棺姫《木葉宅アルバイト前編》

長編14
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棺姫《木葉宅アルバイト前編》

これは、僕が高校1年生の時の話だ。

季節は冬。

年の暮れも押し迫った日の事。

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・・・・・・・・・。

その日、僕は炬燵で亀か蝸牛の様にでろでろと伸びていた。

傍らには水分補給の為のお茶と乾し柿。

本に漫画に枕。

「冬だぁー・・・・。」

首まですっぽりと炬燵に埋まりながら、近くの枕を引き寄せる。

読書も飽きたし、そろそろ寝ようかな・・・。

頭の下に枕を敷き、向こう側に飛び出させていた足を収納する。

「むぅ・・・・・・。」

僕は日本人に生まれたことを、心底幸せに思いながら、ゆっくりと目を閉じた。

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・・・・・・・・・。

ピロロロロ、ピロロロロ

鳴り響く電子音。

心地好い眠りから剥がされた僕は、やや不機嫌になりながら携帯電話を引き寄せた。

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「はい・・・もしもし。」

「あ、もしもし。・・・コンソメ君ですよね?」

聞こえてきた声の主は、木葉さんだった。

何故か少し困った様な声をしている。

「はい。・・・どうしました?」

「いいえ。・・・コンソメ君、声が掠れていますが、風邪でも引いているんですか?」

「いえ、別にそんな事無いです。」

単に寝起きだからだ。

「なら良いんですが・・・。」

・・・どうやら、困っていたのでは無く、心配してくれていたらしい。

「お気遣い痛み入ります。・・・で、御用件は?」

「いえ・・・。勢いで電話を掛けてしまって。実はよく考えていないんです・・・一寸待って下さい?纏めますから。」

そう言うと、木葉さんは十秒程度、無言になって、そして言った。

「・・・・・・うん。纏まりました。」

「はぁ・・・。」

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「バイト、しませんか?」

「ぅえ?」

先ず、木葉さんからバイトと言う単語が出て来るとは思っていなかった僕は、思わず何だか間が抜けた声を出してしまった。

「日給は・・・。働き次第ですかね。でも、福沢さんは出て来ると思って頂いて結構ですよ。」

「バイトって・・・何の?」

福沢さん・・・て、一万円札って事だろうか。

「嗚呼、言ってませんでしたね。」

「ええ。」

液晶の向こうで、大きく呼吸をする音が聞こえた。

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・・・・・・・・・。

翌日午前9時。木葉宅前。

「・・・相変わらず凄い家だな。」

僕は目の前にドーンと構えられている門を見て、何時も通りの感想を述べた。

「然うでも無いですよ。」

「・・・ふぉ!」

何時の間にか、木葉さんが門の前に立っていた。

「・・・今日は。」

斜めに狐面を付け、真冬だと言うのに着流しを着ている。真冬で曇りに、その格好は酷く異様だった。

「こ、こんにちは・・・。」

やり取りとしてはこれも何時も通りなのだが、今日の木葉さんは何だか気迫が凄い。

口元はにこやかに微笑んでいるが、目は全く笑っていない。

一言で言ってしまうなら、怖い。

思わず声が震えてしまった。

「中へどうぞ。」

木葉さんが、スッと手で促し、家屋の方へと歩き始める。

「・・・失礼します。」

僕は一礼して、門の中へと足を踏み入れた。

門を潜ると、重い観音開きの門が大きな音を立てて閉まった。

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・・・・・・・・・。

扉が閉まると、木葉さんは立ち止まった。

「え、えとー・・・・・・木葉さん?」

僕がわたわたと声を掛けると、木葉さんは

「ふぇっくしょい!!!」

と大きなクシャミをした。

途端にカタカタと震え始めた。

「え、え?!」

「あーもう!もう無理!寒いです!!綿入れ取って来ます!!コンソメ君一寸待ってて下さい!!あ、やっぱり付いて来て下さい!!」

そしてダッシュで縁側の方へと向かう。

僕は、一瞬で威厳や威圧感等が無くなった木葉さんを見て、ホッとするやらガッカリするやらで何だか複雑な心境になりながら、縁側へと向かったのだった。

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・・・・・・・・・。

縁側から上がって更に幾つか奥の部屋。

木葉さんはストーブを点け、綿入れを着込み、ホッと溜め息を吐いた。

「嗚呼。これだから冬は苦手何です。」

僕はポカーンとしながら木葉さんを見た。

本当に、さっきの気迫はどうしたと言うのだろう。

「・・・御仕事のイメージ保持も、楽じゃ無いですよ。本当に。」

僕のポカーンとした視線に気付いたのだろう。

木葉さんが、苦笑なんだか照れ笑いなんだか判らない笑いを浮かべた。

「コンソメ君を脅かすつもりは無かったんです。・・・本当ですよ?あくまでもイメージの保持の為。外では、何時何処で誰が見ているか分かりませんからね。」

頭をポリポリと掻いている所を見ると、どうやらさっきの気迫や態度はわざとだった様だ。

僕の頭に

ねぇ、じゃあ何で皆でアニメ○トとか行ってんの?!

どうして外に出るとドヘタレなの?!

と言う疑問が浮かんだ。

「お茶、淹れて来ます。コンソメ君は、手を洗って嗽をして来て下さいね。」

「あ、はい。お構い無く。」

「洗面所の場所は覚えていますか?」

「はい。」

僕がそう返事をすると、木葉さんは台所の方へと消えて行った。

・・・にしても木葉さん、何時まで僕を子供扱いするつもり何だろう。いや、言ってる事は正しいんだけども。

そんな事を考えながら、僕は洗面所へと向かった。

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・・・・・・・・・。

僕が洗面所から帰って来ると、木葉さんはもう部屋の中に居て、お茶を淹れていた。

「どうぞ。」

「あ、どうも。頂きます。」

湯飲みからは、香ばしい匂いが漂っている。

どうやら玄米茶の様だった。

小皿の上には栗饅頭が乗っていた。

僕が玄米茶を啜っていると、木葉さんが口を開いた。

「で、アルバイトでしたね。・・・嗚呼、飲みながらで結構ですよ。」

僕は頷き、また一口玄米茶を啜った。

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「最近忙しくて、倉の整理が出来ていないんです。コンソメ君には、それをして頂こうと思いまして。あ、あと昼食の用意も御願い出来ますか?冷蔵庫の中の物は自由に使ってしまって構いませんから。」

ふぅ、と小さく息を吐いて、木葉さんが言った。

「はい。分かりました。・・・・・・え?倉?」

「ええ。あの倉です。」

木葉さんが立ち上がり、丸窓を開けた。

僕も立って丸窓を覗く。

そこから見えたのは、かなり大きな倉だった。

「頑張って下さいね?」

ポン、と木葉さんが僕の肩を叩いた。

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・・・・・・・・・。

で、僕in倉なう。

倉の整理とは言っても、何荷物を全て運び出す訳でも無く、やる事は主に埃落としと要らなそうな物が有ったら取り敢えず外の筵に出す、と言う極めて単純かつ簡単な仕事なのだ。

・・・と、木葉さんは言ったものの、先ず僕には肝心の要る物と要らない物の区別がつかない。

二階建ての大きな倉。

移動は木製の梯子。

取り敢えず壁一面にビッシリ並んでいる物達をパサパサと叩きで撫でる。

寄木細工らしき小箱に変な置物。

指輪に髪飾り。

キューピー人形や壊れかけのレディオ。

何だかはよく判らないが、動物の剥製らしき物まである。

体は犬に似ているが、妙に首が長くて表情が人臭い。

「気持ち悪い・・・。」

これは要らないかな・・・とボロいレディオを手に取ってみる。

・・・分からないけど、取り敢えず外に出してみるかな。

僕がレディオを運ぼうと梯子を降りようとすると、奥の方に古びた冊子が有るのに気付いた。

「何だろ・・・?」

手を伸ばし、掴んでみる。

謎の冊子の正体は、古ぼけたノートだった。

色は黒。

表紙に何か書いてある様だが、埃が凄いのと薄暗いのとでよく読めない。

僕は壊れかけのレディオを小脇に挟み、ノートを持って梯子を降りた。

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・・・・・・・・・。

「嘘・・・だろ・・・・・・?!」

倉の外に出てノートの埃を払うと、表紙に書いてある文字ははっきりと読める様になった。

そのノートには白い文字で

《DEATH NOTE》

と書かれていた。

偽物だよねこれ?!

でも木葉さん家の倉だからな・・・!

「どどどどどど・・・どうしよう?!」

もし本物だったら僕はエライ物を手にしてしまった事になる。

「捲るべきかな・・・っ!」

恐る恐る、表紙に手を掛けた。

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・・・・・・・・・。

○月××日 △曜日 晴れ

今日は学校でおじょうさまが話しかけてくれました。

「ひみつだからね」

と言ってチロルチョコをくれました。

これはたべずにたからものにしようと思います。

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○月×☆日 □曜日 晴れ

今日はろうかでおじょうさまとすれちがいました。

「あ、このは君!」

と呼びかけてくれました。

死ぬほどうれしかったです。

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○月×△日 ♪曜日 曇り

今日はおじょうさまが遊びに来てくれました。

おみやげにおかしをもってきてくれました。

これもたべずにたからものに・・・・・・・・・

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・・・・・・・・・。

「うわぁ・・・。」

ノートの中には、拙い文字で気持ち悪い程の思いが綴られていた。

「これ、木葉さんの日記だ・・・。」

内容はひたすらにのり姉。

珠にクラスメイトへの呪詛。

て言うかお菓子食べろや。

保存とかすなや。

・・・これはある意味、デスノート何かよりずっと厄介な物を発見してしまったかも知れない。

「僕は何も見なかった。僕は何も見なかった。絶対に何も見なかった。」

僕はそっと、ノートを元の場所へと返した。

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・・・・・・・・・。

そんなこんなで、一階の整理が終了した。

と言うか、整理するまでも無く整頓されていた。

「次は二階か・・・。」

二階は一階の半分しか無いので・・・と言うのも、この倉の二階はロフト状になっていて、ほぼ半分が吹き抜けになっているからなのだが・・・まぁ、とにかく直ぐに終わるだろう。

僕は少しだけ急ぎ足で急な階段を上った。

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・・・・・・・・・。

「誰だ二階は直ぐ終わるとか言った奴は・・・!」

紛れも無い僕だ。

確かに、床の面積的には二階の方が格段に狭い。

しかし、狭いからと言って掃除が楽とは限らない。

「何こいつら・・・!」

鎧兜にトーテムポール。

巨大なぬいぐるみにペコちゃん人形。

変な置物。

箪笥にクローゼット。

異常に大きなハンマーまである。

「何これ・・・重っっ!!」

脱臼するかと思った。

今度は、比較的軽そうなぬいぐるみを持ち上げる。

それ程軽くも無いが、持って行ける重さだ。

「よいしょ・・・っと。」

おんぶの要領で背中に背負う。

僕は一階への階段を降りる為、元来た通路を歩き始めた。

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通路を塞いでいたぬいぐるみが無くなったので、奥に行ける様になった。

何故か何処から見ても目が合うトーテムポールを無視しながら、奥へと進む。

二階は、奥の方に小さな窓があって、奥へ進む程に明るくなっていた。

窓にガラスでも嵌めてあるのだろう。

窓から射し込む光は、少し青みがかっていた。

その一番奥。

窓の真下に、彼女は居た。

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・・・・・・・・・。

高級そうな黒い棺の中で、彼女は眠っている・・・・・・様に見えた。

年齢は大体十代の後半~二十代前半頃。

顔は・・・目を閉じているから定かでは無いがかなりの美人だ。

パッと見、のり姉に少し似ている。

赤い着物を着ていて、黒く長い髪をしている。

棺には彼女と共に、さっき開いたばかりの様な花々が敷き詰められていた。

棺にはガラスの蓋がついていて、何処か童話の白雪姫を思わせる。

思わず、頭の中に《これキスしたら起きるかも》と言う阿呆な考えが過った。

薄紅色の頬と、白い肌。

吃驚する程に綺麗な人だった。

ガラスの蓋にはうっすら埃が積もっている。

と、言う事は・・・。

「・・・人形?」

いや、こんなリアルな人形がある筈無い。

寧ろあって堪るか。

僕は棺の端を持ち、そっと揺すった。

・・・全くの無反応。

「・・・・・・やっぱり人形か。」

僕は棺の埃を落とし、また掃除へと戻った。

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「恐るべし僕の本気・・・!」

何と、開始から三時間程で掃除と整理が終了してしまった。

・・・まあ実際は、別に僕の本気が凄い訳では無く、ただ単に元から倉が整理整頓されていたからなのだが。

こういう時、独りでボケるのは悲しい。

さっき木葉さんの様子を覗いたのだが、御仕事中の様だった。

時計を見ると、今はもう一時に近い。

僕は裏口から屋敷へと入り、台所へと向かった。

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・・・・・・・・・。

お昼はオムライスにした。

人参のみじん切りを大量に混ぜ込んだ。

「・・・・・・コンソメ君。」

「何ですか?」

木葉さんが困り顔で言った。

「・・・こんなに細かく切っては、避けられ無いじゃないですか。」

「避けないで下さい。食べて下さい。」

「此れは私への挑戦と受け取ります。」

「受け取らないで下さい。食べて下さい。」

それでも木葉さんは、スプーンの先でオムライスをほじくり返している。

・・・こうなったら、伝家の宝刀を使うしかない。

「・・・のり姉は《好き嫌いする人は嫌い》と言っていました。」

ピシッッ・・・!

と木葉さんが固まった。

・・・もう一押しかな。

「《野菜嫌いとか有り得ない》とも言っていました。」

「・・・・・・嘘吐き。」

「嘘じゃ無いです。」

※実は嘘です☆

「・・・・・・分かりましたよ。」

木葉さんが渋々と、皿の隅に出来ていた人参の山を食べ始めた。

僕は小さくガッツポーズをした。

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・・・・・・・・・。

昼食を食べ終えると、今度は木葉さんと、筵に出した物が本当に要らない物なのかを調べる事になった。

壊れかけのレディオ、大きなぬいぐるみ、薄汚れたバッシュ、陸亀の甲羅、割れている手鏡・・・その他諸々。

木葉さんは嬉しげに、ほぅ、と溜め息を吐いた。

「ちゃんと要らない品だけを選んでいますね。」

「そうなんですか?」

僕が言うと、木葉さんは大きく頷いた。

「ええ。見事な物です。・・・よくできましたね。」

ワシャワシャと頭を掻き回された。

相変わらずの子供扱いだけど、木葉さんの機嫌が直ったから、まあ、良しとしようと思った。

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・・・・・・・・・。

筵の上の物を分別してごみ袋に詰めていると、ふっと、二階の奥に居た彼女の事を思い出した。

僕は、彼女が一体何者なのかを聞いてみる事にした。

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「あの、木葉さん。」

「・・・はい?」

「二階に寝ている女性が居たんですが・・・。」

木葉さんは、不思議そうな顔をした。

「寝ている女性・・・?」

「ほら、二階の一番奥です。棺の中に寝ている・・・。」

「寝ている・・・・・・嗚呼!」

木葉さんが、ポフンと手を叩いた。

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「小雪(仮名)さんですね!」

「え?!」

思わず大声を出してしまった。

木葉さんが此方を見て来る

「あ、あの、あの人、人形じゃ・・・?」

僕が聞くと、木葉さんはフルフルと首を横に振った。

「いいえ。小雪さんは人間ですよ。」

「ぅぇえ?!」

また大声を出してしまった。

だって、彼女が人間ならば、棺の蓋に埃が堪る位眠りこけてしまうなんて有り得ないからだ。

寝坊助さんにも程がある。

しかし、死体が棺の蓋に埃が堪る位の時間、腐らないと言うのも、大分可笑しな話だ。

そんな困惑する僕を見て、木葉さんはにっこりと笑った。

「まぁ、百聞は一見に如かず、ですからね。一緒に見に行きましょうか。」

歩き始めた木葉さんに続き、僕は倉へと向かった。

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・・・・・・・・・。

パチリ

裸電球の光が、暗かった倉の中を照らし出した。

「電気通ってたんですか?!」

「ええ。」

事も無げに木葉さんが言った。

「やっぱり、電球を点けずに作業していたんですね。・・・・・・まぁ、小雪さんが《寝ている》様に見えたのなら、初めからそうと決まっていた様な物ですがねぇ。」

後半はほぼ、独り言だった。

今度は僕の方を向き、少しだけ怒った顔をして言う。

「今回は知らなかったのだから見逃しますが、次からは必ず電気を点けて下さいね。階段や梯子で転んだり落ちたりしたら危険ですから。」

いいですね?と、念を押して来る。

僕はコクリと頷いた。

「宜しい。」

僕が頷いたのを見て、木葉さんはまた僕の頭をワシャワシャと掻き回した。

安定の子供扱いだ。

人参食べられないくせに。

人参食べられないくせに。

大切な事だから二回書いてみた。

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・・・・・・・・・。

二階に着くと、木葉さんは奥に微かに見える棺を指差した。

「ほら、あれでしょう?」

「そう・・・ですけど。」

何だか中の色味が可笑しい様な・・・。

「・・・驚かないで下さいね。」

「え?」

木葉さんがスタスタと棺へと歩いて行く。

僕も棺の方へ歩く。

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・・・・・・・・・。

見えて来た棺の中に、僕は唖然とした。

何故なら、その棺の中に居たのは

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枯れてグシャグシャになった花々に囲まれた

一体の骸骨だったからだ。

髪は抜け落ちて散らばっている。

肌は少しだけミイラ状になってへばり付いているだけだ。

「こ、この人・・・・・・!」

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「・・・彼女が、小雪さんです。」

木葉さんがゆっくりと言った。

「じゃあ、さっき僕が見たのは・・・?!」

「それも間違い無く、小雪さんですよ。」

パチリ

木葉さんが二階の壁に付いていたスイッチを押した。

倉の電気が消え、明るいのは窓から射し込む光だけになった。

「コンソメ君、ほら、見て下さい。」

「・・・え?」

棺の中には、瑞瑞しい花と、それに囲まれて眠る一人の女性が居た。

「あの窓を見て下さい。」

スッと、木葉さんが窓を指差す。

「光が青みがかっているでしょう?」

僕は無言で頷いた。

「あれは、月の光を再現したと言われているんです。」

木葉さんが棺へと歩み寄り、ガラスの蓋をソッと撫でた。

「少し、話をしましょうか。」

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・・・・・・・・・。

さて、これは私が祖父から聞いた話なのですが・・・。

小雪さんは、華族の娘御でしてね。

私達の家へは、曾祖父の代に来たらしいです。

依頼者は確か・・・彼女の両親でしたかね。

何でも、《娘の死体が何時まで経っても腐らない。何かに憑かれているかも知れないから、引き取って欲しい》との依頼だった様で。

其処から・・・そうですね。数十年間、彼女は腐らずに美しいままだったそうですよ。勿論、一緒に収められていた花も。

変化が起こったのは・・・これは確か先代・・・私の父が十代の頃と聞いています。

ある日、祖父が昼間に彼女の様子を見に行くと、棺の中に居たのが・・・。

何と言うか・・・さっきの見た目になっていた小雪さんでしょう?

肝が潰れるかと思った、と言っていました。

で、夜にまた見てみると、また元の・・・と言うか、腐敗していない姿に戻って居たんだそうです。

どうやら、月光の元でしか姿を保てなくなった様でして。

まぁ、彼女を本来の姿・・・さっきの姿ですね、に戻すのが目的な訳ですから、前進とは言えるのでしょうが・・・。

如何せん、精神衛生上の問題で、それまで通り屋敷の一室に置いておくのも・・・・・・ね?

なので、あのガラスの光が一番よく当たるあの場所で、保管をする事になったんです。

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・・・・・・・・・。

「・・・話せるのは、これくらいですかね。」

其処まで言うと、木葉さんはクルリと此方を向いた。

「さて、午後は仕事が入っていないんです。お客が来るまで、ゆっくりしていましょう。」

そのまま、一階へ向かう階段へと歩いて行く。

「・・・木葉さん。」

「はい?」

木葉さんが振り向いた。

「・・・小雪さんとのり姉、どちらの方が綺麗だと思いますか?」

木葉さんが、にっこりと笑って答えた。

「私は、容姿に踊らされる程、愚かではありませんよ。」

・・・小雪さんの方が美しいと思ったと言う事だろうか。

「じゃあのり姉の見た目についてどう思いますか?」

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「マジ天使です。ぐうかわです。」

その答えを聞いて、僕は心底安心した。

「それより、早く行きましょう?」

「・・・はーい。」

僕はまた階段を下り始めた木葉さんの元へと小走りで向かった。

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Uniまにゃ~さんへ
コメントありがとうございます。

ありがとうございます!
・・・周りがボケ倒してる人ばかりなんです。
正直、困っています。
でも、誉めて頂けると嬉しいです!

あ、木葉さんに、この間、人参入りケーキを食べさせたんですよ。
そしたら、木葉さん曰く「これは人参料理とは別物だから大丈夫」とか言っていました。
・・・意味が分からないです。
オムライスだって人参料理では無いです。

来夢称さんへ
コメントありがとうございます。

木葉さんは、本当にのり姉が好きですよ。
騙されてるにも程がありますよね。

ありがとうございます!

本当ですよね。
あ、小雪さんの見た目については・・・そうですね。東京国立博物館に展示されている女性の木乃伊が、ビジュアル的に近いかと思います。

コンソメ君はツッコミが上手ですねぇぇ ワシャワシャ…

人参食べられないくせに。…の二回目でコーヒー吹き出しそうになりました

にんじん嫌いでのり姉大好きな木葉さんがぐうかわです…!
前々から思ってたのですがコンソメさんって結構家庭的部分ありますよね素敵です。

月の光で美しい女性の姿に戻るってとてもロマンチックですね。
当たってないときの死体は怖そうですけど…

☆チィズケェキ☆さんへ
コメントありがとうございます。

本当ですよね。
木葉さんは、あの独特の甘味が苦手だと言っていましたが・・・。

ファーストコンタクト時に電気点けてなくて、本当に良かったです。
説明とか無しであれ見てたら、警察に通報してしまう所でした。

次回もパッとしない話ではありますが、よろしければお付き合い下さい。

人参嫌いなくせに・・・!
大事なので復唱しました(笑)
人参おいしいのに(^ω^)

今回も楽しく読ませていただきました!
不思議なお話ですね(*^_^*)
もし自分が紺野さんの立場だとして、電気付けてお掃除して、もし小雪さんに会ったら、と考えたらめっさ怖かったです(。-_-。)
続き待ってます☆