中編4
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最悪の事故

ある日仕事帰りの話ね。

その日は22:00くらいだったかな。急な仕事で残業したためにこんな時間。

普段の通勤路もなんだか怖く感じたよ。

割と静かな住宅街で大きい道路から2本くらいずれたとこ。

後ろからカツカツ音が聞こえて振り返るとOLらしき人が後ろを歩いてた。

まぁ、ただ帰宅途中なだけだろうけど。嫌な予感がしてたから、正体を確かめておきたかった。

しかし、夜中に帰宅途中の女性を凝視しているとこちらが不審者と思われるやも・・・

歩みを遅らせて確認するべきか・・・そんなことを考えながらウジウジ迷ってた。

キーーー ドン!

少し手前の丁字路から大きな音がした。

事故だろうか?気になるが、戻って巻き込まれるのも難儀だなぁ。

事情聴取とかで帰りが更に遅くなったら嫌だしなぁ。

また迷っているとその間に後ろのOLが丁字路に差し掛かった。

OLの悲鳴が聞こえる。まぁ事故現場だし、血くらい流れてるかもな。

しばし傍観していると、悲鳴はどんどん大きくなっていった。

どうしたんだ?仕方ない、巻き込まれる覚悟をして近づいていく。

こちら側から事故現場は見えない。私が歩いていた直線の道に交わる形で丁字路になっていた。

悲鳴を上げるOLの視線の先は塀に隠れて見えない。

OLが後ずさる。悲鳴の理由が分った。

人が地面を這って来ている。おそらく事故の当事者だろう。

「たす・・・・・て・・・たすけ・・・・て」

小走りに私が近づくと事故の全容が見て取れた。

スポーツカーが電信柱に衝突。そこに大量の血痕。そしてその血痕は地面を這う男性まで延びていた。

よく見ると下半身が無い。運転手の女性は青い顔で必死に電話している。

その風景に唖然としていると、OLの悲鳴が一層大きくなった。

視線を移すと足首を捕まれたOLが絶叫しながらハイヒールで助けを求める男性を蹴っていた。

私はOLを突き飛ばし、男性にかけよった。すると死を悟った様子の男性はほそぼそとした声で話し始めた。

「か、ぞくに・・・いって。保険・・あるから、あるから・・・書斎の引き出し・・あけて・・・あけて・・・」

目から光が無くなってく。それを最後の言葉に息を引き取ったようだ。

最悪の事故だったが、彼の最後の言葉を家族に伝えることが少しばかりの供養になるといいな。

赤の他人だが、最後まで家族のことを思って死んだ彼に尊敬の念と言葉にならない思いで泣いてしまった。

「ちょっとあんた何してくれてんのよ!」

先ほどのOLだ。すごい剣幕だ。

「あんたが突き飛ばしたせいでケガしたでしょ!スーツも汚れたし!あぁ血ついてる・・・」

なに言ってんだこいつ・・・呆れ果てて言葉が出ない。

カツカツともう一つの足音が近づいてくる。どうやらやっと運転手が下りてきたようだ。

「あなた達、何も見てないわね?」

そう言いながら札束を握らせてきた。絶句だ。この世には神も仏もいないのか。

あんた達は人じゃない。もう叫びになっていたが、だいたいそんなことを言ってやった。

「も、もう彼氏呼んだから。もうすぐ来るわ」

もう無視しよう。とにかく救急車だ。電話を取り出す。

「だ!だから彼氏呼んだって!やめろ!」

運転手の女を殴り飛ばし、救急車を呼んだ。そっちから警察にも連絡してくれるらしい。

あとは・・・家族だ。彼の家族に連絡しなければ。

サイフか携帯はどこだ。あ・・・きっと下半身のほうのポケットだろう。

幸い車はまだ動くようだ。少しバックさせた。下半身は形容しがたい状態だったが、携帯を回収出来た。

待ち受けが子供2人の写真になってる。また涙が出てきた。

涙声で彼の容体と最後の言葉を伝えた。向こうからもむせび泣く声が聞こえる。

それから5分ほどで救急車と警察が到着した。

私たちは順番に事情聴取されることとなった。やっと最後、私の番だ。

「まず、自動車を窃盗しようとしたらしいが事実かい?」

そこからの話はショックが大きくて、あまり覚えていない。

どうやら女性2人の証言と私の証言が食い違っているそうな。

後から現場にやってきた運転手の弁護士兼婚約者が私を訴えると言ってきた。

2年後の今でも裁判は続いている。

暴力を受けたという女性2人の証言と、ハンドルにくっきり残った指紋が不利に働いたらしい。

仕事は解雇。家族は妻の実家に居る。

でも後悔はしてない。あの被害者の家族が時々子供の写真を送ってくれるのだ。

それを見る度に、あの時の行動は間違っていなかった。そう思わせてくれる。

Concrete
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やあロビンミッシェルだ。

正に恐怖! 正義を貫いた主は恰好いいが、法でガチガチに固められた今の世の中では正義を貫くのも容易では無く、一つの過ちが最悪の事態になる怖い世の中だな…ひ…

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