中編3
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ひとつ多い

ずいぶんと昔になってしまいましたが、私が小学生の頃の話です。

私は父親に連れられて東京都内にある遊園地に行きました。

そこには今では主流となった「バイキング」や「フライングカーペット」などが比較的早い段階で導入されたところです。

子供ですからそういった乗り物が大好きでしたから、それに付き合わされる父親には苦労をさせました。

とりあえず端から乗り物に乗っていくのですが、どうしてもダメなところがありました。

そう「お化け屋敷」です。

夏になるとテレビでやる心霊特集を見ては、びびってトイレに行けなくなるような小心者でしたから尚更です。

父親としては「親父の強いところ」を見せたかったのでしょう。

嫌がる私を強引に連れてそのお化け屋敷に入りました。

当時そのお化け屋敷は、歩くタイプのお化け屋敷でしたから、どんなに怖くても進まない限りずっとお化けに囲まれます。

私はビービー泣きながら父親にしがみつきやっとの事で進んでいきます。

「ろくろ首」「動く床」「逆さお化け」「お岩さん」……

永遠に続くんじゃないかと思われるそのお化け屋敷もやっとのことで脱出し、暗闇から出て見た太陽のありがたみが嬉しかった。

父親がいろいろと聞いてきます。

「どうだ怖かったか?」

「うん」

「一番びっくりしたのは何だ?」

「上からドーンて落ちてくるお化け」

「何が一番怖かった?」

「お腹の辺りが血だらけでじっと睨みつけてた女の人」

「………」

父親の顔色が見る間に変わっていきます。

「それはどの辺だ?」

「おばあちゃんがぶつぶつ何か言ってるところ」

「あの辺はそんなのいなかったぞ」

「いたもん!」

私は父親が脅かそうと思って言っているものだと思い必死に私は訴えました。

「………」

父親は私の手を引き、チケット受付をしていた人のところに向かいました。

「あの……すいませんが、このお化け屋敷の中に『お腹の辺りが血だらけでじっと睨みつけてた女の人』ってありますか?」

そう確認すると係の人はひとつ「はぁ~」とため息をつきます。

「……それ、念仏が聞こえるところじゃないですか?」

父親は私の顔を一度見てから係員にうなずきました。

「……なら説明するよりお見せしますよ」

そう言うが早いか入口のところに「整備中」の看板を出し、私達二人を中へと出口方向から案内してくれました。

中は非常灯のような小さな明かりがついており、先ほどよりも怖くはありません。

どんどん進んでいくとその問題のポイントに着きました。

角を曲がってカーテンを抜けた一本道ですが、今回は先ほどの幽霊は出てきません。

「……ここで間違いないね」

係員の人が私に聞きます。

私は黙ってうなずきました。

「結論からいくと『ここには私共では仕掛けを作っていません』と言うしかありません」

「いたもん!だって……」

私は必死に訴えます。

すると係員はそれを遮るように話をはじめました。

「しかしながら、ここで同様な報告や訴えを何度かいただいています。『体が急に重くなった』『気配を感じる』『女の人が立っていた』などが大半です。でもいるはずがないんです。ここの向こうは『表の壁』なんです!」

係員の人はその壁を叩いた。

ベシベシといった中身の詰まった音です。

「ここには人が立って待ってられるスペースなんて皆無なんです! だけど報告は数多くあがってきます。もうイヤになってしまいます」

その係員の人も半分泣きそうです。

私たちはそのまま無言でお化け屋敷を出ました。

「御納得いただけましたでしょうか?」

係員の人は憔悴してしまっています。

私も父親も無言でうなずき、その場をあとにしたのでした。

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お化け屋敷はおれも小さい頃苦手だった。

自分は昔からこうゆう場所を避けてきたので見たことがありませんが
興行として観るほうも観るほうも怖いね。

お化け屋敷、怖いですよね〜。
本物が混じってても気付かないですもん!
わたしは小さい頃お化け屋敷で転んでお化け役の方々に「お嬢ちゃん大丈夫!?」と囲まれたことがトラウマです。今では笑い話ですが(笑)

私の娘も泣き叫びながらしがみついて来たりします
私はそれが可愛くて大笑い(;^_^A
そしたらおどかす係りの人に
早く進めと怒られた(-_-;)
私はそっちの方がビックリでした