中編3
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風物詩

本来はこういう所に書くべきことではないのですが、皆さんにも共有していただきたいので投稿させていただきました。

読み始めてしまった方は是非最後までお読み下さい。

これは最近身近に起こった出来事です。

私は公団住宅の4階で妻と二人で暮らしています。

間取りは2DKで玄関を入ってすぐ左側に浴室とトイレ、右側には4畳ほどの和室。

少し廊下を経て8畳のリビング、隣が6畳の和室。住み始めて5年が過ぎていました。

丁度梅雨入りした6月初旬の蒸し暑さが酷い夜のこと。

その日はいつもより早く仕事を切り上げて帰宅することにしました。

妻との食事の約束があったからです。

駅に着くなり家路を小走りに、最後の坂を上りました。

ふと目線をあげると、いつもベランダに漏れる部屋の明かりはありませんでした。

「良かった。まだ帰っていないな。」

私たちは共働きなので、当然どちらかが先に帰宅しなければベランダに明かりは灯りません。

急いで階段を駆け上がり、鍵を回してドアを開くと

日中の締め切っているもやっとした空気と、何かいつもとは違う感覚に襲われました。

「何か嫌な感覚だな。。。」

と、肌で感じてはいたのですが気にせず、食事の準備に取り掛かることにしました。

それから1時間程経ったと思います。

いつもより帰りの遅い妻を少し気にしながら、帰った後すぐ食事が出来るように炊飯器のスイッチを入れて、浴槽に湯を張るために浴室に向かいました。

sound:3

浴室の明かりをつけようとスイッチに手を伸ばした時、浴室の空気が他と違っていることに気がつきました。

前にも感じたことがあるような、嫌な空気感。

この団地の浴室は他の部屋に比べて天井が高く作られている(他もそうなのかもしれないが)こともあり、湿気は溜まりやすくはなっていると思うのだが。

感覚を殺し、浴槽の掃除をするため浴室内へ入りスイッチで明かり点けた。

「ん?」

浴室はユニットではなく、浴槽と床がタイル張りの洗い場がある一般的なタイプ。

私はタイルの上に立ち、浴槽に向かって前かがみになって洗うような体勢になっていた。

「背後に何か気配がする」

music:3

帰宅した際に感じたあの嫌な空気が再び私を襲いました。

明らかに人の気配とは違う、ある意味第六感的なものかもしれません。

物騒な世の中、ニュースで見るような猟奇的な事件ってこういう空気なのか?

脳裏に嫌なドラマを描いてしまったと思います。

「家に限ってそんなこと。」

みんなニュースを見ている時はそう思うのでしょう。

私もその一人であることは否定できません。

だから普通の人は”事”が起きてからしか対策を講じれないのだと。

そんなことが僅か数分、いや数秒だったかもしれません。

その間は脳が作り出す惨劇を見ていました。

ふと我に返った時です。

感覚は確信へと変わりました。

私の右肩に何かが触れました。間違いなく触れたのです。

真っ直ぐ目線がある場合、人間の視野だけでは肩という部位の全てを見ることはできません。

しかし今の私には感覚だけで十分でした。

もう現実的に、この先のことなんて考えることができませんでした。考えたくありませんでした。

そして右に振り返る。

目に映ったものに対して、その時の私の形相はまさに”醜”と”悲哀”で作られる「般若の形相」に相応しくいたと思います。

後ろに見たもの

黒く細い糸のように伸びる足、そして油膜で光沢さえ放つ体。

見るものを唖然とさせる存在感。

shake

「キャー!!!!ゴキブリー!!!」

帰宅した妻の声でした。

彼は浴室内を散々飛び回り、最後には妻のお手製”新聞紙たたき”で昇天となりました。

ある意味夏の風物みたいなものですね。

くだらない文章でしたが長々とお読みいただきありがとうございました。

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