長編9
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憑いてきた女

これは、僕の目の前で先輩に起きた実話になります。。。

お祓い等一切おこなっていませんので、何かしらの影響が皆様へ起きたとしても、責任は取りませんのでお願いいたします。

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少し長いお話になりますので、どうぞ最後までお付き合いいただけると嬉しいです。。

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僕はその日、バイト先の先輩であるAさんに誘われた。

「心霊スポットに行こうぜ。」

いつものお決まりだ。

十代最後の夏、僕は心霊スポットと名のつく場所によく出向いていた。

Aさんとは特に、バイトの終わる0時過ぎ頃から、暇さえあれば心霊スポット巡りを決行していたのだ。

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その日は、埼○県のとある湖へ行く話になった。

ここは地元でも有名な心霊スポットで、何でも湖の周りを右手と左手に分かれて歩くと、すれ違わず一周するという噂があった。

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しかし、現実はそう不思議なことはおこらないものだ。

以前知り合いがここへ訪れた際は、普通にすれ違ったそう。

昼間は散歩スポットになっているこんな場所に、そんな摩訶不思議があるわけがない。

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「左右で分かれてもどうせすれ違うんですし、今日は普通にみんなで一周周りましょう。」

僕はそう言い、みんなもそれに応じた。

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今日のメンツは、Aさんと僕の他に、バイト先が同じ先輩のBさん、Aさんの彼女、後輩のCの5人だ。

みんな、よく一緒に心霊スポット巡りをする仲間といった感じだ。

「じゃあ行こうか。」

Aさんが先頭をきって、時計回りである左手の入口へ歩き出す。

この時はまだ、全員和気あいあいとしていて、まぁ霊体験なんて今日もしないで終わるだろう。

そんなことを考えていたのだった。。

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music:3

時間は深夜の2時過ぎ。

霊というのは、深夜2時〜4時頃に出やすいという話を聞いていたが、この時はたまたまその時間だった。

歩き出した僕は、後ろの方でBさんと話しながら歩いていた。

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よくある林道。

右手には湖があるはずだが、暗くて水面すらよく見えない。

道は散歩スポットでもあるので、きちんと舗装されている。

「何もいないですね。」

木々の間、湖、地面、様々な目に入る風景を携帯のライトで照らしながら、僕はBさんにポツリと呟いた。

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Bさんは、そこら中を写メ撮って確認するという行為を繰り返している。

何か写れば話題になる、、

きっとそんなことを考えているのだろう。

すると、遠くの方で真っ暗な闇の中にカラフルな光が見えた。

近づいていくと、自動販売機の光だった。

「こういう人工的なものがあったら、本当に雰囲気も何もないですよねー。」

そんな話をしているうちに、なんなく出口に到着。

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「くぁ〜実に出る気がしなかったぁー!」

そんなことを言いながら、横目にAさんを見る。

ん?なにやら様子がおかしいことに気づく。

Aさんの彼女が心配そうに話しかけているが、Aさんは反応を示さない。

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music:2

目線を地面に向け、ただただ震えているのだ。

彼女の言葉も、ほとんど聞こえていないようだった。

ひたすら何かに怯えている様子だ。

「とりあえず近くのコンビニへ行こう。」

Bさんが、Aさんを落ち着かせるために言った。

というより、きっとBさんも感じていたのだろう。

Aさんを早めにこの場所から遠ざけねば、と。

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車は運悪くAさんの車だったが、僕が代わりに運転した。

Aさんは、相変わらず何かに怯えながらミラーや後ろの様子を伺っている。

「とりあえず、ここに停めますね。」

湖から比較的近いところにミニストップがあり、そこへ僕は車を停めた。

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しばらく経つと、ようやくAさんは口を開けた。

「ヤバイ、とうとう見ちゃった。」

えっ、、、

僕を含め、みんなが揃って唖然とした。

いつものように普通に言ったのなら、きっと冗談で返せた。

しかし、みんなは空気で分かっていた。

Aさんが、とても冗談など言える状態ではないことを。

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そして、Aさんは続けた。

「ちょうど半分を過ぎたくらいだったかな。

ふと、視界の端に真っ白な光が見えたんだよ。

確認しようとよく目をこらすと、全身真っ白な女だった。

木と木の間から、半分くらい体を出してこっちを睨んでた。」

「まじっ、、すか、、?」

俺は、嘘をついていないことなど百も承知だったが、言わずにはいられなかった。

しかし、あれだけ周りを確認しながら周ったのだ。

もし本当なら、Aさんにしか見えなかったということになる。

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「見間違えるとか、そういう次元じゃない。

もし全員に見えていたなら、誰もが一瞬で気づくほどに目立っていた。

真っ暗な闇に、真っ白な女だぞ?

分からないわけがない。」

「それは確実に女だったのか?」

Bさんが言った。

「間違いない。

顔も、身体も、全て白かったけど、シルエットで女だって確信した。

髪が長くて、目は無かったけど、明らかにこっちを睨んでた。

実際に見れば分かる。

アレがこの世の者ではないことも、悪意をもってこっちを睨んでいることも。。」

ごくっ。

僕は唾を飲んだ。

昔からAさんを知っているが、とても冗談でこんな演技ができるタイプではない。

汗をびっしょりかいて、ほとんど瞬きもせず、震えながら語っているのだ。

その場にいる全員が悟った。

これは、本当の出来事なんだ、と。

しかし、話はそれだけでは終わらなかったのだ。。

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music:4

それからしばらくして、すっかりAさんもいつも通りに戻っていた。

いつも通りに仕事をして、いつも通りに話をして笑っている。

ピザの配達のバイトをしていた僕らは、配達に行く際に必ず

「行ってきまーす。」

と声をかける。

そして、帰ってきたらみんなで

「お帰りー!」

と迎える決まりだった。

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その日も、Aさんはいつも通りに配達に向かった。

僕は店内で、カートンというピザを入れる箱の組み立て作業をしていた。

しばらくして、Aさんが帰ってきた。

「お帰りなさーい!」

僕が声をかけるが、反応がない。

「どうしたんですか?先輩!」

「、、、また見ちゃった。

あいつだ。。

憑いてきたんだ。。。」

正直、その時ぞくっとしたのを覚えている。

そう、憑いてきたのだ。

Aさんにしか見えなかったあの白い女が。

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あの場所だから見てしまっただけ。

そんな期待を粉々にした。

バイト中に見たということは、そいつは確実に憑いてきている。

「そう、、ですか。」

言葉がそれしか出なかった。

慰める言葉も、励ます言葉も出ないほど、僕にもその事実は受け入れ難いものだったのだ。

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その日はそれ以上触れずに、僕は家に帰った。

明日、少しは落ち着いてればいいんだけど。。

そんな楽観的な事を考えて。。。

翌日、先輩は少し回復したようだった。

その日僕は早上がりの日で、Aさんはラスト。

つまり、お店の締めを任されていた。

店長が用事あるとかで、古株のAさんは集金やレシートをまとめるラストをたまたま任されたのだった。

ここから先は、Aさんに直接聞いた話になるのだが、、、

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バイトの人は皆上がり、Aさん一人になった。

集金やレシートまとめも終わり、一息つこうとAさんは外へ一服しに出た。

ふと、Aさんが店内に目をやった。

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sound:18

店内に人がいる。

いや、それが人でないのはすぐに分かった。

そう、あの白い女が店内にいるのだ。

息を飲む間も無く、女は店内奥の事務所の方へ消えていった。

ちなみに、店の出入り口は一箇所だ。

入口を入ったらキッチンがあり、そこを抜けたら後は奥に事務所があるだけ。

「しまった。」

Aさんは、この時死にそうな気持ちになったそうだ。

出入り口は一箇所しかない。

そして女の消えて行った事務所には、まだ片付け途中の集金したお金も、Aさんの荷物も残っている。

つまり、自ら女の消えて行った事務所へもう一度行かないと帰れないのだ。

Aさんは、しばらく考えたが、猛ダッシュで荷物をまとめて帰ることにした。

ほとんど前を向かずに突入し、必要最低限の時間で店を飛び出した。

ハァハァ、、、

何事もなかった。

Aさんは、少し安心したが、早く家に帰りたい一心で愛車の車を走らせた。。

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music:3

店から家が近いAさんは、到着してすぐに二階の自分の部屋へ走り、布団を被ったそうだ。

そして、とても眠りにつきそうにない心臓の鼓動を聞きながら、ふと考えてしまった。

心霊スポットで見たあの女。

最初は湖の周りの林道。

次に配達中。

そしてお店。

「......近づいてきてないか?

...家に。」

不安というのは、考えれば考えるほど悪い方へ考えてしまう。

気づかなければ良かったのに、気づいてしまったのだ。

そして、気づいてしまえばもう頭はそれしか考えられない。

不安と恐怖で、Aさんは一睡もできなかった。。。

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翌日、Aさんは無理矢理呑み会を開いた。

あのことをなるべく思い出したくないからだ。

そして、出来るはずはないが、出来る限り忘れたかった。

考えない時間を増やしたかった。

夜になり、呑み会が始まってしばらくすると、Aさんは酒の力も加わりすっかりそのことを忘れ上機嫌になっていた。

僕は、呑み会が終わった後もAさんをこのまま一人にするのが心配だった。

大切な先輩の一人だ。

何かあったら、、、

そんな思いから、僕は

「先輩、今日はこのままウチに来てくださいよ!」

と、誘ってみた。

しかし、酒が入っていてもやはり先輩は先輩。

プライドがあるのだろう。

僕の気持ちを読み取ったAさんは、

「気持ちだけ受け取っておくよ。

大丈夫、酒も入ってるし、帰ったら風呂なんて入らないで速攻寝に入るから。」

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「....わかりました。

でも、何かあったらすぐ連絡くださいよ!」

僕はそう言い残し、自宅へ帰った。

時間は、深夜の4時前だっただろうか。

Aさんは家に着くなり、着替えもせず布団に入った。

そして、ほぼ寝ようとしたその時、悪い予感は的中したのだった。

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music:2

カチャ

確かに閉めたドアノブが、確かに空いた音がした。

そしてすぐ、

キィ〜........

窓も空いていないのに、扉がゆっくりと開いていく音。

Aさんは真逆を向いて横になっていたが、音ですぐに分かった。

まるで人一人分が入れるほど空いたであろう扉を、Aさんは確認せずとも分かったのだ。

確認しようか...?

ただ自然に開いただけかもしれない。

少し無理があるが、そう考えなければやってられない。

しかし、現実はそうもいかない。

動かないのだ。

身体が固まっている。

耳鳴りがひどい。

金縛りというやつだ。

そして、後ろ向きにも関わらず、Aさんはすぐに気配を感じた。

そう思った次の瞬間ー

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shake

バッ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎

一瞬で背後にソレは来た。

そして、金縛りで首は動かなくても、目の隅で確認できた。

「あいつだ。」

白く目立つソレは、すぐ真後ろでこちらを見下ろしている。

Aさんは目をつぶった。

「早く終われ早く終われ早く終われ早く終われ早く終われ早く終われ」

しかし、ソレはAさんの腕を掴んだ。

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shake

ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ

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人間では到底不可能な速度で、腕を揺らしてきたのだ。

そして、

ふっ

とソレは消えていった。

Aさんは、気を失ったか眠ったか分からないまま、意識がなくなったそうだ。

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それから、Aさんはソレを見なくなったそうだ。

後日、そこの湖が心霊スポットとなった由来を聞いた。

少し前に、子供が湖に落ちて亡くなったという話だった。

新聞にもあったし、恐らく事実なのだろう。

しかし、Aさんが見たソレは大人であろう女。。。

そう、、

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もしかしたら、あの湖にはまだ見つかっていない死体が沈んでいるのかもしれない。

僕とAさんは、そう思ったのだった。。

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ドキドキしながら読み進めました。。
はじめて投稿されたとは思えないくらい読みやすかったです。
また他のお話も楽しみにしています!