中編4
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壊れた人形

紀伊田辺の現場に一週間泊りで行ったとき、仕事終わりに入った居酒屋のおっちゃんが夏場だったせいか怖い話をいろいろと聞かせてくれた。その中で、特に印象深いこんな話があった。

「壊れた人形、てやつを知ってるか?」

他の話はいかにも怖がらそうと雰囲気を出して話してたのに、この話だけは妙に空気が違って、変な緊張感があった。おっちゃんが話したのはこうだ。

ある写真に付けられてる名前だ。一人の女が裸で写ってる。まぁその時点で常識的にまずいもんだが、ひとまずそれはおいとけ。普通の写真じゃねえんだ。その写ってる女はな、全身細かい穴だらけなんだよ。まさに蜂の巣って感じでな。人によっちゃ、一目見ただけで吐いちまうぐらいのものすげえ姿だ。頭も顔も、体中…それこそ手足の指一本一本に至るまで、びっしりと無数に穴があいてる。真っ黒な穴がな。

この写真は数枚存在するんだがな、写真によって違いがある。それぞれ一箇所ずつ、穴がない写真になってんだ。右腕・左腕・右足・左足・胴体・顔・頭。七枚になるか。全身穴だらけの一枚を加えて八枚だな。全部で八枚存在する。

もともとはどっかの地方の村だかでかなり狂信的に祀られてたもんらしい。よくあるだろ?村ぐるみで何かを隠してやがるなんて話はよ。この写真もそういったもんだった。

その村は男尊女卑っつーか、女が玩具でしかねえ村でよ、強姦だの調教だのが当たり前のようにあった。村のほとんどの女が村のほとんどの男に好き放題ヤられちまってる。毎日毎日、何度も何度もな。その中で、特に男共の玩具にされてた子がいたんだよ。それが、写真に写ってる女だ。

その子はその村の出身じゃなかった。何も知らずただ近くに迷い込んじまったところを、村の男に捕まっちまったんだな。その日からその子は村一番の玩具さ。わけもわからぬうちに、次々と男共を満たす餌となった。

よほどひでぇ事を日常的にされてたんだろう。その子は精神的におかしくなっちまった。腐った野郎の手にも負えないほど、人間として成り立たなくなっちまったんだ。

奇行しかない女なんざいらねえ、とその子は村から放り出され、すぐにいなくなった。自我はとっくになくしちまったはずだから、どこにいったのかもどうなったのかもわかんねえ。村ではすぐに忘れられちまったからな。言いたかねえが、自分が自分でなくなっちまったまんま…どっかで死んじまったんだろうな。

それからしばらくしてな、村である事が起こった。その子の写真が、次々と村のいろんな場所から見つかるようになった。その子が裸で立ち、こちらを見つめている写真がな。誰もそんな写真を撮った覚えはない。どういう事なんだと村中恐怖で包まれた。

見つかった写真は八枚。どれも同じ写真だった。だが、当初は穴などなかったんだ。綺麗な体が写っていた。村の連中はすぐに全部破り捨てちまったんだがな、しばらく経つとまた村のあちこちから写真が出てくるんだ。かならず八枚、同じ写真がな。

捨てては見つかり、見つけては捨てる。それが繰り返されているうちに、写真に変化が起こった。写っているその子の体に、だんだん無数の穴があいていくようになったんだ。新しく見つかる度に、体中に穴が増えていく。腕、足、顔。どんどん不気味な姿の写真に変わっていった。

それが決定的な恐怖となり、村の連中はとうとう捨てるのをやめ、その子の怨念を恐れて写真を祀る事にしたんだ。だが、八枚の写真は日に日に体の穴が増えていった。最初に言ったとおり、結果的にはそれぞれ一箇所が残された七枚と、全身穴だらけの一枚になった。

その後、村がどうなったかは知らねえが今はもうない。ところが、写真は外に持ち出された。村を出た連中が一枚ずつ分け、それぞれの家系で代々保管されるようになったらしい。今じゃ八枚ともまったく別々の場所にある。地域もばらばらだろうな。

八枚のうち、一枚だけ見ちゃならねえのがある。顔に穴がない写真だ。他の写真は穴だらけで顔の判別もつかねえ。だが、一枚だけ穴がないおかげではっきりと顔を見れてしまう。その子の顔は知っちゃならねえんだ。

これがおっちゃんが話した話だ。(ある程度は簡単にまとめたが)

聞いた時は一気に酔いがさめた。そのままは長くて書けなかったが、かなり細かい話まであった。

関係あるかは知らんが、おっちゃんは他の話や会話では関西弁もとい和歌山弁だったのに、この話だけ標準語で話した。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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