中編5
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しかく岬

文才が無いので読みづらいと思うが、若輩者ゆえ目を瞑って頂きたい。

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あれは自分が小学6年の晩夏だったと思う。

地元は海のすぐそばで、しかも山を背負っていたから、腕白盛りの私達にとってとても恵まれた土地だった。

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さて、その海沿いは海水浴場として開かれていたのだが、少し進むと小さな崖のようになっていた。ここが、通称“しかく岬”だ。

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穏やかな海水浴場と異なり白い荒波が切り立った崖に砕け

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…といきたいところだが、残念ながら海はどこまでも穏やかに揺れ、太陽を乱反射しきらきらと輝いていた。

岬自体さして高さもなく、正面の海は深めで岩もなく、絶好の飛び込み台だった。

もちろん立ち入り禁止で大人の目を掻い潜って、なんてこともない。授業でも使ったほどだ。

それでも一応安全のために、そこに入れるのは小学4年からとなっていた。

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しかし、事故が起きたことがないわけじゃない。たびたび、7,8歳の子が悲しい最期をとげていた。

正面は深みだが、右手前には岩がひとつあった。足を滑らせてそれに頭を打ったのだときいていた。

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そう言えば、しかく岬の名の由来を語っていなかった。

気になっていたことと思う。

私達も同じで、そのあたりでも年寄りなじいちゃんにきいてみたことがある。好奇心旺盛な年頃だけに、そして犠牲が出ているだけに、悲しい物語や人を襲う禍々しい怪物を期待して。

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「あっこはなぁ、デートスポットだったんじゃ」

「「…は?」」

悪友共と声がハモった。

いや、デートスポットって。

その回答にも驚いたが、じいちゃんからそんな単語が出てきたことにも驚いた。意外と侮れないじいちゃんである。

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「今はもうねぇがなぁ。昔はよ、あっこの正面にも岩があってなぁ、そん岩の上ん方が四角く抉れちょって、水が溜まった水が光を四角く反射しよったん。じゃけぇ、四角岬じゃ」

なんと。

ただただ単純に、四角の穴で四角岬。

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「じゃ、じゃっけど、なして無くなったん?」

「ゆ、幽霊でも出たん?」

「いやぁ、磯巾着が大量発生した年があってなぁ、グロテスクじゃったからな、かかか」

「「う、うぐぅ…」」

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想定外の話に落ちがついたところで、私達はまたひと泳ぎしてくることにした。時間は日暮れどきだったが、観光客も帰ったころでちょうどいい。

友達の家から帰ってきた小学2年の弟も連れて、四角岬に文句のひとつでも言いにいこうというものだ。

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「おぅ、お前らまた海か」

「ん。岬に文句のひとつでも言わにゃあ」

「ぼうずもか。…。…お前ら、日が出ちぃうちはええが、真っ暗ぅなって岬に近づいたらならんでなぁ!足引かれるぞ!!」

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これはいい話を聞いた。

するなと言われてしない悪ガキはいないものだ。

私達はきゅうきょ予定を変更して、肝試しにいくことになった。

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集合は9時、私の家に。

悪友共と、せがむ弟を連れ岬へ向かった。

見慣れた岬も夜となるとどことなく雰囲気が違う。所詮小学生で、風の音や草むらの揺れる音にいちいちビクついていた。

そうして意を決して岬へ登る。

…何もない。

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「…はぁあ~…」

馬鹿みたいに力が抜けて、みんな笑い出した。

臨む海は月明かりで美しいほどだったのだから。

みんなひとしきり笑うと、お開きとなった。

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「じいちゃんなんもねぇじゃんけぇ~…」

「馬鹿もんが。行くな言うたが、悪ガキ共め」

じいちゃんは小突いただけで、いつものようにかかかと笑った。

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そのままみんな岬のことは忘れてしまった。けれど私はなんとなくつまらなくて、ある日暮れ、弟を連れて岬に登った。

夕日がとても綺麗で、

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「ぅわぁっ!?」

「!?おいっ」

それまで退屈そうにしていた弟が、突然バランスを崩した。しかも、大岩の方に!

間一髪腕を掴んだから良かったものの、落ちていたら、確実に…。

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「なんしとん!!あんね(危ない)じゃろ!?」

「兄ちゃん、目ぇ見えんなってんて…一瞬」

「…一瞬かよ!!」

「なんか…真っ白なってん…」

「はあ?」

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あたりを見回すも、何もない。穏やかな海、橙色の夕日だけ。

「なんもねぇじゃん…」

そう言って、弟に目線を合わせたときだった。

チカッ

「!?」

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走る閃光に視界が白に塗り潰される。

一瞬足場が分からなくなり、何故かそのまま、

右側に、

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「なんしとんじゃ馬鹿!!」

「早ようこっちこいやぁーッ」

「兄ちゃぁ~…っ」

気がついたら、悪友共と弟が必死で私を引っ張っていた。

なんとか登る。

日はとうに沈んでいた。

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「お前ら…なして…」

「あほ!お前の弟が泣きわめいちょっから急いで来たんじゃろがっ」

いい友達を持った。

私は、気がついたらボロボロに泣いていた。怖かった。

その日は悪友共に家まで送られ帰路についた。

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「じいちゃん、あれ、なんなん?デートスポットって、嘘じゃろ?」

「嘘じゃねぇぞ。お前の母ちゃん達にきいてみぃ」

「うそ!だって俺も弟も引かれた!!夕暮れじゃったけど…」

「お前、日暮れにぼうず連れてったんか!?」

「じいちゃん、真っ暗なったらって言うたやん…」

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「…いや、じいちゃんが悪かった。」

じいちゃんが話してくれたのは、岬の話。

デートスポット云々は、嘘ではないらしい。

しかし、それは後から作ったものらしかった。注意をそこに向けるために。

しかく岬はそれ以前からの呼び名。

しかく岬は、“四角岬”であって、“死角岬”。

右手前の岩の窪みで結晶化した塩分がある条件下のもと光を反射してしまうのだそうだ。しかも、ちょうど小学2年位の目線に直撃する位置に。大人からは、死角となる。

もうひとつ。

頭を岩に打ち付けた子供の体は、岬と岩の間に挟まれて、これも死角となるのだった。

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じいちゃんは夕暮れに私達が弟を連れて行くのを止めるために、あえて夜に行くことを禁じたのだった。

悪ガキ心をよく理解したじいちゃんだ。

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そうしてじいちゃんは私の頭を撫でて、小遣いをくれた。

でも。

塩分の固まりが光を反射するか?

そもそもそんなに固まるものか?

それに―――――

あのときは満ち潮だった、のに。

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なんて。

私は、みてしまった。

あの岩の上、小さなおかっぱの男の子が、にこにこ笑って――――

―――――こちらに鏡を傾けていたのを。

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岩はもう撤去された。じいちゃんも大往生した。

真実はもう分からない。

でも“しかく岬”は…

…呼び名そのままに、まだ、地元にある。

駄文長文、失礼した。

ありがとう。

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