中編3
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浮遊人

ねむい…

ねむいねむいねむいねむい…

あーもう

「すいません。仮眠入ります」

この仕事を始めてから、どんどん睡眠時間が減っている気がする

若い頃こそ徹夜でもなんでも出来たものの

今となっては到底無理な話だ

仮眠室に入り、布団に潜り込む

あー、これだこれ

やっと寝れる

………ピピピピピ

アラームか

なんか懐かしい夢を見た気がする

でも、まったく思い出せない

寝ぼけた頭をどうにか起こして仕事に戻った

………

睡眠時間を削りすぎたからだろうか

睡魔に襲われることが多くなった

「仕事中だぞ。疲れてるならたまには休め」

気づけば仕事中の居眠りも目立つようになり

起きるまでに時間がかかるようになっていった

それと比例するように、夢がハッキリしてくる

最初はぼんやりとした夢だったのに、今では夢の中で思い通りに動けるまでになった

ふと気付いたが、夢の世界の風景がだんだん現実の世界のものに近づいている気がする

まぁ、夢なんてそんなもんだ

自分の中で作り出されているんだから

そう思っていた

だが、ある日を境に本当に現実の世界とリンクしてしまったようだ

夢の中で起きると、寝ている俺が見える

そして、なにやら白い糸のようなもので繋がっていた

最初は近所を散歩してみた

どうやら、動物は何かを感じるのか威嚇してくるが、人には全く見えないらしい

少しずつ少しずつ遠出をするようになった

糸は消すことができて、普段は特に気にならないし、戻るときには意識すれば見えて、辿ることができる

そんな安心感があった

いろいろ見ていてわかったことがある

同じように漂ってる人たちがいるのだ

どうやらお互いを認識することが出来るらしい

自分達のことを"浮遊人"と呼んでいるのだという

浮遊人のコミュニティもあるそうだ

実は俺たちのような浮遊人が特定の人には見えて、幽霊と呼ばれるのかもしれないな、なんて笑いながら

夢の中の毎日は楽しかった

起きている間には到底行くことのできない世界各地を見に行くことができる

俺は夢の世界にのめり込むようになった

ある日、いつものように夢の世界を楽しんで部屋へ戻る途中

近所の公園に見慣れない黒っぽい浮遊人を見かけた

俺達は普段白っぽく見えているが、珍しい奴もいるんだな

俺は特に気にすることなく身体へと戻った

だが、次の日もその次の日も黒い浮遊人を見るようになった

しかもそいつはだんだん俺の家に近づいているように見える

ははは…

まさかな

なんとなく不安になり仲間に聞いてみたが、黒い奴の正体を知ってる者はなかった

心配ならしばらく監視してみてはどうかと言われ、さっそく奴を見張ることにした

3日が経過した

だが、奴はいくら見てても全く移動しない

そろそろ見てるのも飽きてきた

近場で遊んで戻るが、やはり奴は移動していない

なんだ、心配するようなことはなかったんじゃないか

安心した俺は次の日久しぶりに遠くまで出掛けることにした

異変に気づいたのは家から数キロ離れた辺りだった

糸の先が身体と繋がっていない…

そう、自分の糸の先が見えたのだ

こんなことは過去に1度もなかった

焦って部屋に戻ると、そこには奴がいた

奴は俺が俺の身体から伸びている糸に自分の糸の先を結びつけたところだった

…何をしているんだ!?

それは、俺の…!!!

掴みかかろうとしたが遅かった

奴はニヤリと笑うと俺の身体に入り込んだ

最後に見たのは俺の意思とは関係なく動く俺自身

浮遊人のまま取り残された俺の身体は奴のように黒く変色し

世界は暗転した…

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mamiさん
ありがとうございます。
そう言っていただけて嬉しいです。
頭の中にはちゃんと続きもあるので、御希望とあらば、近いうちにでも

続き読みたいです。