長編15
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姦姦蛇螺 ~2015 Ver.~

子供の頃、大樹、亮介、浩志の三人は毎日バカやってた。

大樹と亮介は半分勘当されていたが、浩志の母は面倒見がよかった。

厳しく優しく接していたようだ。

そんな浩志が中三になったある日、母と大喧嘩になったそうだ。

詳しくは話さなかったが、母を傷つけてしまったらしい。

それを聞きつけて、父が帰ってきた。

一目で状況を察した父はBを無視して母を庇った。

傷ついた母を見て、Bを怒鳴った。

父「お前、もっと人の気持ちを考えろ。」

浩志を見ず、母を抱き締めながら話した。

浩志「黙れ、殺すぞ。あ?」

耳を貨さなかった。

それでも父は淡々と話を続けた。

父「俺はお前の親だ。母さんだってお前を愛してる。だがな、お前が母さん傷つける事しかしないなら仕方がない。これは父としてでなく、一人の人間として話す。先に言っておくが、これを話すのはお前を見捨てた証拠だ。それでいいなら聞け。」

ビビりながらも、「うるせぇな、話してみろ!」と煽った。

父「森の中の立入禁止区域があるな。その奥へ進んでみろ。そこで思い知るがいいさ。」

浩志の父が言う森とは、近くの小さな山の麓にある場所。

樹海みたいなものである。

山には誰でも入れるし、森も普通だ。

しかし、中に入っていくと立入禁止区域に出くわす。

といっても、その範囲は狭い。

2メートルくらいの高さの柵で囲まれ、有刺鉄線を巡らし、紙垂のようなペラペラと鈴が無数についていた。

ここだけが完全に浮いていた。

定期的に巫女さんが入り口で儀式を行う。

その日は付近一帯が立入禁止になるため何の儀式なのかは知らない。

カルト教団の洗脳施設があるというのが一番広まってた噂であった。

その区域まで行くのが面倒だったため、行く人はいなかった。

父は浩志の返事を待たずに母と2階に上がった。

彼はそのまま家を出て、待ち合わせていた大樹と亮介と合流。

そこで二人も話を聞いた。

亮介「父親がそこまで言うなんて相当だな。」

大樹「怖いっちゃ怖いが・・・。どうする、行くのか?」

浩志「行くに決まってんだろ。逆に思い知らせてやる。」

面白半分で二人も同行し、三人で向かった。

あれこれ準備し、夜中の一時になった。

山の麓に到着し、持ってきた懐中電灯で前を照らしながら進む。

楽に進んで行けるような道だが、徒歩四十分はかかる。

ところが、入ってわずか五分の事。

何か音が遠くから聞こえ始めた。

静かな夜がその音だけで満たされた。

最初に気付いたのは浩志だった。

浩志「おい、何だこの音?」

耳を澄ますと確かに聞こえた。

落ち葉を引きずる音、枝が折れる音。

遠くの方から微かに聞こえる。

さほど恐怖は感じなかった。

「動物ぐらいいるだろ。」

そう思うことにした。

そのまま二十分ぐらい進んできたところでまた浩志が何か気付き、三人は足を止めた。

浩志「亮介、お前だけちょっと歩いてみてくれ。」

亮介「・・・何でだよ。」

浩志「いいから。」

亮介が不安そうに前へ歩いていき、またこっちへ戻ってきた。

それを見て、浩志は考え込んだ。

亮介「おい、何なんだよ?」

大樹「浩志!」

浩志「静かにしてよ~く聞いててみ。」

亮介にさせたように一人で前へ歩いていき、またこっちに戻ってきた。

数回繰り返してようやく気付いた。

微かに聞こえるあの音は三人の動きに合っていた。

三人が歩けばあの音も歩きだし、立ち止まると音も止む。

「音」に監視されているようだ。

ゾワゾワ。

辺りに三人の懐中電灯以外の光は無い。

月光も木々に遮られてほぼ見えなかった。

こちらの位置が分かっても不思議じゃない。

だが、一緒に歩いてる自分達でさえ、互いがよく見えない程の暗さだ。

そんな暗闇で何をしてる、何故自分達とシンクロするんだ?

浩志「ふざけんなよ。誰かにつけられてんのか?」

森に入ってから二十分程、「あの音」との距離は一向に変わっていなかった。

近づくるでも遠ざかるでもない。

大樹「監視されてんのかな?」

亮介「例のカルト教団のヤツらか?」

音から察するに、一人が尾行しているような感じだった。

下手に正体を探るのは危険と判断し、辺りを警戒しつつ先へ進んだ。

ずっと「あの音」と共に進んでたが、例の柵が見えてくると気にならなくなった。

「あの音」以上に柵の方が不気味だったからである。

初めて目の当たりにしたが、想像以上のものだった。

同時にそれまでなかった感覚が芽生えた。

霊など信じないが、この先にはあるかもしれない。

半端じゃなくヤバいものが。

亮介「これをブチ破って奥に行けってのか?無理だろコレ!」

浩志「うるせぇな、ビビんじゃねえよ!」

異様な柵を前に怖気付く亮介を怒鳴り、持ってきた道具で柵を破り始めた。

破壊音より無数の鈴の音の方が凄かった。

しかし、持参した道具では破れなかった。

不自然な程に頑丈だった。

結局、攀じ登った方が簡単だった。

柵を越えた途端、閉じ込められたような息苦しさを覚えた。

他の二人も躊躇したが、もう行くしかない。

歩きだしてすぐに三人とも気付いた。

「あの音」が、聞こえなくなった事に。

亮介が放った言葉でさらに嫌な空気になった。

亮介「そいつさぁ・・・、ずっとここにいたんじゃねえか?この柵、ここ以外の出入口は無いしさ、それで近付けなかったんじゃ・・・。」

浩志「んなわけねえだろ!あの音に気付いた場所はここからじゃ見えねぇんだ。なのに入った時点からこっちの様子が分かるわけねぇだろ。」

普通に考えればその通りだった。

立入禁止区域と森の入り口はかなり離れてる。

だが、この不気味な雰囲気が亮介の仮説の信憑性を増した。

それでも浩志だけは強気だった。

浩志「何だか知らねぇけどよ、要はこの柵から出られねぇんだろそいつは?大したことねぇよ。」

奧へ進んでいった。

柵を越えて二、三十分後。

反対側の柵が見え始めた所で、不思議なものを見つけた。

六本の木を六本ので注連縄で括り、六角形がつくられていた。

柵に掛っていたものとは別の、ちゃんとした紙垂も一緒だった。

その中央に賽銭箱が置かれていた。

目にした瞬間、言葉が出なかった。

特に大樹と亮介は「マジでヤバい事になった。」と焦っていた。

どう考えてもここが最重要ポイントだ。

とうとう、来るところまで来てしまった。

大樹「お前の親父が言ってたの、たぶんこれの事だろ。」

亮介「暴れるとかムリ。明らかにヤバいだろ。」

だが、浩志は相変わらず強気だった。

浩志「別に悪いもんとは限らん。とりあえず中を見るぞ。」

浩志は縄を潜って六角形の中に入り、箱に近づいた。

大樹と亮介は箱よりも彼が何をしでかすか不安だったが、とりあえず後に続いた。

野晒しの箱は錆だらけだった。

網目状の蓋を覗けばで中が見える。

だが、その下に板が敷かれていて結局見えない。

その箱には何か凄いものが書いてあった。

家紋のようなものだと思われる。

前後左右の面にいくつも書き込まれており、同じものは無かった。

大樹と亮介は触らないようにし、構わず触る浩志にも乱暴しないよう注意した。

どうやら地面に直接固定してあるらしく、持ち上げられなかった。

隅々までチェックすると、後ろの面だけ外れるようになっていた。

浩志「おっ、ここだけ外れるぞ!」

箱の一面を取り外し、中を覗き込んだ。

箱の中には四隅に壺が置かれ、中には液体が入っていた。

中央に先端が赤く塗られた五センチぐらいの楊枝みたいなものが並べられていた。

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こんな形で六本。

接する四ヶ所だけ赤く塗られてる。

大樹「何だこれ、爪楊枝か?」

浩志「ここまで来て壺と楊枝かよ。」

大樹と亮介は壺を少し触ってみたが、浩志は手に取って匂いを嗅いだりした。

元に戻すと今度は/\/\>に手を伸ばした。

ところが、思わずに形を崩してしまった。

その一瞬!

「チリン!チリン!チリン!チリン!」

入口と反対、六角形の向こうにうっすらと見える柵の方で鈴が暴れ出した。

三人「うわっ!!!」

浩志「誰だ、畜生!ざけんな!」

浩志はその方向へ走りだした。

大樹「馬鹿、そっち行くな!」

亮介「おい浩志!ヤバいって!」

慌てて後を追おうと浩志は急に立ち止まり、前方に懐中電灯を向けたまま動かなくなった。

大樹「何だよ、フリかよ~。」

ホッとして急いで近付くと、浩志が小刻みに震えだした。

亮介「おい、どうした・・・?」

照らされた先を見た。

立ち並ぶ木々の中の一本、その陰から女がこちらを覗いていた。

ひょこっと顔半分だけ出して、眩しがる様子も無く。

歯が剥き出しになるくらいにい~っと口を開け、目は据わっていた。

三人「うわぁぁぁぁぁ!!!」

悲鳴と同時に、一斉に走り去った。

互いを見る余裕もなく、必死で柵へ向かった。

一気に飛び掛かり、急いで攀じ登る。

飛び降り、すぐに入り口へ戻ろうとした。

だが、Aが上手く柵を登れない。

大樹「亮介!早く!!」

浩志「おい!早くしろ!!」

どうすればいいか分からなかった。

大樹「何だよアレ!?何なんだよ!?」

浩志「知らねぇよ、黙れ!!」

「チリン!チリン!チリン!」

凄まじい大音量で鈴の音が鳴り響き、柵が揺れだした。

山の方から鳴り響き、どんどん激しくなる。

必死に攀じ登る亮介。

ようやく登り切ろうかという時、大樹と浩志の視線はそこになかった。

ガタガタと震え、声も出ない。

亮介も柵の上から見下ろした。

山へ向かってずらっと続く柵を伝った先。

しかも、自分達側にアレが張りついていた。

裸で上半身のみ、右腕三本、左腕三本であった。

器用に綱と有刺鉄線を蜘蛛のように這ってくる。

三人「ぎゃあぁあぁぁーーー!!!」

亮介が上から滑り落ち、倒れこんできた。

すぐに亮介を起こし、入り口へ猛進した。

後ろなんてとても見れない。

入り口に何やら人影を見た。

大樹「おい、まさか・・・。」

急停止し、息を呑んだ。

数人集まっている。

アレじゃない!!

確認出来た途端に再び走りだし、その人達の中に飛び込んだ。

「おい!出てきたぞ!」

「本当にあの柵の先に行ったのか!?」

「おーい!急いで奥さんに知らせろ!」

集まっていた人達は落ち着かない様子で駆け寄ってきた。

何を言われているのか分からない。

頭が真っ白だった。

そのまま車に乗せられ、集会所に連れてかれた。

既に三時を回っていた。

中に大樹の母と姉、亮介父、浩志の母が来ていた。

浩志の母はもちろん、ろくに話もしない大樹の母まで泣いていて、亮介もこの時の父の顔を忘れられないだろう。

浩志の母「みんな無事だったんのね・・・、よかった。」

浩志の母とは違い、大樹・亮介は両親に殴られた。だが、初めて暖かい言葉をかけられた。

しばらくして、浩志の母が口を開いた。

浩志の母「ごめんなさい。今回の事は私の主人、ひいては私の責任です。本当に申し訳ありませんでした・・・。」と何度も頭を下げた。

亮介の父「もういいですよ奥さん。みんな無事だったわけだし。」

大樹の母「そうよ。あなたのせいじゃないわ。」

この後、親同士で話が進められた。

特に説明は無く、解散した。

一夜明けた次の日の昼、大樹は姉に叩き起こされた。

とんでもない顔になっていた。

大樹「なんだよ?」

大樹の姉「浩志君のお母さんから電話。ヤバい事になってるよ。」

電話に出ると、いきなりだった。

浩志の母「浩志が・・・、浩志がおかしいのよ!あそこで何したの!?柵の先へ行っただけじゃなかったの!?」

とても電話で説明できない。

浩志の家へ向かった。

亮介も来ていて、二人で浩志の母に話を聞いた。

話によると、浩志は家に帰ってから急に両手両足が痛いと叫びだした。

両手両足を伸ばした状態でのたうちまわったと。

対応しようにもできず、部屋に運ぶことはできた。

他の二人がどうなっているのか気になって連絡したらしい。

すぐBの部屋へ向かうと、階段から叫び声が聞こえた。

浩志「いてぇいてぇよぉ!」

やはり、聞いた通りの状況だった。

大樹「浩志!どうした?」

亮介「おい、しっかりしろ!」

何が何だか。

一度浩志の母のところに戻ると、静かな口調で聞かれた。

浩志の母「昨夜の話してちょうだい。」

いろいろなことがありすぎて、うまく伝えられなかった。

浩志の母は、我が子が何をしたのかを知りたがっていた。

浩志だけがしたこと・・・。

箱、壺、楊枝・・・。

楊枝だ。

あれには浩志しか触ってないし、形を崩したまま元に戻してない。

そのことを母に伝えた。

みるみる表情が変わり、震えだした。

すぐさま棚の引き出しから何かの紙を取出し、それを見ながらどこかに電話をかけた。

しばらく話した後、戻ってきた母は震える声で言った。

浩志の母「今すぐ帰って用意しておいてちょうだい。ご両親には私から話しておくわ。何も言わなくても準備してくれると思うから。明後日またうちに来てちょうだい。」

説明も無く、すぐに帰らされた。

帰ってみると、「必ず行ってきなさい。」とだけ言われた。

二日後に大樹と亮介は浩志の母と三人で、ある場所へ向かった。

浩志は昨日連れて行かれたらしい。

相当遠かった。

深い山奥の村に着いた。

その村の外れの屋敷に案内された。

古い大屋敷で、離れや蔵も立派だった。

浩志の母が呼び鈴を鳴らすと、おっさんと女の子が出迎えた。

おっさんはガラの悪いスーツ姿。

女の子は少し年上の巫女さんのようだった。

巫女さんは「あおいかんじょ」というよく分からない名を名乗った。

一応、「葵ちゃん」としておく。

広い座敷に招かれ、物々しい雰囲気で話が始まった。

おっさん「息子さんは絶対安静です。こちらが一緒にいた子ですか?」

浩志の母「はい。三人であの場所へ行ったようです。」

おっさん「そうですか。私に話してもらえるかな?どこで何をしたのか、何を見たのか。出来るだけ詳しく。」

戸惑ったが、詳細に昨夜の事を話した。

ところが、楊枝の話になり、「コラ、今何つった?」

亮介「は、はい?」

おっさん「てめぇら、あれを動かしたのかよ!」

身を乗り出し、今にも掴み掛かってきそうな勢いで怒鳴られた。

葵が制止し、細い声で話しだした。

葵「箱の中央の小さな棒に触れましたか?少しでも形を崩しましたか?」

大樹「・・・あの、動かしました。形も崩れたと思います。」

葵「崩してしまったのはどなたか?触ったか方ではなく。」

大樹と亮介「浩志です。」

おっさん「そうか・・・。・・・残念ですがね、息子さんはもうどうにもならんでしょう。他が原因ならまだ手の打ちようはあったが・・・。」

浩志の母「そんな・・・。」

「どうにもならん。」ってどういうことだ?

一体何の話をしているんだ?

ようやく、オレ達が見たものに関する話がされた。

姦姦蛇螺 (俗称:生離蛇螺) - かんかんじゃら (なりじゃら)

もはや神話や伝説に近い話。

人食い大蛇に悩まされていたある村の村人達は、神の子として様々な力を代々受け継いでいた一家に退治を依頼した。

依頼を受けたその家は、特に力の強かった巫女を大蛇退治に向かわせた。

村人達が陰から見守る中、巫女は懸命に立ち向かった。

しかし、わずかな隙をつかれ、大蛇に下半身を噛み千切られた。

それでも巫女は村人達を守ろうと、息も絶え絶えに立ち向かった。

ところが、下半身を失っては勝ち目がないと決め込んだ村人達はあろう事か、巫女を生け贄にする代わりに村の安全を保障してほしいと大蛇に持ちかけた。

強い力を持つ巫女を疎ましく思っていた大蛇はそれを承諾し、食べやすいようにと村人達に腕を切り落とさせ、そのまま喰らった。

村に一時の平穏が訪れた。

悲しいことに、巫女の家の者が計ったことだったと。

この時の巫女の家族は六人。

異変はすぐに起きた。

大蛇がある日から姿を見せなくなり、襲うものがいなくなったはずの村で次々と死人が出始めた。

至る所に転がる亡骸。全ての遺体のどちらかの腕が無くなっていた。

巫女の家族を含む十八人が死亡。生存者は四人だった。

おっさんと葵が交互に説明した。

おっさん「あの箱は定期的に場所を移して供養されてきた。

その時々によって、管理者も違う。

箱に家紋が描かれていたと思うが、あれは供養の場所を提供してきた家々だ。

管理人を決める集会があってな、偶に自ら志願してくるバカもいるがそこで決められる。

管理者以外には姦姦蛇螺の話は一切知らされない。

付近の住民には、いわくがあるって事と万が一の時の相談先だけが管理者から伝えられる。

伝える際には仲介人が立ち会う。

そのときにいわくの真の意味を理解するわけだ。

今の相談役はウチじゃねぇが、至急頼まれてくれってことだったんだ。」

どうやら一昨日浩志の母が電話していたのは別のところらしく、話を聞いた先方は浩志を連れてこの家を尋ね、話し合った結果こっちに任せたらしい。浩志の母はそこに電話しててある程度詳細を聞かされていたようだ。

葵「基本的に、箱は山や森に移されます。

御覧になった六本の木と六本の縄は村人達を、六本の棒は巫女の家族を、四隅に置かれた壺は生き延びた四人を表しています。

そして、六本の棒が成している形こそが、巫女を表しているのです。」

詳細は明らかになっていないが、最有力説としては、生き残った四人が巫女の怨念を鎮めるためにありとあらゆる手を尽くし、その結果生まれた独自の形式ではないかという事らしい。

おっさん「ウチの者で姦姦蛇螺を祓ったのは過去に数人かいるが、その全員が二、三年の内に亡くなってる。当事者はほとんど助からない。それだけ危険なんだよ。」

きょとんとするしかなかった。

おっさん「お母さん、どれだけヤバいものかは何となくわかったでしょう。さっきも言いましたが、棒を動かしてさえいなければ何とかなりました。しかし、今回は・・・。」

浩志の母「お願いします!!何とかしてやれないでしょうか。私の責任なんです。どうかお願いします!!!」

浩志の母は引かなかった。

おっさん「何とかしたいのは山々だが・・・、棒を動かしたうえにアレを見ちまったんなら・・・。お前らも見たろう。アレが大蛇に喰われた巫女だ。下半身を見れば棒の形の意味が分かったはずだが。」

大樹「・・・えっ?」

大樹と亮介は意味が分からなかった。

自分達が見たのは上半身だけのはずだ。

A「あの、下半身っていうのは・・・?上半身なら見ましたけど。」

おっさん「あ?何言ってんだ?あの棒を動かしたんだろ?だったら下半身を見てるはずだ。」

葵「貴方達の前に現われた彼女は、下半身がなかったのですか?では、腕は何本でしたか?」

大樹「六本でした。左右三本ずつ。でも、下半身はありませんでしたよ。」

おっさん「間違いねぇのか?下半身を見てねぇんだな?」

大樹「は、はい・・・。」

おっさんは再び浩志の母に顔を向け、ニコッとして言った。

おっさん「お母さん、何とかなるかもしれん。」

葵「巫女の怨念を浴びてしまう行動は二つあります。一つは、巫女を表すあの形を変えてしまう事。もう一つは、巫女を目撃することです。」

おっさん「実際には棒を動かした時点で終わりだ。必然的に巫女の姿を見る事になるからな。だが、どういうわけかお前らはそれを見てない。動かした本人以外も同じ姿で見えるはずだから、お前らが見てないならあの子も見てないだろう。」

大樹「見てない、っていうのはどういう意味なんですか?俺達が見たのは・・・?」

葵「巫女本人である事には変わりありません。ですが、姦姦蛇螺ではない。貴方達の命を奪う意志がなかったのでしょうね。姦姦蛇螺ではなく、巫女として現われた。その夜の事は、彼女にとってはお遊戯だったのでしょう。」

大樹「結果のたうちまわっとるやないかい、クソ巫女が。」

巫女=姦姦蛇螺であり、巫女≠姦姦蛇螺でもあるという事らしい。

おっさん「姦姦蛇螺が出てきてないなら、今あの子を苦しめているのは巫女のお遊びだろうな。時間はかかるが何とかしてやれるだろう。あの子のことは引き受けますわ。お母さんには後で説明させてもらいます。お前ら二人は、一応葵に祓ってもらってから帰りな。」

お母さんは残り、二人はお祓いしてもらって帰った。

この家の決まりで、浩志には会わせてもらえずこれ以来一度も見てない。

今はどこかで平凡に生活してるそうだ。

因みに浩志の父は一度たりとも顔を出してこなかった。

大樹と亮介も日常生活の戻り、親子の絆を確認した。

これ以来、大樹・良平の両家も親が少しずつ話をしてくれるようになった。

そういうのもあって、真面目に生きるようになった。

後から分かった事は、定期的に集まっていた巫女さんは相談役になった家の人。

姦姦蛇螺は、危険だとされていながらある種の守り神に似た存在とされている。

大蛇が山の神だったらしく、年に一回、神楽を舞ったり祝詞を奏上したりするそうだ。

森の中で聞いた音は柵の中で放し飼いにされている姦姦蛇螺が起こした音ということになっている

しかし、六角形と箱に封印されているらしく、棒の形や六角形を崩さなければ姿を見せる事はほぼ無いそうだ。

供養場所の指定も細かな規則があり、基本的に姦姦蛇螺はその区域からは出られないらしいが、柵などで囲んでる場合は外側に張りついてくる事もある。

ここからはもう移されたらしい。

たぶん今は別の場所にあるんだろうな。

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