短編2
  • 表示切替
  • 使い方

親友

おばあちゃんは和裁が得意でたまに着物を仕立てていました。

そのおばあちゃんが女学校時代の親友と数十年ぶりに再開しおばあちゃんが仕立てた着物を気に入って「暇が出来たら私の着物もお願い出来るかい?」と頼まれたそうです。

おばあちゃんは早速反物を選び着物を仕立て始めたのですが完成まであと少しのところで親友は亡くなってしまいました。

葬儀も終わりおばあちゃんは悲しみの中着物を完成する事が出来ませんでした。

そんなある日親友が夢に現れ「着物はまだかい?早く着たいもんだね」と言ったそうです。

おばあちゃんは心残りになってしまっては可哀相だと翌日から少しずつ仕立てを再開しました。

またある日親友が「着物はまだかい?これを着ていきたいんだ」と夢で訴えてきました。

「今仕立ているよ。あと少しだから」と答えると「今度の木曜日に着たいんだ。間に合うかい?そしたら一緒に着物を着て出かけましょう」と言います。

おばあちゃんは木曜日までに間に合わせようとご飯も睡眠もそこそこに頑張りました。

そんなおばあちゃんを見てお母さんは「そんなに急がなくても大丈夫じゃい?体壊したら大変よ」と心配して言うとおばあちゃんは夢で見た事をお母さんに話しました。

翌日おばあちゃんが起きると仕立て途中の着物が見当たらずお母さんに「着物を知らないかい?」と尋ねると「着物は私が預かってますよ。あの着物は完成させちゃいけないから…」

おばあちゃんは親友が待っているんだからと詰め寄ると「次の木曜日はね…友引なのよ。着物を着て一緒に出かけたいっていったのよね? それはおばあちゃんを連れていきたいって事じゃないの?だから着物は完成させちゃいけないと思うのよ」

結局おばあちゃんは着物を完成させる事なく木曜日を迎えました。

「着物は出来たかい?一緒いこう」

「申し訳ないね…着物はまだ出来てないんだよ」

「そう。残念だね…着物楽しみにしていたんだけどね…」

「私がそっちに逝く時までには仕上げるから本当にごめんなさいね…」

それから親友が夢に現れる事はなかったそうです。

着物はあと一針のところまで仕上げそのまま飾られていました。

それから数年後おばあちゃんが亡くなり母が着物に針を通し着物が完成しました。

火葬の際おばあちゃんの訪問着の着物と仕立て上げた着物を一緒入れてあげたのできっと今頃2人は着物を着て出掛けていると思います。

昔実話を漫画した本で読んだものです。

なんか怖いような切ないようなそんなお話でした…

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

Concrete
コメント怖い
00
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ