短編2
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お盆の出来事

今から20年以上前の話です。

当時私は小学生で、毎年夏休みには母の実家に帰省するのが常でした。

父の仕事休みがお盆休みと重なり、帰るのは決まってその時期でした。

母の実家はそれなりの広さのお屋敷で、玄関を上がってすぐの所に、仏壇がある座敷部屋がありました。

お盆のある夜に、おじいさんが仏壇の前に座りお経を延々と読む時がありました。

私も子供ながら、面白そうだったので後ろで正座して様子を伺っていました。

ちゃんとしていれば、後でおやつを貰えるかもしれないしな、とかそんな気分でした。

お経を読むおじいさんを前にして、座ってから30分ぐらいたった時でしょうか、玄関の入り口がガラガラと音を立てて誰かが家に入って来たのです。

(おじいさんの家の玄関扉はスライド式で人が入る時には大きな音がした)

当時、家にいたのはおじいさんと私だけで、父や母は近所の親戚の家に出かけていました。

ですから、普通はおじいさんが応対するものだと思っていたのですが、全く無視してお経を読んでいました。

真剣にお経を読むおじいさんに声はかけることは、子供ながらに気が引けたので、私は襖を開いてすぐの玄関前の廊下に出ました。

!?

あれっ、誰もいませんでした。

しかも玄関扉もしまったまま。

首を傾げたまま、部屋に戻るとまたまた、あれっ?

おじいさんの斜め後ろに人が座っていました。

不思議なことに怖い感じはありませんでした。

大きな笠を頭につけて、身体は白と黒の色の装束というのでしょうか、何か物々しい感じの人がうつむいて胡座をかいて座っていました。

大きな笠で口元しか見えませんでしたが、ひげがあったので男の人だというのが分かりました。

おじいさんは変わらず、お経を読むまま。

私は仕方なしに自分の座布団にもどり正座をしておじいさんのお経が終わるのを待ちました。

それから15分位でしょうか。

おじいさんのお経が終わりました。

おじいさんが後ろを向き、ニコっと笑いかけて、よう頑張ったな、あとで小遣いあげよかと言ってくれました。

気付くと座っていた男の人はいなくなっていました。

その時、おじいさんに男の人の事を聞いたらいけないような気がしてそのまま聞きませんでした。

それから数十年たったある時、テレビでやっていた番組で真実を知ることになりました。

私の見た男の人というのは、死後の世界でも修行を続けるお坊さんということで、お盆休みの時期にお経を読む家に休みに姿を表すことがあるとか。

以上、子供の頃の不思議な体験でした。

怖い話投稿:ホラーテラー アマチュアさん  

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