中編3
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僕の忘れられない出来事

今から、二年前のちょうど、今ぐらいの時期かな?

梅雨入り前後だったから……。

学校の帰り道に1mぐらいの幅の溝があってさ。

そこに、木の板で橋が架けられてて、よく、その橋に腰掛けて、溝の中の小魚や、蛙なんかを眺めていたんだ。溝と言っても、結構、水に透明度があって綺麗だった。

あの日もそこで、寄り道してた。雨が降りそうで降りそうにない、そんな天気だったな。

いつもなら、フナやメダカなんかが、泳いでいるのに、その日に限って、小魚の一匹も見当たら無くて、蛙もいなかった。

きっと、雨が降りそうなんで、溝に泥水が流れ込んでくるから、どこか別の場所にいるものだと思って、その日は、家に帰った。

夜になったら、やっぱり雨が降ってきた。

次の日の朝、雨は、止んでいたから少し早目に家を出て、あの溝に行った。

やっぱり、夜の雨のせいで、少し濁ってた。

小魚も見当たらなかったし、蛙もいなかった。

後で、考えたら変な話なんだけどね。その時は、そう思わなかったなぁ……

で、学校行って、放課後また、その溝に行こうとしたら、パトカーと消防車が止まってて、人だかりが出来てた。

何だろう?と思いながら、近寄って行くと、事故があったみたいだった。

僕がいつも溝を眺める場所から、少し上流に上がった所の別の溝から流れてくる水と合流する場所があるんだけど、そこに、小魚がやたら集まってたらしくて、近所の人が見てたら、人間の洋服みたいなのが見えて、通報したとかって、聞いた。

そう言えば、数日前から、近くの小学二年生の女の子が、行方不明になってた。

しばらくして救急車が来て、ブルーのシートに包まれた小さな何かが運ばれて行った。その脇に、びしょびしょに濡れた赤いランドセルが、置いてあった。

女の子は、小魚に食べられていたらしい話を、遠巻きに見ていた大人達が話してたのを聞いた。

僕は、気分が悪くなり、家に帰った。

夕飯に出た、魚には、箸が付けられなかった。

次の日の朝、あの溝の側を通ったら、またパトカーが止まってて、お巡りさんが数人、溝の中でなんかしてた。

僕は、その横を通り過ぎ学校に行った。

学校の帰り、溝の近くまで行ったけど、小魚を眺める気分にはなれなかった。

そのまま、帰ろうとしたら、誰かに、カバンを引っ張られた。

振り返ると、小学生の女の子が、俯いて立っていた。

(なんだ?)と思っていると、女の子が「熊さんが無いの!!熊さん探して!!」と言った。

無くしたのかと思い僕は、一緒に探してあげる事にした。

僕が「何処でなくしたの?」と、聞くと、女の子は、僕の前を通り過ぎて、走りながら「あっち!!」と言った。

僕も女の子の後を追った。着いたのは、ちょうど、別の溝との合流地点。

僕が「ここなの?」と、聞くと、女の子は、少し悲しい顔をして、頭を横に激しく降って、「わからない。」と言った。

とりあえず、その辺の草を掻き分けて、探し始めたけど、見付からなくて、半分諦めかけた時、女の子が泣きながら「ママに作って貰ったの。大切なの。置いて行けないの。」と、呟くように言った。

お母さんに作って貰った大切な物かぁ…と思って、探し続けてあげた。

だいぶ、探したけど、草の中では、見付けられ無かった。

僕は、溝の中を覗いて見た。もしかしたら、と思ったから…そしたら、あったんだ!!

ピンク色の熊のストラップが!!溝の中の藻に絡まってた。

僕は、女の子に「待ってて。」と言って、溝に入り、ソレを拾って、水を少し絞って、女の子に渡した。

女の子は「ありがとう、お兄ちゃん!!」と、嬉しそうな笑顔で言うと、その場からゆっくり消えた。

きっと、僕が今立ってる場所で見付かった女の子なんだろうと思った。

怖いとかは、無かった。

次の日の朝、いつもの様に学校に行こうとしてて、何か気になり、溝の中を見たら、赤い金魚が一匹、フナに混じって泳いでた。

金魚が、ヒラヒラ泳ぎながら、僕を見て、笑ったような気がした……。

終わり

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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