短編2
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勘違い。

それは上京して間もない頃のことだった。

お世辞にも小綺麗とはいえないアパート。家賃の安さに惹かれて入居してみたものの、使い勝手の悪さといったら。

歩く度に床はギシギシと軋むし、トイレの水は時々流れない。ドアのチェーンロックははじめから錆びて切れていた。陽当たりも悪いから、洗濯物もなかなか乾かない。

大学の友人がこの部屋に遊びに来たときーーーポツリとこんなことを言っていた。

「……出そうな部屋だね」

何が「出そう」なのかは敢えて聞かないでおくことにした。

その日はバイトが長引き、アパートに帰ってきたのが深夜になってしまった。シャワーを浴び、簡単に腹拵えを済ませ、ベットに入る。

疲れているはずなのに、なかなか寝付けないでいた。自分の部屋のベットの中という安全圏の中にいるはずなのに、妙に落ち着かない。

ようやくウトウトしかけた時ーーー小さな物音で目が覚めた。

耳を澄ませる。微かだが、足音のような音がした。その足音は、私が寝ているベットの周囲をせわしなく歩き回っているようだ。

うっすら目を開けると、黒いシルエットがぼんやり見えた。背丈からすれば男性のようだが……よく分からない。

”出そうな部屋だね”

ふいに友人の言葉を思い出した。

嗚呼ーーーそうか。彼女が言うように、やっぱり出たのか。

これが心霊体験というやつか。

私は震える声でお経を唱えた。

「南無阿弥陀仏……南無阿弥陀仏……南無阿弥陀仏……南無阿弥陀仏……南無阿弥陀仏……南無阿弥陀仏……南無阿弥陀仏……南無阿弥陀仏……」

ところが。お経を唱えているなのに、奇妙な気配はちっとも消えない。どころか、だんだんとベットに近付いてきているようだった。

「南無阿弥陀仏!南無阿弥陀仏!南無阿弥陀仏!南無阿弥陀!南無阿弥陀仏!南無阿弥陀仏!南無阿弥陀仏!南無阿弥陀仏!南無阿弥陀仏!」

恐怖のあまり、私は泣きながら必死でお経を唱えた。すると枕元で「ズブッ」と鈍い音がした。

ーーーナイフだ。ナイフが枕に突き立てられていた。

枕の中から羽毛がパッと舞い散り、それらが私の顔にも掛かった。

ふいに耳元で囁かれる。

「幽 霊 じ ゃ な い よ」

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ぎゃあああ!!!((((;゚Д゚)))))))

ひぃぃ!!((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

こぉえぇぇぇ!!((((;゜Д゜)))

こわっ!
その後もおおいに気になる展開ですね。