黒い重箱と三島さんの話・後編

中編3
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黒い重箱と三島さんの話・後編

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明るい部屋。

フカフカのソファー。

目の前に置かれたティーカップとケーキ。

そして、微笑みながら此方を見ている三島さん。

絶体絶命。正に絶体絶命である。

蛇に睨まれた蛙ーーーーーーそんな言葉が頭に浮かび、僕は改めて溜め息を吐いた。

「今更ですが、御挨拶致します。《うなずき庵》の荷物預かりサービスです。御預かりしていた物を御返ししに参りました。どうぞ御確認を。」

隣に置いていた風呂敷包みを取り出し、開く。

中から現れたのは、渡された時と変わらない黒い重箱。

「此方で間違い御座いませんね?」

「うん。そうだね。」

三島さんが小さく頷いた。

本当なら、此処で関連商品やお勧めの品を売り込むのだが、今回は流石にパスさせて貰う。

「本日はご利用有り難う御座いました。其れでは、今回は此れで失礼させていただきます。」

此れで仕事はおしまいだ。

一礼をして立ち上がる。

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「ねぇ。」

「・・・・・・はい?」

三島さんが、テーブルの上に置かれた重箱を指差した。

「此の箱の中に何が入っているか、知りたくない?」

中身は空だ。店長と確認した。

「知りたくない?ねえ、何が入っていると思う?」

なのに、此の言い様は何なのだろう。

まるで中に何かしら入っているのだとでも言いたげな・・・・・・。

三島さんが、グッと身を乗り出して僕を見上げる。

「君は、何が入っていると思う?」

何だか無性に怖くなって答える。

「・・・何も、入っていません。」

「どうかな。」

「今回配送した荷物は、配送前に一度店長と中身を確認してあります。何かが入っている訳がありません。」

「本当に、断言してしまっていいの?」

「何をですか。」

「《何も入っていない》なんて。」

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カタリ

小さな音が、重箱から聞こえた。

「此れは、子供を入れる箱なんだよ。」

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~~~

飢饉になるとね、自分の子供に此の箱を持たせて、隣近所の中から一軒に、お使いに行かせるんだ。

其れを一斉にやる。子供の居る家同士でね。

嗚呼、勿論重箱の中身は空だよ。

・・・さて、どうしてだと思う?

・・・・・・

・・・・・・・・・

言いたくない?

其れとも、単に考えられないだけかな?

・・・・・・殺す為だよ。

《口減らし》って、君は知って・・・いや、どうせ聞いても答えないんだろうな。

知ってることを前提にして話すよ。

小宮寺が知ってるだろうから、知らなかったら後で聞いてみるといい。

話を進めようか。

・・・お使いに行かされた子供は帰ってこない。

行った先の家で殺されるんだ。

殺されて、骨を自分が運んできた箱に詰められる。

其れで、元の家に返されるんだ。

・・・そうそう。肉。

子供の肉はね、行った先の家で食べられてしまうんだよ。

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~~~

其処で三島さんは、心底嬉しそうに顔を綻ばせた。

「自分の子供は殺せないし食べられないのに、他人の子どもは殺せるし食べられる。極限まで行っても、人間の倫理観というのは働くものなんだろうね。歪な形になったとしても。」

そして、皿に添えられていたフォークを取り上げ、徐にクルクルと回して弄ぶ。

「・・・貴方は、何が言いたいんですか。」

「君は本当に嫌そうな顔をするなあ。まぁ、此方としては願っても無いことだけれど。」

三島さんが、スッとフォークを此方に向けた。

「只、一つだけ忠告を。」

「・・・はい?」

「此の箱の前で、あまり食べ物を残さない方がいいと思うよ。」

僕に向けられたフォークの先が、其のまま真下に下ろされる。

指し示されたのは、一口も手が付けられずに残されたケーキと、此れまた、全く口にされずに冷めた紅茶。

三島さんの目元が愈細められる。

「飢饉で死んだ子供。しかも、此れは使われたのが一人じゃなくてね。中に込められた思いも強い。・・・言いたいことは、分かるかな?」

僕は改めてケーキを見た。

目にも鮮やかな赤いソースが掛けられていて、其れは恰も・・・

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「嗚呼、君は本当に嫌そうな顔をするね。」

三島さんが、もう一度僕に笑い掛ける。

僕は何を言うこともなく、差し出されたフォークを手に取った。

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まっしろさんへ
コメントありがとうございます。

二回目からは其れも消えました・・・。
けど、猿兄の牽制で少しは状況も楽になったかなとも思います。
来なかったら・・・そうですね。確実に今より大変なことになってたでしょうね。猿兄様々。

高校時代からの知り合いだそうです。前にも確か書きましたね。
会った時は、猿兄も三島さんも、何か普通の感じでしたよ。耳を塞がれていたので、会話は所々聞こえませんでしたが。

店長は夏は甚平とかをダルッと着て、冬はセーターとかをデロッて着ています。服装までだらしない。

三島さんは一見すると一番まともと言いますか、見た目だけなら爽やかにさえ見える感じです。
こう、何と言えば良いのか・・・。

基本着けてますよ。
大きなポケットがある物を着てます。文庫本とか小間物を一時的に収納出来るので便利です。

紫音さんへ
コメントありがとうございます。

そう、気持ち悪いんですよ。
本当に困ってしまいます。

何かしら反応するとまた気持ち悪いことを言われるので極力黙っているのですが、黙っていても気持ち悪いんです。もうどうしろと・・・。

どうぞどうぞ(´・ω・)つー囲
・・・此れ、ハエ叩きに見えます?

阿頼耶識さんへ
コメントありがとうございます。

御名前の件、了解しました。
もしかして前回、間違って名前を書いていましたか?
《頼》の字を《瀬》にしてしまった気がしてなりません。

・・・猿兄から一応教えられてはいますが、あまりにも下衆なので此処では口を噤ませて頂きます。

ケーキも紅茶も普通の味でしたよ。
行く度に色々と出されますが、変な物が入れられていたことは無いですね。今のところは。

然しながら時既に遅しですよ(笑)
自分から首を突っ込んでいる所も有るので、誰も責められませんけどね。
皆さんに色々とお話しするのが楽しみです。

紫月花夜さんへ
コメントありがとうございます。

店長ですからね。
血も涙も無い訳ではないんでしょうけど、自分で行くのが面倒臭くなったんでしょう。
其れに、救助するにも猿兄の方が何かと都合が良いですし・・・。
来ても正直な所、店長じゃ若干心許ないですしね。

泣いても笑っても高校生活最後の夏休みです。
沢山思い出を作ろうと頑張ります。
現に、此のコメントも部屋に居る奴等にバレないようにトイレで書いています。

人畜無害ロリコンもとい烏瓜さんが助けに来て下さって良かった…!
店長が呼んでいなかったらきっと……いや、考えないようにしましょう。。
烏瓜さんと三島さん、お知り合いなのですよね?
お二人の対面時のリアクションも知りたいなと思ってしまいました。

そしてまた質問させていただきます。
三島さんと店長さんのよく着る普段着を教えて頂きたいです。
あと、お店の中ではエプロンをつけたりするのでしょうか…?

相変わらず気持ちの悪い物言いをする三島さんですな:(;゙゚'ω゚'):

紺野さんのリアクションを愉しんでいる様が、読んでいて伝わりました。

三島さんを、ハエたたきでバシバシ叩いてやりたいですわε٩(๑> ₃ <)۶з

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mamiさんへ
コメントありがとうございます。

本当はこんなものではないんですよ。表現する技能が無いだけで。精進せねばですね。
でも、あの変態を表現するために己を磨くのも何か癪なような・・・(笑)

僕も入れるかどうか迷ったんですが、猿兄は良くも悪くも、出ると安心感が出てしまうというか・・・。
出逢ったばかり頃の、あの不気味さは、何処に消えたというのでしょう。

店長が僕の為に店の外に足を踏み出すなんて、絶対に有り得ませんよ。いや、来たとしてもモヤシだから役に立たな・・・すみません。どうも店長関係の話になると口が悪くなってしまいますね。

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YUKA Hosakaさんへ
コメントありがとうございます。

猿兄曰く《人畜無害だからこそロリコン》なのだとか。人畜有害の場合は《ペド》になるらしいです。
此の手の話をしている猿兄は暑苦しくて仕方無いですね。助けて貰ったことには感謝していますが。

さ、さいですか・・・(;・ω・)

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