長編15
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cursed house

「うわぁ、大きいお家だね♪」

そう言って、家中を走り回る娘の亜希。

「僕、この部屋がいい!!」

そう言ってはしゃぐ息子の蒼希。

5歳になった娘と息子は双子。

今日、私達4人家族は、念願のマイホームに越してきました。

高級住宅街にある一軒家が破格の値段で売りに出されている事を知り即決。

最初はご近所付き合いが大変そうとか、何故こんなに安いのかなど不安ばかりでした。

しかし、ご近所さんは皆親切ですぐに馴染めたので不安はすぐに吹き飛びました。

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

片付けも落ち着いて、引越してから2ヶ月が経った頃。

「ママなんて大嫌い!!」

「蒼希!!」

息子の蒼希の様子が明らかにおかしいのです。

「ママ…大丈夫?」

私の手をギュッと握り、慰めてくれる亜希。

以前は仲が良かった二人なのに、この家に越してから、蒼希が亜希を無視するようになりました。

まだ5歳だから部屋は二人で使ってね?って言ったら蒼希は

「誰と一緒に使うの?」

って言ったり、亜希の分のおかずまで食べようとしたり…。

亜希が話しかけても無視したり…。

亜希は

「私は大丈夫だから!!」

って言って私達に心配かけないように振舞うのです。

そんなある日、お絵かきをしていた亜希の元に蒼希が来て何も言わずクレヨンや画用紙を片付け始めたのです。

「蒼希?亜希がまだ遊んでるじゃない!なんでそんなに意地悪するの!?」

あまりにも亜希が不憫になり、いつも以上に蒼希を叱りました。

すると予想外の返事が返ってきたのです。

「亜希、亜希って…、亜希なんて知らないよ!!亜希なんていない!!僕は一人っ子だ!!」

親にとって残酷の言葉です…。

こんなに悲しい事はありません。

パシッ ----

初めて息子を叩きました。

そして

「ママなんて大嫌い!!」

なんて言われる事に…。

その日の夜、主人に相談しました。

「どう思う?前はあんなに仲良かったのに…」

「反抗期じゃないか?」

「反抗期?こんなに早く反抗期ってくるの?まだ5歳よ?」

「わかった。俺も蒼希と話してみるよ」

主人は蒼希とお風呂に入ってくると言って、蒼希を呼びました。

30分後、お風呂から上がってきた主人の顔色が少し悪いようにも見えました。

「…どうだった?」

「え?あ、あぁ、蒼希は病気かもしれない…」

「!?どういう事?」

「蒼希にはどうやら亜希が見えていないらしいんだ。まさかとは思ったが、嘘をついている様には見えなくてな…」

「そんな…」

私たちは話し合い、少し様子を見て、病院に一度連れて行こうという事になりました。

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翌日 ----

「ママーーーッ!ギャーーッ!!」

突然二階の子供部屋から蒼希の泣き叫ぶ声が聞こえてきました。

っ!?

私は急いで二階に駆け上がり、勢いよくドアを開けました。

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バンッ ---!!

「蒼希!?……?」

「…ママ?どうしたの?」

部屋の中にいた蒼希は、いつも通り遊んでいました。

泣いた様子もありません。

「…今、ママの事大きな声で呼ばなかった!?」

「呼んでないよ?…大丈夫?」

私のただならぬ様子に、心配そうに私の顔を覗きこんだ蒼希。

「…大丈夫!ごめんねー!ママ疲れてたみたい♪何でもないから!!」

…空耳?

あんなにハッキリ、煩いほど聞こえたのに…

 

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不本意ではあったが私の聞き間違えだと言い聞かせ、忘れかけていたある日の夜…

「…んん、……ッ、うう……」

酷く苦しむ声がすぐ傍で聞こえて目が覚めました。

「…あなた?」

私の隣で寝ている主人がうなされていたのです。

暗くてよく見えないが…

………?

主人の胸の辺りに何かが乗っかっているのがうっすら見える

!?

起き上がろうとしたが、身体が動かない…。

金縛りだ

目を見開いて必死にその‘何か’を見つめた。

「……!?…亜……希?」

そこで私は意識を失いました…。

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翌朝…

勢いよく飛び起きた私。

主人を見ると、スヤスヤと何事もなかった様に寝ています。

時計に目を向けると、ぴったり朝の5時。

「やっぱり疲れてるのかな…」

ゆっくりとベッドから立ち上がり水でも飲もうとドアへ視線を向けた瞬間

shake

「ッッ!?」

驚きの余り、尻餅をついた私。

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私達の部屋のドアが微かに開いていて、そこから何かがこちらを覗いていた。

目だ。

目が合った瞬間フと消えてしまったので一瞬だったが…

目が合った高さから見ると、恐らくこちらを覗いていたのは子供…

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wallpaper:1

蒼希…?それとも亜希…?

いや、そんなはずない…。

こんな朝早く起きれる子達じゃない!!

私は恐る恐る、部屋のドアに近づいた。

…誰もいない。

私はそのまま部屋を出て、ゆっくり子供部屋に向かった。

いつもは気にならない自分の心臓の音がうるさく感じた。

ドン ドン ドン ---

!?

すると突然、一定のリズムで壁を叩く音が聞こえてきた。

静まり返った家の中に不気味に響く鈍く重い音。

音を頼りにたどり着いたのは…

「…え?」

壁だ。

確かこの壁の向こうは作り的には部屋があってもおかしくない場所。

4、5畳程の広さが壁で囲まれている部分があったのを思い出しました。

間取りを見た時、不思議に思い不動産に聞いたら

「以前住まれてた方がリフォームされてそのままなんですよ!!そこは部屋があったはずですよ!」

と言っていた。

ドン ドン ドン ----

未だに鳴り止まない音。

私は音が鳴ってる壁にそっと耳を当てました。

「ハァ…ハァ…ハァ……」

「ッ!?」

すぐ耳元で荒い息づかいが聞こえて、驚いた私は壁からすぐに離れました。

!?

すると今度は私のすぐ傍に誰かがいる気配を感じたのです。

しかし、辺りを見渡しても誰もいない。

何を思ったのか私は天井が気になりフと上を見上げました。

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wallpaper:600

「ッッ!?」

そこには身体半分だけ天井から突き出ている子供がいて、私をジッと睨んでいるのです。

叫ぶ間もなく私は意識を失ってしまいました。

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どのくらい経っただろう、気がつくと私は廊下に倒れていました。

倒れた時に打ったのか頭がズキズキと痛みます。

なんとか立ち上がり部屋に戻って時計を見ると朝の5時ぴったり。

「…え?…うそ…」

そんなはずない…。

廊下に出てくる前、時計を見た時5時ピッタリだったのに、時間が進んでないわけ無い。

私は時計の電池切れかと思い、携帯を開いて時刻を見ると、やはり5時。

主人はスヤスヤと寝ています。

普通じゃない!!

私は確信した。

夢…?

いや、ありえない。

現に私は廊下で倒れていたんだから。

思えば、この家に越してきてから変なことばかり起きている。

子供の泣き叫ぶ声が聞こえたり、主人の上に何かが乗っかっていたり…

壁の向こうから変な音が聞こえたり

なったことのない金縛りにあったり…

それにさっき天井にいたのは何?

今思えばご近所さんもおかしい。

みんな口裏を合わせているかのように

「以前住まれてた方はとても仲の良いご家族でしたよ~」

「理想の家族でしたわ~」

「引っ越した理由?…ご主人の出張について行ったのよ!ほら、凄く仲の良いご家族だったから!!」

以前住んでいたという家族のことを聞いても皆同じことしか言わない。

絶対に何かある。

私は主人が起きるのを待って相談した。

「絶対この家おかしいよ!!」

「おかしいって…なに?なんかあったの?」

「私たち以外に誰かいるの!!」

「ハハ、そんな訳ないだろう」

「本当だって!見たんだから!!」

「疲れてんだよ!今日の夕飯作らなくていいから今日は休め!な?」

結局主人は信じてくれなかった。

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後悔先に立たず…

この時、私がもっと強く言っていれば

意地でも引越していれば…

あんな恐ろしい事を体験せずに済んだのかな…

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「ママ、……あのね?」

数日後、亜希がモジモジしながらやってきた。

「どうしたの?」

私が尋ねると涙を流した亜希。

「亜希?何かあったの?」

私はもう一度聞いた。

「蒼希がね、蒼希がね…ッ!!ヒック!!」

亜希は袖で自分の涙を拭いながら一生懸命話してくれた。

 

「ママ…、私、蒼希が怖いよ…」

「なにか意地悪されたの?」

「蒼希、最近私が寝た後、必ず私の枕元に来てニコニコ笑いながらずっと私の顔見てるの…。起きようと思っても身体が動かないの。蒼希に聞いても僕じゃないって言うの」

そう言って私に泣きながら抱きついてきた亜希。

嘘を言っているようには見えない。

だけど…、蒼希には亜希は見えてないんじゃ…?

でも…

確実に何かよからぬことが私達に起きてる事だけは間違いない…。

このまま放っておいて子供に何かあったら…

私は携帯を手に取りある人に電話をかけた。

今まで一度もかけたことがない相手なので、まだ使われているか、電話に出てくれるか…、祈るように通話ボタンを押した。

(お願い…繋がって……!!)

 

「プルルルル  プルルルル ……もしもし」

(!!)

「も、もしもし!?…いきなりごめんなさい!!…私高校で同じクラスだった、支倉です。…覚えてますか?」

「……あぁ、はいはい」

「……お元気でしたか?」

「…わざわざ俺の進捗聞くために電話したわけじゃないでしょ?要件は?」

「あ、ごめん。…相変わらずクールだね?ガク君は!…ちょっと相談に乗って欲しい事があってね…」

私が電話をかけた相手は高校3年生の時同じクラスだったガク君。

彼は、とても頭がよくてカッコ良かったので、隠れファンがたくさんいた。

なぜ隠れファンかというと、ガク君は素敵な部分と同じくらい怖い部分もあったのだ。

彼は目が見えない。けれど見えてるんじゃないかと思う程、普通に生活していた。

手で探るような行動や杖などを使って道を歩いている姿を見たことがなかった。

それでも躓いたり、転んだりぶつかったりしない。

 

障害物は「見えてるでしょ?」って突っ込みたくなるほど正確に避けるのだ。

そして彼には不思議な力があると噂になった事があった。

色々な噂はあったが、今回私が電話した最大の理由…

霊感があるという事…これがもし本当の事なら助けて欲しいとお願いするために電話したのだ。

「…あ」

「…え?どうかした?」

「いや…、あー…なるほどね、状況は分かった」

!?

私、まだなにも言ってないのに…?

「その家、早く出たほうがいいよ?これが聞きたかったんでしょ?」

「ッ!?…うん、でもこの家出れば解決するのかな?…ほら、ついてきたりしないかな?」

「…それは流石に電話越しだけじゃわかんないよね。」

 

相変わらず淡々と話すガク君。

「あ、あの、もしよかったら一度来てもらえないかな?家に…」

「んー、…いや、悪いけど行けない。ただ呪われに行くようなもんだからな。」

ッ!?

「…それってどういう事?私、どうしたらいいの?ねえ!!教えてよ!」

恐怖と混乱とでパニックになり、全く関係のないガク君に八つ当たりをしてしまった。

「……俺はまだお前に何も聞いてない。だが大体予想はつく。電話越しでもかなり強い怨念が伝わってきてるんだよ。もしかしたらただ家を出るだけじゃもうダメかもしれないな。」

「…そんな…」

「…もし……て……今…」

 

!?

 

突然、ガク君の声が途切れ途切れになって何を言っているのか聞き取れなくなってしまいました。

「もしもし?ガク君!?もしもし!?」

「…も……し…………ッ………逃がさない……プツ!!」

「ひっ!?」

……なに今の?

最後の声…ガク君の声じゃなかった。

子供の声……?

ドン  ドン  ドン  ----

!?

また壁を叩く鈍い音が二階から鳴り始めた。

蒼希?!

二階には蒼希がいるはず!!

私はすぐに立ち上がり2階へ向かおうとしました。

!?

足が何かに掴まれていて身体が動かない。

ッ!?

目を向けて後悔した。

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容姿格好は亜希…しかし顔が別人になった娘の亜希が私の足に絡むように凄い力で抱きついていたのです。

真っ赤な目を見開いて、大きな口を開けて私の顔を見上げています。

驚きと恐怖で心臓が痛い位に跳ね上がり、ドクドクと鳴っています。

一瞬で部屋の温度が下がったのがわかりました。

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ドン  ドン  ドン  ----

「ギャーー!ママーーーッ、ママァァアッ!!」

蒼希!?

少しして蒼希の叫び声が聞こえてきました。

しかし足元には娘がいる…

下唇を血が出るほど噛み締めて

「…ごめんッ、亜希!!」

 

私は亜希を力いっぱい蹴り飛ばしました。

「…ママ、置いていかないで?」

亜希の声で、背後から私を呼ぶ声がしましたが

振り返らず、そのまま階段を駆け上がり蒼希の元へ走りました。

バンッ!! ---

「蒼希!!…ッ!!」

 

「…………」

 

目に飛び込んできた蒼希の姿は、目を覆いたくなる光景でした。

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天井から無数の手が伸びていて蒼希の足を掴み、逆さ吊りになった蒼希は何度も何度も壁に叩きつけられていたのです。

血だらけになり、ピクリとも動かない蒼希。

部屋に入ろうとしても、天井から伸びる手がそれをさせません。

 

ドン  ドン  ドン  ----

なんて無力なのでしょうか…。

目の前で自分の息子が血まみれで今も壁に叩きつけられているのに、何もできない…

 

「いやぁぁあああッ!!やめてぇぇぇ、蒼希を返してぇぇえ!!!」

人生で出したことのない程の声で私は何度も、何度も叫びました。

 

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- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

気がついた時は私は自分のベッドの上でした。

 

「…お?気が付いたか?」

「サオリ?大丈夫か?」

「……あなた、…ガク…君?」

…一体何があったの?

どうして主人とガク君が一緒に?

 

!?

 

「蒼希ッ!!蒼希は!?ねぇあなた蒼希、それに亜希は!?」

「………大丈夫!…命はギリギリで助かった…、ガクさんのおかげだ」

「…?……ガク君、来てくれたんだね…ありがとう、本当にありがとう!!」

 

ベッドの上で深々とお辞儀をした私の肩を掴んだ主人。

「…サオリ、いいか?落ち着いて聞くんだ。」

結婚して以来、久しぶりに見る主人の真剣な表情。

「亜希は…」

「亜希がどうしたの!?」

まさか私が蹴った時に怪我した?

「あなた!!何よ?亜希がどうしたの?」

私は主人の身体を揺さぶり返答を急かしたが、主人は俯き顔を歪めた。

「…言いづらいなら俺から話そうか?」

暫く口を閉ざしていたガク君が立ち上がった。

主人はコクンと頷き、涙を拭って部屋の隅に移動した。

「ガク君…、ねぇ、何があったの?」

「…単刀直入に言おう。亜希はあんたらの子じゃない。」

「………は?何言って……」

「あんたらの子は蒼希一人だ。亜希は存在しない」

「……?」

ガク君、何言ってるの?そんなわけないじゃない!私が生んだのよ?私達の事何も知らないくせに……

「…確かにお前らの事は何も知らない。だが今言った事は事実だ。」

!?

そんなはずない!!だっていたもん!!私の手を握ったりもしてた…。

「それはお前の娘じゃない。」

「…どうして……?」

なんでさっきから…

「俺は心の声が、相手の考えている事が聞こえるんだよ。」

!?

「あんたら家族がこの家の怨念とともに心中するって言うなら俺はこのまま帰るよ。だがお前は一度俺に助けを求めた。今断るなら昔のよしみで金はいらない。だけど助かりたいなら正式に依頼されたとして、金は頂くよ?」

……もし、もしもガク君が言っている事が本当なら……

「本当なら?」

「……お願いします。私達を助けてください。」

「…まいどあり」

こうしてガク君という強力な助っ人が現れてくれたおかげで命を落とさずに済んだが…。

「これから俺たちはどうすれば?」

ずっと黙り込んでいた主人が言った。

「んー、そうだなぁ、今一番危険なのは息子だな」

「蒼希が!?」

「…まず、この家に何が起こっているのか亜希が何者なのか、今後どうすべきなのかを話そう。これからが正念場だ。気合入れて聞いとけ」

 

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「まず、この家は完全に怨念が渦巻いている。子供…、それから女?恐らく親子だな。その親子があんたらに悪さをしているんだ」

「あ!私子供見たかも!天井に逆さまの状態で私を睨んでた」

「その子供だな!そして一番厄介なのは、その親子が作り上げたもう一人の存在。今回の場合は亜希だ。」

今回の場合?

「そうだ。人によってそいつは姿を変える。あんたら本当は男女の双子を出産する予定だったんじゃないか?そして女の子の方が……」

 

「…!?そうだ…。生まれた時はもう……」

思い出した!そうよ、あの時亜希と名付けるはずだったあの子は……。

こんな大事なことを忘れるなんて…

「忘れてたんじゃない。それはこの家の怨念があんたらの記憶を麻痺させてたんだ。そして亜希を作り出し、生活の一部に紛れ込んだ。」

「でも、蒼希は?蒼希には亜希の事が見えていなかった!」

「蒼希は亜希の存在を知らない。まだ5歳の子供には死の意味もよくわからないしな。だから蒼希だけには見えなかった。」

「そんな…、おかしかったのは私達だったなんて…」

悔しくて、自分に腹が立ち、蒼希に申し訳なくて涙が止めど無く流れた。

「さぞ、蒼希は怖かったろうよ。自分には見えない何かに話しかけたり、世話したりしている親を見るのは」

 

「…蒼希ッ!!」

主人も悔しそうに自分の拳で何度も自分の足を殴っている。

「だからこそ蒼希が危険なんだ。奴らにとって蒼希は邪魔だ。あんたらに余計なことを吹き込まれると厄介だからな。って言っても、俺もかなり危険だけどね。」

 

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ガタガタガタガタ ----

!?

 

「地震?」

「いや…、揺れているのはこの家だけらしい」

ガク君はそう言って、窓の外を眺めている。

「!?あなた!蒼希は?蒼希はどこにいるの?」

「病院だ!大丈夫!ガクさんが手配してくれた病院だから心配ない。」

ガチャッ ----

 

!?

 

突然私達の部屋のドアが開いた。

 

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「ママ、大丈夫?」

「ッ!?」

「ママ、どうしたの?」

そこから、髪の毛で顔が覆われた女の子が私をママと呼び、近づいてきた。

身体は動かない。

ガク君も主人も動いてない。

「ねぇ、ママ、私の事嫌いになったの?」

(お願い!!来ないで!!)

「蒼希より私の方がずっといい子だったでしょう?なのに…」

女の子の身体が左右に大きく揺れ始めた。

長い髪の毛もユサユサと揺れ、顔が見え隠れする。

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「な ん で わ た し じゃ ダ メ な の ?」

 

 

「ひッッ!?」

 

 

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「お前が死人だからだよ」

!?

 

ガク君!?

さっきまで固まってたのになんで!?

「こんなもん俺に効くわけ無いでしょ」

「許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない」

 

呪文のように同じセリフを繰り返す女の子。

ッ!?

今度は天井の隙間、壁の隙間からシュルシュルと髪の毛が生き物のように動きながら現れた。

それはあっという間に天井を覆い、主人の首に巻きついてそのまま持ち上げた。

未だに固まっている主人は苦しそうな表情こそしていないが、髪の毛が首にめり込んでいるので

確実に首は締まっている。

「……あ……なッ……た!!」

声を振り絞り、主人を呼んだが当然返事はない。

バンッ ----

ガク君は突然部屋から出て行ってしまった。

ドンッ  ドンッ  ドンッ  ----

すぐに壁を叩く音が廊下から響いてきた。

その瞬間、天井や壁からシュルシュルと伸びていた髪の毛は見る見るうちに戻っていった。

ドサッ ---

「あなたッッ!!」

身体に自由が戻り、私はすぐに主人の元へ駆け寄った。

女の子の姿もいつの間にか消えていた。

「ゲホッ!!ゲホッゲホッ!!」

咳き込んではいるが主人はなんとか無事だったようです。

私は主人の背中をさすり、主人に肩を貸して立ち上がらせた。

ドンッ  ドンッ  ドンッ  ---

壁を叩く音が今もまだ聞こえている。

主人と私はガク君を追いかけて廊下に出た。

「!?」

壁を叩く音の正体はガク君でした。

そしてガク君が叩いている壁は奥に部屋があるというあの不気味な壁でした。

「…ガク君」

「おぉ、無事だったか!…どうやらこいつらはこの壁を叩かれるのが相当嫌らしいな」

「どういう事でしょうか?」

「恐らくですが生前のトラウマでしょう。この親子は旦那からDVを受けていたようだ。その旦那が必ず暴れる前にこの壁を叩いていたらしい。子供が教えてくれたよ。お母さんは幸せそうな家族が許せないんだって。この壁を叩けばお母さんはすぐに隠れるってさ。」

「そうだったんだ…」

「ご近所さんの話は大嘘だね。毎日悲鳴や泣き声が聞こえてたらしいよ?最終的にこの親子が死んだのも旦那の過度な暴力のせいだしね。この家に誰も住んでないと、近所の家にまで悪さをしに行ってるようだな。だからあんたらに住んで欲しくて大嘘言ったんだろうよ」

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結局

 

私達3人はこのままこの家に住むことにしました。 

 

悪さをしてくることは未だにありますが

 

壁を叩くと収まります。

 

私達は今も幽霊と同居しています。

Concrete
コメント怖い
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uniまにゃ~様、いつも閲覧、コメント、怖いをありがとうございます♪
久しぶりの投稿でしたので、忘れられているだろうと思っていましたが、覚えていてくれて嬉しかったです(*≧∀≦*)
嬉しすぎるコメント感謝します♪
『ガクシリーズ』頑張りますので、今後もupaをよろしくお願いいたします♪

返信

相変わらずの文才に感激致しております。
「ガク」シリーズ(*^。^*)わくわくしながら待っています

返信

苦粗矢蝋様、いつも閲覧本当にありがとうございます♪
返信遅くなり大変申し訳ございません゚(゚´Д`゚)゚
嬉しいコメントありがとうございます(*゚▽゚*)
こうして、私が投稿する作品を待っていてくださる方、応援してくださる方がいる限り、ない頭を捻り楽しんで頂けそうな話が思い浮かんだ際はひっそりと、恐縮しながら投稿を続けさせていただきます|д゚)
やはりありましたか…(;_;)
ご指摘本当にありがとうございます♪
すぐに訂正させて頂きました!!
何度も自分では確認しているのですが…。申し訳ございません…(;_;)
私は教えていただいた方が嬉しいので、今後も見つけ次第ガンガン教えていただけると助かりますm(_ _)m
呆れず、これからもupaをよろしくお願い致しますヽ(*´∀`)ノ

返信

すごいですね
退屈になるポイントがどの作品もありません
常になんというか、上から上から新しい転機が被さってきて大変スムーズに完読してしまいました!
よくこんなに新しいものを発想できますね
すばらしいです
新作お待ちしておりますm(__)m

追伸
昔のよしみは文法上では平仮名のほうが適切なのかな?
いつもはどんな作品でも誤字、脱字があっても失礼かと思い指摘しないのですが、upaさんの完成度の高い作品なので少し気になってしまいました
バカなんで間違ってたら申し訳ありません

返信

赤煉瓦様、いつも励みとなるお言葉ありがとうございます(*≧∀≦*)
気に入って頂けて良かった~♪
何か要望やアドバイスなどあれば、是非言ってくださいね♪
今後は地道に『ガクシリーズ』でも作ろうかと思っております♪
赤練瓦様の中毒症状がでないうちになるべく投稿させて頂きたいので今後もupaをよろしくお願いします♪

返信

upa様、待ってましたよ~~♪───O(≧∇≦)O────♪
このゆっくり攻めてくる恐怖感と臨場感は最高ですよ。
怨念とは恐いですね、命有る者の思念をも狂わせるんですから。
死してもトラウマが残るとは・・・ん?トラウマが怨念を創り出すのか?
まだそこに住み続ける家族は幽霊と同居がトラウマになり怨念がもっと強力的になつたりして・・
でも『ガクさん』がいるから大丈夫か!
ん~~ガクさん頼もしい限りですね。

同居しています・・・続きがある・・・((((;゚Д゚)))))))
ある意味upa中毒者なので次回も期待しています。

返信