中編4
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ただしくん

ただしくんは、おつかいをたのまれました。

ただしくんは、400円もっています。りんごはひとつ70円です。

さて、ただしくんは、りんごをなんこかえて、おつりはなん円でしょう。

そんなことは、ただしくんはとっくにわかっています。

こたえは5こでおつりは50円です。

じつは、おつかいは、はじめてではないので、これはいつもきまっていることなのです。

たねあかしをするとそういうことなのです。

おとうさんは、まいにち1こ、りんごをたべます。

きょうもただしくんは、おつかいのりんご5ことレシートとおつりを

テーブルの上において、あそびにでかけました。

ゆうがた、いえにかえるなり、おとうさんにおもいっきりぶたれました。

「おい!おまえ!おれのりんごを1こたべただろう!」

そうおとうさんはさけびました。ただしくんは、たべていません。

「たべてないよ、ぼく・・・」ちいさなこえで、ただしくんはいいました。

「うそつけ、このやろう!じゃあなんでテーブルにりんごが4こしかないんだ!

おまえいがいにだれがたべる!」

ほっぺたを4かいくらいたたかれました。ただしくんは、あたまがくらくらしました。

おかあさんのほうをみました。

おかあさんは、あおざめてめをそらしました。

おとうさんは、ただしくんがうそをついたといって、こんどは

かみのけをわしづかみにしました。

そしてなんどもゆかにうちつけたのです。あたまからちがでました。

ただしくんは、そこできをうしないました。

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きがついたら、びょういんのベッドのうえで、あたまがほうたいで

ぐるぐるまきにされていました。

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ただしくんは、しっていました。

おとうさんが、わざとじぶんでりんごをたべておいて

ただしくんのせいにして、ただしくんをたたいたことを。

ただしくんは、しっていました。

ただしくんは、ほんとうはおとうさんのこどもではないことを。

おとうさんと、おかあさんは、かくしていますが

おとうさんが、ただしくんにつらくあたるりゆうも、すべてしっています。

だれもしんじてくれないだろうから、ただしくんはじぶんのむねだけにしまっています。

ただしくんがおかあさんのおなかのなかにいたときに、おかあさんはずっと

「ごめんなさい、ごめんなさい」となきながらあやまっていました。

おとうさんのおかあさんをせめるこえを、ずっとおなかのなかできいていました。

「だれのこだ!だれのこなんだ!いえ!」

そうせめつづけていました。ただしくんが、そのいみをしるのは、ずっとあとになります。

ただしくんのおとうさんは、こどもをつくるたねがないひとなのです。

でも、おとうさんとおかあさんは、ただしくんをうむことにきめました。

おとうさんも、こどもはほしかったのですが、やはりただしくんはじぶんのこではありません。

ただしくんは、おとうさんに、ちっともにていません。

おとうさんは、ただしくんをみるたびに、おかあさんのうらぎりをおもいだして

いかりがばくはつしてしまうのです。

ただしくんは、ことあるごとにおとうさんからぼうりょくをふるわれました。

がっこうでは、いつもなまきずがたえないただしくんを、せんせいがしんぱいするふりをします。

せんせいもひとのこだから、だまってみすごすわけにはいかないのです。

もしもただしくんが、しぬようなことがあれば、ますこみはすぐに、がっこうや、じどうそうだんじょをせめます。

ただしくんも、おとうさんがこわいから、いつもうそをつきます。

じぶんでころんでけがをしたんです。

そうでないことは、どこからみてもあきらかです。

ひとはみなじぶんがかわいいのです。

ぎぜんというたてまえのもと、じぶんはせいいっぱいやったとじぶんをまもることにせいいっぱいなのです。

それはにんげんだから、しかたのないことです。

ただしくんは、なんとかいきのびました。

おとうさんのぼうりょくにおびえながら、

おとうさんがきげんがわるいときには、

なるべくちかよらないようにしたり、

それでもぼうりょくをふるわれるときには、

ちめいしょうになるぶぶんをいっしょうけんめいかばって

いきてゆきました。

そんなただしくんも、こうこうをそつぎょうし、はれてしゃかいじんになりました。

じもとのてっこうしょで、はたらいています。

おとうさんは、いまでも、りんごをまいにち1こずつたべます。

きょうもテーブルには、りんごが5こならんでいます。

でもただしくんは、じぶんでりんごを1こかってきました。

これでテーブルのりんごは6こです。

「あれ?きょうはりんごが6こあるな。やすうりでもあったのか?」

おとうさんはそういいながら、ただしくんがいちばんうえにおいたりんごをかじりました。

とたんにおとうさんがあわをふいてたおれました。

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ただしくんのほうに、てをのばしてきました。

ただしくんは、ひょうじょうをかえずに、それをみています。

ただしくんは、てっこうしょではたらいているので、

せいさんカリというおくすりをかんたんにてにいれることができるのです。

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「おとうさん、これでいつもどおり。

りんごはテーブルのうえに、5こないとね。

4こでもだめだよね、おとうさん。」

おとうさんはうごかなくなりました。

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コメントありがとうございます。
可哀想な子供が居ると、ついこんなことを考えてしまいますね。

本当は、ダメな事だけど…最後、すっきりしました。