中編4
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誘い R山鍾乳洞にて

これは、私が体験した話。

だから、人は死なないし気も狂わない。

数年前の事だ。

知り合いのオカルトサイトのメンバーで、ミステリースポット巡りを企画した。

元来、神社仏閣大好きな私は、いつものように参加した。

先日、犬を拾った私は、一緒に連れて行くことにした。メンバーは、犬に関して、妙に寛大だ。

今回のメンバーは私を含めて4人、他は全員年上で、結構な役職についたりしてるいい大人達だ。

装備品も強力なライトや赤外線カメラやビデオだったりして、子供のまま大人になるとなんてタチが悪くなるんだ!と思っていた。

私は、いつも、現場までは、行くのだが、ろくな事にはならないと知っているので、そばで見ているだけだ。

今回の場所は、県内にある霊山のR山の登山口にあたる鍾乳洞だ。

場所は、麓の村から農道にはいり、15分程車で走ったら、舗装されていない道に変わり、その先にある。

登山口のせいか、砂利道なのに、アスファルトの車が六台程置ける駐車場が整備されていてすごく不思議。登山口としては、昔は有名な場所らしい。

昼に下準備をしていた彼等は、ロープや手袋を用意していた。これは、絶対、ロッククライミング系と思いながら見ていた。

どんな場所かと、サイトのリーダーGさんに聞いてみた。

「平家の武将が、隠れて住んでたけど、奥で討伐されて惨殺されて、祟りまくったから、鍾乳洞の中にお地蔵様が祀られてるよ。上と下に入口あるけど、下は土砂で埋まってるから、上の立入禁止のロープを外して入るよ?」

うん、絶対行かない。

駐車場で待機は、私一人になった。後の3人は、川口探検隊のように重装備をして、鍾乳洞の小川の向こうにある鍾乳洞に向かって行った。駐車場の正面には、土砂で埋まった下の入口が見えていた。頭にかぶったライトが、ピカピカ光り『やっぱ、行けないな』などと、声が聞こえた。百メートル上ぐらいに、上部から入れる入り口があるので、そこに向かって行ったようだ。

時刻は11時半を過ぎていたと思う。

Gさんが、入る前に言った。

「時計でさ、12時過ぎて、30分過ぎても誰も帰って来なかったら、死んでるか遭難してると思うから、麓まで降りて消防と警察よろしくね」

と、嫌な大役を仰せつかった私。携帯電話は圏外だった。

行くも地獄、待つも地獄

そんな言葉が頭によぎった。

時期は、残暑が厳しい季節だった。クーラーを切った車内は、すぐ窓ガラスが曇る。窓は、開けない。

拾った子犬は、眠いのかうとうとしていた。

駐車場に灯りはない。

車の中だけが、ぼんやり灯りが付いている。

沈黙だった。

ラジオでも聞こうと付けてみたが、4人で居たときには入っていたラジオに雑音が入り出した。

絶対、ろくな事にならないと、ラジオを切り、携帯ではまっていた数独をやり始めた。

車の表示で、15分ほどたった時だ。犬が起きていることに気付いた。

助手席に座る私を通り越し、窓を凝視していた。

周りのガラスは曇っているのに、私の横の窓だけ曇っていない。

そっと触ると、驚くほど、窓が冷たい。

コツコツコツ

びくりと犬が震えた。

私の耳元のガラスに、誰かが指先でノックした。だが、誰も居ない。

キタキタキタキタ!!

私は、気付かないふりをして、携帯の画面を見つめる。

『やっぱ、行けないな』

『こっちは、大丈夫だ。ちょっと来てくれ!』

Gさんたち、メンバーの声がした。

でも、いけなかった。

懐中電灯もなしに、暗闇でこっちを見ている黒い人影がGさんたちでは有り得なかったから。

この人達は、体が欲しいんだ。

漠然と思った。

子犬は、か細い悲鳴をあげ、車の中央の下で丸まって寝たふりをしている。

はっきり見えなくて良かったと思いながら、持っていた御守りとお経を唱えながら、メンバーを待った。

ズリリズリリ、カッカッカ、ザッザッザ、ペタペタペタペタ・・・・・

と車の周りに、複数の何か囲んで歩いているのがわかる。

草履?素足?靴?なんで、金属音が?

なぜか、辛い。悲しい気持ちになった。

これは、出たら死ぬ。そして、Gさんたちは、死んでるかもしれない。そんな絶望感の中、1時になったら、麓に降りようと考えてていた。

結局、0時半前に、本物のGさんたちが帰ってきた。

水が溜まっていてさ、危うく落ちて死ぬところだったと笑って話す彼らに、大変だったんだと訴えた。

『ああ、やっぱり。中の方は浄化されちゃってたみたいでさ、外の方がざわざわしてたんだ。ここR山の登山口だから、遭難者とか自殺者が多いんだよね』

『そうそう、江戸時代からある道だから』

『初めに言ってたら、怖がると思って言わなかったんだ』

『霊山だからね』

笑って話す彼らは、天然なのか悩む所だが、ここでの結果は、暗闇を異常に怖がる犬を作ってしまった事だ。

可哀想なことをしたと思うが、きっと子犬が、いなかったら、気が狂っていたという確信がある。

こんな飼い主でごめんね。

そんな話。怖くはないけれど、ミステリースポットに行く時は、下調べは重要と言う話。

終わり

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