離れたとことから、車の中を覗き込んでいた。
その状況を見て俺は思った。
あの横顔女は、赤いスポーツタイプに移動したんだ。
アンちゃん、ごめんな。
あんたには恨みも何もないが、俺にはどうしてみようもないよ。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話