中編3
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オッサン

オッサンはコンビニの弁当を作る工場でアルバイトをしています。午後18時から翌日の朝6時半まで働いています。

オッサンは独身です、両親は死んでしまいました。一人っ子だったので頼れる兄弟も居ません。

オッサンには友達が居ません、毎日が孤独でした。

オッサンを気に掛けてくれる人間なんて一人も居ませんでした。

仕事が終わるとコンビニで弁当とビールを買い、古くて狭いアパートへ帰ります。独りで黙々と弁当を食べながらビールを飲みます。その後、万年床に横になって昔を思い出し懐かしみます。

優しかった両親の事…幼い頃一緒に遊んでいた友達の事…毎日が楽しかったあの頃…。

オッサンはいつの間にか寝てしまいます。目を覚ますと、もう午後16時です。今日もまた仕事です。

オッサンは重い体を起こしてタバコに火を点けます。

深いため息をついて洗面所へ向かう途中、フと思います。

今日は休もう…

つーか、死のう…

オッサンに「一番怖いものは?」と聞くと必ずこう答えます、「孤独が一番怖い」と。人間孤独にすら慣れてしまうモノなのでは?と思うかもしれませんが、当のオッサンは一向に慣れる気配すらありません。

多分、孤独じゃなかった頃の事を覚えているからでしょう。

孤独は人を殺します。

だから休日はどこにも行かずに部屋でラジオを聴きながら過ごしています。

外へ出ると自分が孤独である事を再認識してしまうからです。

オッサンは今日もラジオを聴きます。そして、また昔の思い出に浸りながら眠るのです。

…独りで

「なにチンタラやってんだよ!そんなんじゃ間に合わねーよ!!」

自分より若い社員の怒号がオッサンに浴びせられます、オッサンは焦ってしまい失敗を繰り返します。

「アンタ何やってんの?そんな簡単な仕事も出来ないの?」若い社員は呆れ顔です。オッサンは「すいません!すいません!」と謝ります。歳のせいか中々仕事を憶えられず、体も付いてきてくれません。

惨めです。

情けないです。

オッサンは何度も、この仕事を辞めようと思いました。でもココを辞めたら、もう雇ってくれる所なんか無いでしょう。オッサンはひたすら耐え続けます。

仕事が終わり朝日を背にアパートへ帰ります。手にはいつものコンビニ弁当とビール。

アパートの前で立ち止まりオッサンは少し泣きます。また今日の夕方からあの工場で働くのか…

次の日も…

次の日も…

次の日も…

多少の不運、不幸もあったでしょう。でも今まで嫌な事から逃げ続けて来た結果、目を逸らして来た結果、誤魔化して来た結果、今の自分があるのでしょう。

オッサンは知っています。若い時、本当に少し、本当に少しだけの勇気を出してそれを少しづつ積み重ねていれば、今の自分も少しだけ違った生き方が出来ていたのかもしれない。

そして今の自分でも決してそれは遅くはない事を。

未来の自分の為にオッサンは今日も工場で働きます。

もう逃げる所まで逃げてきました。

死ぬ勇気が無い云々考えてる内はまだ生きていける。

オッサンは知っています。

望もうが望むまいが人はいつか死ぬ。オッサンも何をしようが、どう生きようがいつかは死ぬ。

だったらその時までほんの少しでも…

オッサンは今日も少しの勇気を出して工場へ向かいます。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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