中編3
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ブランコ

公園があった

マンションに囲まれた

普通の小さな公園だ

ベンチ、砂場、滑り台、ブランコ

置いてある遊具も普通だ

ある日2人の少女が

夜その公園で遊んでいた

少女達はブランコに

向かい合うように座って

話をしていた

気候に大した変化はなく

時折、風が少し吹いた

そんな時

ガタガタッ

揺れた

片方のブランコが揺れた

風ではない

まるで誰かに揺らされるよう

そんな感じだった

驚いた少女達

その後、友人の少女と

先輩の少年2人と

計3人を呼び出し

ブランコについて話した

少年の1人がまず乗ってみた

だが揺れなかった

その後、もう1人も乗ったが

変化はなかった

少年が言った

「昔、このマンションの駐輪場で

幼い男の子が男子生徒の運転する

自転車で引かれて死んだ」と

又、こうも言った

「その後、その子の若い母親は

自殺したんだって

そのお母さん、ここに来て

よく誰もいないブランコを

揺らしてたんだって」

この夜に聞くべきでない話だった

結局何も起こらず

その夜は帰り

静かな住宅街に女性特有の

大袈裟な叫び声だけが

楽しそうに響いた

次の日の夜

カラカラカラカラカラ

自転車の音だ

キーッ

止まった

昨夜の少年が1人公園にいた

まずはじっとブランコを見てみた

何もいない

が、何かいるように見えて仕方ない

少年はふと気付く

「揺れてない…」

ブランコが揺れてない

当たり前である

誰も乗っていないのだから

だが、もう1つのブランコは揺れている

風だ

風がブランコを微かに揺らしている

だがもう片方はぴくりともしない

ぴくりとしないブランコと

風で横揺れするブランコ

風の向きかと思ったが

風はむしろ

止まっているブランコから吹いている

オカシイ…

少年は今度はブランコに跨がった

しばらくたった

ギィギィギィ

遂に揺れた

激しい横揺れだ

まるで振り落とすよう―――

「あっ…」

ドタッ

遂に落ちた

少年は揺れが収まっていく

ブランコを見ながら確信した

再び住宅街に自転車の音

公園は闇に飲まれたように

静かになった

数日後

その日はそれまでの誰でもない少女が

公園に1人

ランニングの休憩をしていた

ブランコに跨がり一息ついた

すると少しして

ガタガタッ

やはり揺れた

驚く少女

するとピタッと止まった

驚きはしたが直ぐに冷静になり

風か何かだと言い聞かせて

また座り直した

しばらくして再び走りだそうと

公園から出ようとした

―――感じる

視線を感じる

気配を感じる

誰かいる

何かいる

少女は振り返ることが怖くなった

それでも勇気を振り絞り振り返る

―――何もいない

安心した少女は元気よく

走り出した

「……マ……ま…」

さっきまで少女いなかった公園の方から

確かに声がした

振り返りたくなかったが

気になって仕方がない

少女は再び振り返った

やはりそこには誰もいな―――

公園には誰もいなかった

隣接したマンションの駐輪場

男の子がいた

「ママ……待ってよ」

「ひぃっ!」

驚いて動けなくなった

今、確かに「ママ」と言った

だが少女に子供などいるわけがない

「ママ……待ってよ

ママ……遊んでよ

ママ……僕もブランコ乗りたい

ママ……痛い

ママ……頭が痛いよ

ママ……血が出てるよ

ママ……血が止まらないよ

ママ…ママ…ママ…ママー!」

少女にしか聞こえない叫び声が

マンションに反響して響く

「い…い……いや…だ…誰か…」

少女の小さな助けを呼ぶ声は

響かなかった

それから数日後

何かを確信していた少年が

再び夜の公園にゆっくりと歩いてきた

「………」

何も言わずただ誰も乗っていない

ブランコを揺らした

その後、隣のブランコに座り

「今度はママを呼んできてやるから」

と呟いた

立ち上がり、例のブランコに座った

ブランコは揺れなかった

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